その人のために私たちができること
呉座先生問題が沸騰中です。
労働問題に落とし込んで訴訟を起こす――。
これならば若手研究者の権利を守るという大義名分が成立する。そんなもんの助けを得たいかどうかはさておき、いわゆる人権や労働問題に目を向けるパヨク……いかにも野党を支持していそうな連中も支持してくれるかも!……といったところですかね、目の付け所は悪くないと思います。流石です。
が、これを成立させるには、改悛の証明は必須。
それを、
「この程度の発言が悪いとされたよ!(問題発言が100を超えるのに1だけでは判断できません)」
「これが処分文書だ!」(外に出してよいのですか?)
「そもそもオープンレターのせいだよ!」(そう確定しているのですか?)
と、ちょっと反省の色が感じられないない、危険なブログエントリを公開したため、慌てて撤退に入ったようです。
とはいえ、その撤退が通じるかどうかは別の話でしょうが。撤退戦が一番難しいわけですし。
オープンレターの争点化はなぜなのか?
当初はそうでもなかったはずのオープンレターが、急に問題視されてきた。いわば再燃しております。
そんなに不味いのであれば、もっと早く燃えていたはずでは? それではなぜか?
海外のスティーブン・ピンカーの例を持ち出し(ピンカーの認知心理学は全方位に喧嘩を売る。常に論争の種。彼はしょっちゅうぶっ叩かれているのですが。それについては長くなるので割愛)、疑問視するブログがあり、呉座氏がはてなブックマークをつけていました。
ピンカーについては言いたいことは山ほどあるんですけどね。脱線するからやめておきます。貶したいんじゃない。むしろピンカーは大好きです。でも誤解されるし、それも仕方ないと思う。脱線はここまで。
これはあくまで私の推察ですが……好機は揃ったのでしょう。訴訟のタイミングにあわせて、逆転のチャンスが舞い込んできた。そう浮かれても仕方のないことだとは思います。
呉座氏本人が発見したか、あるいは誰かと情報共有し、知らされたか。
ともあれ、これはいける――反撃に使える!
そういう空気が形成され、狼煙をあげたのでしょう。
こんなことで反撃ができるかどうか、その勝敗はわからない(個人的には相当厳しいと思いますが)。ただし、訴訟のタイミングと合致しているし、メディアでも空気を醸成すれば勝ち目があるかもしれない。
それに魅力的なんですな。オープンレターに名を連ねた連中をまとめで燃やせるとなれば、それはもう、赤壁の戦いのようでテンションがあがる。いわば連環の計。
あの中に、支援がある人物が名を連ねていたら「燃やしたろ!」とテンションがバチバチにあがってしまう人がいることは必定。そういうツイートも見かけましたから。
ただ……呉座氏本人が筋が悪いと思ったのか、あるいは指摘されたのか、ブログエントリを引き下げております。総大将たる呉座氏が「かかれー!」という声を撤回したからには、将兵も従うべきでしょうが、彼の軍勢はどうにも統制が取れていないのでそうもなってない。
ま、あんまりいい手じゃないとは思いますなぁ。ほんとうに妙策なら、総大将たる彼自身がもっと煽っているでしょう。ブログエントリ削除という“言い逃げ”してるのは呉座氏も同じではありませんか?
そしてこれを言っておかねばなりますまい。
オープンレターがどういうものなのか、理解しておりますか?
果たし状。曹操が孫権に送った「そっちで狩りをするぞ!」書状(実質的なな宣戦布告)……そういう類じゃないんですよ。
「呉座氏を攻撃する意図がないなら、そうオープンレターに書いておけ!」
だのなんだの、そんなことを言われたところで、意味がわからない。あのオープンレターはむしろ温情的で、呉座氏というより、それを囃し立てる界隈に「そういうことはやめよう」と促したものでしょう。
オープンレターは刑罰執行状ではない。
“オールドパヨク”(と、敢えて呼びましょうか、私はこういう呼び方が大嫌いです)が大好きな署名の進化版ではありませんか? ホラ、共産党ポスターを家に貼っているような人が、「署名お願いします!」と回してくるアレですよ。そもももそんなにオープンレターが強力なのであれば、呉座氏を守るオープンレターを作成すればよろしいのではありませんか?
