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『水都百景録』を楽しもう!「蘇州に行こう その4」

 『水都百景観録』の蘇州には、不思議な守護神像があります。

狸と書いて「ねこ」と読む

 蘇州の守護神像は「狸」という字に「ねこ」と読み仮名を振ってあります。どういうこと? 
 かつて漢字の「狸」はネコのことを指しました。明代になるとネコは「猫」であるものの、古語として「狸」と書いて「ネコ」を意味しているのでしょう。

養蚕の守り神である猫

 蘇州は養蚕の街です。生糸、絹、刺繍をした布が生産できます。生糸と絹は応天府に移送する必要はありませんが、刺繍布は必要になります。
 養蚕には鼠から守るために猫は欠かせません。蘇州の人々にとって猫はまさしく守り神です。

明朝皇帝は猫が好き

 明朝皇帝はだいたいがろくな印象がなく、そこは仕方ありませんが。猫への愛だけは微笑ましい一面と言えるかも。現在も故宮博物院にいる猫は、明代以来の「猫児房(猫ちゃんルーム)」の子孫だとか。

 清朝皇帝は精悍な猟犬を好んでいますね。明朝皇帝は猫ちゃんをもふもふしていたから軟弱でダメ! 清朝皇帝なマッチョな犬を従えているからヨシ! そんな論理もどこかで見かけた記憶があります。

 まあ、愛猫が死んだら将軍号を贈り、金の棺に入れて慰霊碑を建てるような嘉靖帝はダメですけどね。何事もほどほどに。

文人も猫が好き

 中国の文人は猫が好きです。大事な紙や書物を鼠から守る大切な相棒としてかわいがっていたのです。沈周のかわいい猫の絵は、故宮博物院で万年カレンダー付きオルゴールになっているし。
 絵にも漢詩にも猫がジャンルとして存在します。猫ちゃんちょうだいの漢詩は定番です。文徴明も猫ちゃんちょうだいを漢詩「乞猫」というタイトルで詠んでおりまして、猫ちゃんベッドもご飯も用意するからお迎えしたいという内容です。
 この世界観にいて筆を持っている人は、全員猫ちゃん大好きだと思って間違いはありません。特に蘇州は猫に守られた街ということですね。

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