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ダメ華流古装片の見分け方

 今日、たまたま書店で華流ガイドを見かけました。チラチラと見たところ、全くおすすめできかねる作品も入っています。

 仕方ないとは思う! 最近のもの、美男美女が出ているもの。そういう作品をザザッとチョイスしますもんね。

 とはいえ、どうしようもないカスのような古装片(時代劇)を見始めたら、正直時間の無駄です。中華料理店で、わけわからんものを食べさせられたら悲しいでしょう? 『コウラン伝 始皇帝の母』とか。ああいうどうしようもない駄作を避けるためにも、ささっと見分け方をあげたいと思います。

◆馬と乗り物に乗るか?

 時代劇の醍醐味。それは、昔は当然でも現代人はできないことをサラリとやってのけること!

 代表例が乗馬です。颯爽と馬に乗る場面はカッコいい! のみならず、そこは重要です。乗馬訓練をする。手間がかかる。時間もかかる。金もかかる。そこをこなしているわけですから、作り手は気合十分です。

 これに馬が牽引する乗り物が加わると、さらによい兆候。ああいうものは本当に大変です。ましてや複数を出さねばならない古代戦車戦まで見せてくれたら、これはもう大船に乗ったつもりでいてよし!

 騎射? 言うことありません!

 馬に乗った主人公が、その上で立ち上がって巨大な鷹を射つ? まぁ、いいんじゃないですか。荒唐無稽だろうと、きっちり再現するそう言う武侠のお約束は、拍手喝采ものですよ!

 移動場面そのものも大事です。馬にせよ、乗り物にせよ、距離とスピードをふまえた脚本家どうか。そこが大事です。指令を受けた次の瞬間、刺客がその場にいるような時代劇はもういりません。GPSつきスマホは当時ないんですよ!!

◆看板をアップで映すか?

 家の看板がチラリと映る。誰の家かな? のみならず、フォントを見てみましょう。

 時代ごとにこれが異なるのです。篆書体、隷書体ともなると、中国の人だって「そんなもんホイホイ書けません!」となります。手抜きならば、それこそAdobeフォントのお世話になりますけどね。まじめな小道具担当者は、データや資料の中から書体を探してきて、きっちりと書くことでしょう。

 看板をドンと映す作品は、小道具に自信がある証拠。そういう時代劇は、信頼してもよいのです。

◆酒を飲んで食事をする場面はあるか?

 人間は誰しも食事をします。酒を飲む人も多い。

 中国のグルメは世界一! そこは是非ともじっくり見たいところですが、これがなかなか大変でして。時代によって食材や調理法が異なるうえに、食器もめんどくさい。

「漢代にこんな食材ないでしょ」
「明代の富豪なのに、食器がシンプルすぎるんだな〜」

 こういうツッコミがビシバシ入ります。見る側が突っ込めなくとも、そこはよいのです。アップで食事なり酒を映す時点で、作り手は誠意があって自信満々。ごはんがおいしい時代劇は、その作品そのものもおいしいのです。

 古い時代ならば、酒は“爵”で飲むことになります。めんどくさい。ストックはあるだろうけど、絶対にこれはめんどくさい、誰かが爵で酒をうまそうに飲む場面があるのであれば、圧倒的な信頼感があります。

 ついでに言いますと、宴会で歌って踊っているのか。ここも大事です。ああいう音楽なり舞踊の再現は、高難易度です。

◆読書と引用をしているか?

 登場人物が読書をして、かつ、それを引用する。

 何気ない場面ですけれども、これも大変です。そこの場面にあう名句を引っ張ってくる。なかなか手間がかかりますよ!

 紙がない時代の場合、竹簡や木簡を用意しなくてはいけない。これまたストックがあるにせよ、それはもう用意するだけで面倒くさいはず。それを用意し、文面までじっくり映す作品があれば、それは当たりです。竹簡を作り、そこに特定の内容をきっちり昔の字体で書く。誠実ですね。信頼できます。

 紙の書物だろうと、時代ごとに装丁や製本技術が異なります。重要です。奥義や秘密を記した書物そのものの扱いも大事です。

◆結髪は? 衣装は? メイクは? アクセサリは?

 当時と同じものは再現できません。そこは仕方ない。けれども、嘘をつくにせよ、程度というものがある。

 誰もが昨日シャンプーしたようなキューティクルキラキラヘアーであるとか、見栄えだけを重視して、どの時代だろうがざっくりと宋代みたいになっているとか。リップグロスつやつやとか。

 そういうものは手抜きです。時代によっては、時代考証を真面目にすると、現代人からすれば変なものになる。それでも工夫して、綺麗に見せているようであれば、それはもう気合十分です。弁髪だって似合う人は大変素晴らしくなります! 最近は金や元の弁髪に、ドレッドヘアーを取り入れ、イケてるアレンジをしたものもあります。あれは大いにあり! 弁髪はなかなかよいものですから、もっとチャレンジしていただきたいところ。

 アクセサリも重要です。中国では重要な小道具になるものでもある。玉ともなれば神秘性を帯びるものです。それをどう使うか。腕の見せ所です。

 簪や佩玉ひとつとっても、身分、意味、性格、愛……いろんな意味が込められていますからね。

「お金ないからこのアクセ、売っぱらっちゃえ〜」

 そういうメルカリ感覚で玉を売る。そんな時代劇はダメだ!

◆ワイヤーで吹っ飛ばすかどうか?

 中国語圏の時代劇といえば、なんといってもワイヤーアクション。とはいえ、これも昔から存在するものでもありません。武侠ものならばともかく、それ以外の時代劇では減少傾向にあります。ここぞという時ならばともかく、常時飛んでいるようなものは2020年代ともなると手抜きです。

 むしろ古武術、実践的な動きを再現しているか? 大事なのはそこ!

 イケメンがチャカチャカ動いたら、悪党がなんかしらんが死んでいる……そういう類のアクションはいらんから。

◆批判的な文脈や最新研究の成果、見方を入れているか?

 中国共産党はガチガチで、政治批判のような文脈はゆるさないと誤解されがちですが。実はそうでもないし、規制も厳しいのか、緩いのか、わかりかねるところはあります。時代劇をいちいち規制していたら、中共だって手が回らないでしょうし。

 中国には、エンタメに批判的ば文脈や教訓を入れる伝統があります。ゆえに、関羽が神様になる。異民族の扱いでの変貌や、腐敗政治批判を読み取れるようなギリギリのチャレンジをしている意欲作もあります。

 むしろディズニーの『ムーラン』は、そこに無頓着すぎたかもしれない。異民族との戦いをあまりに無邪気に描きすぎたとは思いますが。

 そういう現代らしい斬新さを入れないと、いつの時代なのかと突っ込まれる。そういう世界です。

 逆に、
「こういう高校生のいじめじみた描写は、現代ものでもよいのでは?」
 というベタ展開ばかりのドラマは、見る価値はあまりないかもしれませんね……。

あなたの感性が大事ですから。受信料も!

 とはいえ、結局はあなたの感性が大事ですから。

 以前好きだったドラマとキャストがかぶっているとか。ともかくイケメン美女を眺めてうっとりしたいのであれば、それはそれでよいし。
 友達同士て見て盛り上がれるのであれば、それはそれで正しいこと!
 自分が楽しいかどうか、そこで判断していきましょう。

 ……と言いたいところですが、よりにもよって『コウラン伝』を買い付けてきたNHK担当者は猛省して欲しい。あんなGPS付きスマホがある時代劇を買い付けなくてもよいでしょうに。貴重な枠なのにさ。

 『キングダム』に便乗すればいいというものではありませんからね。


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