どうにも、なじみのないものに対して過剰に煽っている気配があるのです。で、海外から“キャンセルカルチャー”だの“オープンレター”だの云々言いますけれども。その海外では、オープンレターは悪魔の手段としての評価は確定済みでしょうか?
横文字だからヤバい! そう深層心理で思っているのならば、そんなもん、今はもう幕末じゃないとしかいいようがありません。
私たちにできること
そういうことじゃないですか。オープンレターに関して、陰謀論がどんどんSNSで広まっています。署名をするよう圧力をかけられたとか、強制されたとか、バカしか署名しないとか(確かに私はバカだけど、他の人にそれはないだろう!)。
しかし振り返ってみれば、あれはアカデミズムにある差別を告発する類のもの。差別をどうしてもしなくちゃいけませんか? そうではないでしょう、差別しない範囲内ならば、言論の自由は保障されますよ。
瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。
これで十分でしょう。問題視されない発言をしていれば、制限されないはずなんですよ。それがそんなに難しいことでしょうか。
「悪口をわかるように言ったらメッ! だよ」
文意を噛み砕けばその程度でしょうに。
今、なすべきこととは
いま、呉座氏のためにすべきことは、北村氏を叩くとか。オープンレターを叩くとか。そうではない、もっと確実なことがあります。
11月17日に『頼朝と義時 武家政権の誕生』が講談社現代新書で発売されます。これを予約し、ランキングを押し上げ、呉座氏は数字を持っている書き手だと証明すること! これですよ!
ご本人からの申し出のあった降板とはいえ、大河の考証をしていたらどれほどよかったのか? そうNHKが悔しがっているんじゃないのか? そう言い合いたくはありませんか? 彼が考証の大河があったらどれほどよかったことか……そう残念に思いたいではありませんか。
そのためにも買って、読み、感想を共有する。
それこそ呉座氏を応援する姿勢としての正解ではありませんか? 日文研で何があろうと、ヒットを叩き出せる書き手としての評価が定まりましたらば、それは彼の栄誉であり、財源です。そのために、われわれは力を尽くそうではありませんか! 家庭で一冊、職場で一冊。そのくらいの勢いで買って読んで感想を言い合いましょう!
誰かを貶すよりも、それがまっとうかつ生産的な応援だと思う次第です。
私も、もちろん、読みます。売上が伸びるよう、微力ながら力を尽くす所存です。みなさんがんばりましょう! 誰かを貶すとか、クソリプを送るとか。巨大掲示板にネチネチ書き込まず、エネルギーをプラスに使いましょう!
ほんとうに彼のことを思うのならば、それが最善です。
以下は私のエネルギーの無駄遣いです。暇な方のみどうぞ。
以下無用のことながら
総大将が話を小さくしたいのに、そうできない将兵たち……その背景は? 呉座氏を擁護して金が入る、そんなDAPPIじみたオファーがあるとも思いにくい。
動機ですね、心理的な動機があるんですよ。
まずは與那覇潤先生のアゴラ投稿から。
彼は歴史研究者をやめたと宣言している。歴史界隈に私怨があった。北村氏の研究内容や事件の全貌も誤認識が多いにもかかわらず、論座はじめ多くの媒体から断られてにもかかわらず、盛大に法螺貝を鳴らして突っ込んできた動機はわかりますよ。
オープンレターに、自分が嫌いな歴史界隈の名前を見つけた.故にまとめて燃やしたかった。
どの方のツイートをひいたかどうかで、標的推察可能ですね。私怨のために無駄に炎を広げんでも。
次。自分がやりそうなことを、相手もやるはずだ! そんな想像力不足ですね。何かあったら数を頼みに殴りに行く。俺だったらそーする。誰だってそーする、アイツだって、お綺麗なことを言っているけどきっもそうだ、きっとそうだ! そういう煮詰まった感情で、動機を限定しているんでしょう。
次。反共産党.今回は共産党が背景にいる! 中国史研究者もオープンレターにいる! きっと中国共産党や日本共産党が絡んでいるに違いない!
