ヤクルト1000から考える『ゴールデンカムイ』
たまには流行に乗っかってみようと思います。
ヤクルト1000を確実に入手するには?
野良のヤクルトレディだのなんだの語っているのは、どこまで本気なか、SNSでネタにして遊びたいのか判断しかねます。こういうことを例えばの話、月島軍曹はするだろうか? しないと思いますね。月島ならきっとこうだ。
「鯉登少尉殿、お住まいの地域のヤクルト販売店のリストはこちらです。販売商品リストもあります。決まりましたら、申し込んでおきますが」
「配達日やスケジュールのご希望はございますか?」
「カード引き落とし、毎週土曜日配達ですね」
ヤクルトならずともこうした健康食品は即効性があるわけでもなく、継続が重要です。白石なら野良ヤクルトレディを捕獲して買い漁り、上機嫌でSNS投稿して終わりそうですが、そういうノリだけではよくない局面もあります。
軍人、こと将校の副官の役割を果たす軍曹となれば、ヤクルト販売店把握ですね。
「組み合わせとしては、ヤクルト1000とミルミルがよいそうですよ」
「どうせならば通販限定商品にしましょうか」
ここまでくればさらによし!
じゃあ飲んだ鯉登はどうすべきか? スマートフォンで睡眠ログでもとって、効果を確認しましょう。
「いいぞぉ、飲み始めて一ヶ月! 睡眠の質があがったッ! 便通も絶好調だ!」
いや別に、キャラなりきりで遊びたいわけでもなく。話の枕です。まとめますと……
・ヤクルト販売店を探し、問い合わせる
・毎日飲む時間を決めておく。糖分が多いので、そこは考慮しましょう
・自分の体調を考え、他によい製品がないか確認。ミルミルとの飲み合わせが推奨されています
・定期的に飲まないと効果は期待できない
・効果があるかないか知りたいのならば、便通や睡眠状態のログを取る
以上です。
腸脳相関――ヤクルトも推す効果
腸脳相関――ヤクルトを定期購入すると、そんなことを書いたパンフレットがよく届きます。これは何もヤクルトが自社製品を売るために編み出した怪しい概念でもなく、近年注目を集めているものです。
詳しくはヤクルト公式サイトでもどうぞ。図書館で本を借りるのもよいでしょう。
要するに、お腹の調子を整えると、脳の調子もよくなる。ストレス解消や精神状態安定にも効果が期待できます。花粉症にも効果があります。
千文字近く使いましたが。これも実はアイヌ含め先住民と深い関係があります。そんなわけで本題。
『ゴールデンカムイ』でヤクルト1000を飲むべき人物は? 鯉登あたりも飲んだほうが精神が安定しそうですが、アイヌの皆さんにあればよかったと私は言いたい。
弱いアイヌと、強いアイヌ
強いアイヌという言葉が、『ゴールデンカムイ』を語る上で出されます。私なりに当事者の声を聞いて感じたことをまとめますと。
かつてのアイヌをテーマとしたフィクションでは、真面目で誠実であるものの、それゆえ“滅びゆく”という言葉がくっついていた。でも実際に生きている側からすればたまったものでもないし、その暗さゆえに遠ざけてしまっていた。そういうことをふまえて「強いアイヌを描いて欲しい」という言葉があったのだと私はとらえます。
アイヌは強いか? 弱いか? 私は北海道で保健師をしていた方から、しみじみと言われたことがあります。
「アイヌの方は体が弱いから……」
初めに断っておくと、彼女は差別とは程遠い方です。親身になって健康相談をしていたアイヌの方から、木彫りを贈られたとか。差別ではなく、医療従事者の実感として「アイヌは虚弱だ」という知識が共有されていたのです。
理由は調べていくうちに掴めてきたし、ヤクルトも関係があります。
人間の腸内環境は、母乳を通して前の世代から受け継ぎます。そして消化できない未知の飲食物には嫌悪感が生じる。明治時代初期、土方世代からすれば洋食や肉料理は不気味なものでした。新選組が屯所で養豚をした際には周囲からブーイングがあったとか。
豚肉を好んだため「豚一(豚を食う一橋)」というあだ名をつけられた徳川慶喜もいますが、あれも珍しいからそう呼ばれたわけですね。
幕臣がヨーロッパでありがたいと思ったメニューは、魚料理でした。
杉元たちは洋食や肉料理に慣れてきた世代。鯉登の場合、薩摩は日本でも豚肉を食べていたから慣れきっています。
このように、和人は明治以降、数世代かけて乳製品や肉に慣れていったのです。
アイヌはどうか? アイヌは狩猟を中心に生きていました。松前藩を通してジャガイモは普及していたものの、米や大豆とは縁遠い。だから杉本の味噌が「オソマ」だと思われてしまうのです。
それが明治以降、変わります。狩猟ではなく農耕をしろと言われるようになる。しかし、アイヌは和人の穀物を消化できる腸内環境がないのです。ゆえに消化できず、栄養失調になります。そこに和人が持ち込んだ結核や天然痘といった病原菌が入り込む。チカパシのように、一族ごと病死するようなことがよくあったのです。
人類が狩猟から農耕に切り替える過程で、どれほどの犠牲が出たか。記録にないから忘れられているし、生まれた時から飯を食べていれば気づかないけれども。実はとてつもなく大変で犠牲者多数だったのだろうとされています。
先住民は、そんな過酷な変化に強制的に直面させられたのです。
ゆえに「アイヌは虚弱だ」と和人は思う。それを憐れむばかりならまだしも、当時西欧から持ち込まれた優生学をあてはめて、こうなってしまった人もいるのです。
「アイヌは弱い。弱肉強食の世界では生きていけないさだめだ。滅びるさだめなのだ」
アイヌのみならず、世界各地で先住民が病気に弱かったのは、こうした食生活の変化と腸内環境も影響しているのです。
屯田兵として北海道に移り住んだ和人にとって、稲作は悲願でした。味噌や醤油の材料である大豆栽培も大事なことでした。そうした努力の結晶をアイヌにも味合わせてやろうち考えたとして、根底にあるのが善意だったとしても、もたらされたのはおそろしい事態だったのです。北海道の歴史にはそんな悲しいことがたくさんあります。
北海道だけのことでもありません。明治の日本人にとって白米はごちそうでした。月島は白米の飯が好きな、当時らしい人物ですね。けれども、白米を軍隊て食わせた結果が脚気であることはあまりに有名です。森鴎外と脚気の悪しき関係です。森鴎外は意図的に兵士に脚気を流行させたかったのではなく、むしろ白米を食わせてやりたいという善意が最悪の結果をもたらしているのです。
アイヌを含め、先住民の生活を変えることにより、どれだけそれが有害な影響を及ぼしたのか、まだまだ研究の途上です。進歩と共にさまざまなことが解明されていくことでしょう。
ヤクルトから話がとんですみません。
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