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『水都百景録』を楽しもう!「遊閣」

 『水都百景録』には制限があるようで、あえて別の漢字を当てている名詞があります。それは遊郭、賭場、『金瓶梅』です。
 中国は現在のみならず、歴史的に性的なものを毛嫌いしたという偏見が流布しがちです。いやいや、ヴィクトリア朝のイギリスの方がよほど厳しいのでは? そう思いつつ、ちょっと「遊閣」の説明文のことでも。

気晴らしのためにも「遊閣」を

 娯楽建築として、気分転換のためにも建てて欲しいと住民男性から望まれる「遊閣」。あっけらかんとした男性と対照的な女性像が解説文には出てきます。

馬湘蘭とは

 24歳になった己の身を嘆く名妓。その名は馬湘蘭――彼女は実在します(1548−1604)。万暦年間、王天府秦淮の名妓とされた女性です。馮夢龍なら「知ってるよ!」と返ってくることでしょう。
 彼女の容姿はそこまで際立ってはいない。むしろ才能が優れていました。詩と書画に長じており、その作品は売買されていたとか。

 応天府の秦淮にある妓院には、彼女のような才能あふれる妓女が多くおりました。ここは科挙の郷試(地方試験、文徴明が合格できなかった段階)会場に近いのです。試験がてら秦淮に船を浮かべ、妓女と楽しむことがお約束。そんな文人を相手にする彼女たちの教養は際立っていたのです。
 江南を代表する才知溢れる妓女として、彼女は名前だけでも登場しています。

 馬湘蘭と同じく、才知あふれる名妓には薛素素がいます。彼女は蘇州の人です。

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