こういう二束三文の中国陰謀論者って、中国共産党と日本共産党が、源氏同士くらい争っていることに無頓着ですよね。
次。
「ハラスメントってどういうことですか? まとめ読んだ限りよくわからないのですけど……」
そうやって引っ掻き回して、時間稼ぎをすることはやめましょう。あなたのためを思って助言していますよ。そういう無意味な足止めをすると、あなたが傷つきかねない。得策とは言えません。典型的なシーライオニングですか? それにこれをすると、問題発言やブログのスクリーンショットが保存されているからには(どこ? 探せば割とすぐ見つかります)、呉座氏に不利なんですよ。
傷つきたくないなら、この論争への介入はおすすめできません。
次。フェミニストを燃やしたる! フェミどもを燃やす! またソレか……。次のいきがいを見つけたらいかがです? 庭仕事とか。ベランダコンポスト作りとか。囲碁将棋とか。
次。献血ポスターの仇討ちだ! これについては日本赤十字が解答出してますよね。宇崎ちゃんコラボは継続。ただし、啓発的な内容にして性的な表現は避ける。この措置で、公式が「二次元コラボそのものではなく、表現の仕方に問題がありました。改善します」と表明した。完璧なまでに解決済みです。そこを蒸し返してどうするのでしょうか?
江戸の仇を長崎で討つどころじゃない意味のわからなさ。
次。北村氏側の落ち度をあげつらったり、はたまた彼女と関係があるかどうかもわからないフェミニストの話を持ち出している方もいますが。
北村氏の処分が主張者のいうように処分相応なら、とっくに下されていることでしょう。彼女は鍵をかけないでいつも主張しているのだから。
そこを蒸し返してあーだこーだいうのは、「なんでや! 阪神優勝せんのはおかしいやろ! ワイは阪神愛しとんねん!」と暴れるタチのわるい猛虎党みたいなもんやで。おとなしくしとったほうがええんちゃうか。阪神応援ありがとうセールしても、阪神が優勝する歴史に作り替えることはできひん。
北村氏に抗議するのであれば、被害者(と、認定している方)がすればいい。それを横から口を出すのは意味がわかりません。それは試合した同士ではなく、審判に喧嘩を売っているようなものでは?
次。北村氏をTRAと決めつけ、「あんな奴は所詮フェミニストじゃない! 私こそが真のフェミニスト! ゆえに呉座氏を支持する!」という敵の敵は味方に突っ込んでいる方もおられるようで。何がなにやら。
そろそろまとめます。
ほんとうに呉座氏のことを考えていますか? 旗印にしたいだけではありませんか?
根底に願望があるんでしょうね。我らが総大将が勝利し、凱旋を飾る日が来ると。
呉座氏が勝訴したとしても、それで北村氏はじめオープンレター賛同者の居城なり、船が燃えるわけでもないのですが。人間は甘い勝利を夢見るものだからさ……。ホラ、この間のアメリカ大統領選! あれもトランプ勝利の甘い夢にうっとりしている人がたくさんいたじゃないですか!
なんかこう……オープンレターまで燃やしたい軍勢は、清々しいほど党派性と私怨が見えております。武侠ものだったら偽君子呼ばわりされそう。あ、わかってます。偽君子はそっちだろ、って? いいですねえ、『笑傲江湖』ごっこでもしましょうか! 互いに岳不群、左冷禅って呼び合うわけよ。マイナーなネタをすみません。
そもそも日文研がこれはまずいと判断したツイート含めた言動は、北村氏宛以外も大量にあると思います。そこくらいは把握した方がよいでしょう。やろうと思えば、できなくもありません。それに日文研もこういうことは不慣れでいろいろきっと戸惑っているんです。ただでさえ大変なことをさらに大変にしてどうしますか?
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