『おかえりモネ』第93回 島に残る覚悟
モネが亀島についたときはもう夜。0時を回り、モネは24回目の誕生日を故郷で迎えました。
24年前のあの日に生まれた子が、こうしてここにいる。そう浮き立つ周囲に、モネは何もしていないと返すのでした。
寺を継ぐ覚悟
亜哉子は被害を黙っていたことを詫びます。モネは心配かけたくなかったのだろうと理解しています。とーほぐらしいね。
そしてここで、三生が重大宣言をします。1125年続く星明寺を継ぎます! そう力強く言い切ります。無理してない、本気の宣言です。そしてここで、みんなが見ている前で髪を切ろうとして、危ないと止められます。酔っ払いが刃物持つんでねえ!
このドラマのよいところって、東北のテンポが出ているところで。おっとりしているんだか、マイペースなんだか、よくわからないけとノリノリになるし楽しそう。そんな独特の空気が流れています。
そしてバリカンを持参した耕治が剃髪に挑みます。ここで三生は澄んだ瞳で、耕治さんとはちがう道をゆくと言います。親の仕事を継ぐ道だ。
「そうか、よく決心した」
耕治は言いきる。これって日本近代の流れが凝縮されているかもしれない。1125年続いてきた。それこそ江戸時代なんか、家業を継ぐのがどこでも当然でしたよね。それが商業発展の時代になり、その流れの最後の方の耕治は漁業でなく、銀行員を選んだ。
それが出世だったから。
でも、そんな時代はもう終わるのでしょう。仙台でラッパーになるより、亀島で住職になる。それがかっこいい、正しい。そんな時代なんですよ。
耕治は俺でなく若いのがやれと、バリカンを三生の幼馴染たちに託します。合掌する三生の髪の毛が剃られてゆきます。ここでモネは明日美にも知らせなくてはならないと気づき、ビデオ通話を始めます。
何かでも忘れているような……秀水さんだ! 下戸の秀水はぐーぐー寝てます。酒でもなめちゃったのかな? 最後はヒデさんだ! そんなわけで起こされて、父子が顔を見合わせます。
三生は、合掌し読経する父を見ていました。震災で亡くなった人が何人も寺に運ばれてくる。そんなひとびとの菩提を弔う。そんな父になれるか不安だったこともあるけど、自分がそれを継ぐべきだと覚悟を決めて、剃髪しました。
頭を半分剃髪された、戻れない姿の三生。かっこいい……。
モネは観察し、異変を察知する
このあと、地元に残った悠人の姿も見えます。彼は漁協の共済を龍己に勧めています。
その龍己は歩いていてよろけ、海から戻ってきたモネに気遣われています。モネは被害を確認しました。牡蠣棚の位置と帯状の被害を観察し、やはり竜巻ではないかとの感触を得たようです。
モネは奥ゆかしいので、ここでドヤ顔でフフンと「私賢いの! わかったうの!」という態度を見せません。そういうキャラじゃないって思いますよね。これは菅波や朝岡もそうで、彼らは自分の知識を自慢しない。むしろおとなしいのです。ドヤ顔で頭がいいと自慢するのって、むしろそう見えない嘘臭さが漂うということを、今年の朝ドラスタッフは知っているのでしょう。もう一枚の看板ドラマもそうでければいいんですけどね。
こういうモネのような、証拠やデータを集めて検証する手法は【アブダクション(仮説形成)】と呼ばれます。シャーロック・ホームズが典型例です。
ステッキがどうすり減っているか?
どちらの角度からそうなっているか?
銘板に何と刻まれているか?
こういう要素を突き合わせて仮説を形成します。本作ではモネ、朝岡、菅波が使える。『麒麟がくる』では光秀、信長、家康、久秀が使える。駒と東庵のような漢方医は基礎的技能。漢籍由来ならこうだ。
見微知萌
箕子の憂い
近きを以て遠きを知り、一を以て万を知り、微を以て明を知る
最近のドラマはこの【アブダクション】を使えるキャラクターを出すか出さないか、そこで作り手の意識がある程度わかります。説明セリフばかりで進める作品を見ていると、「賢い設定されているこいつは、ほんとうに頭がキレるのか?」と疑念が湧いてきてしまうんですね。注目してみるとおもしろいですよ。
龍己はモネに感心しつつ、弱っていることは認めます。歳だもの。大したことねえ。そう返すのでした。
副住職になった三生は、得度してがんばると励まされています。
そして龍己は、「あん時と比べたら大したことねえ」と言います。モネはみんなカッコいいと感動しています。カッコいいというよりしぶとい。そう龍己はいう。東北のじさまらしい、偉ぶらない風情があります。
モネは未知に話があると告げます。未知は帰ってきたときから変だったと勘づいています。
モネは決意を込めて帰ってきたと言います。その決意とは?
この島に帰ってきていいかな? そう問いかけるのでした。
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