『おちょやん』92 喜劇王・須賀廼家万太郎は笑顔のまま
昭和20年(1945年)の敗戦から3年、大山社長は一平に鶴亀新喜劇を立ち上げるように依頼してきます。その頃、喜劇王・万太郎は喉の病気で声を失っていました。
寛治はまだ満洲におる
万太郎は最後の一日だけ公園をするっちゅうことで稽古中。棺桶に入ってます。一座は天海家で食事しつつ、万太郎の執念やと話し合う。千之助は「しょうもな」と呆れています。一時は天下一だった万太郎一座も、大打撃を受けています。出征兵士で戻ってきたのは、今んとこあのメガネ姿の二人だけとか。このメガネの二人が、当時を再現したメガネやし、髪型も素朴でそれらしい。昭和にはこういう平凡なおっちゃんのようで、戦地帰りという人がいました。『なつぞら』の剛男とか。『スカーレット』の常治はガラ悪かったけどな。
ここで寛治はどうしたのかとポロっと出て、「言わへん約束」ということで話題を変えられます。せやな、当時は満洲から帰ってこない人とか。南洋ジャングルにまだいる人とか。シベリアに連れて行かれた人とか。ようけいたんです。でも、そういうことをずーっと考えていると日常生活どころやないので、割り切って生き取ったと。現代人からすればおっとろしい話でした。
このへん『マッサン』あたりから復員描写が雑でしたが、ちゃんと調子取り戻しとるようで安心です。
千代は千之助に澄んだ目で言います。万太郎の公演に参加しなければ悔いが残るのではないかと。すると千之助は「関係あるかい」と言い、その場で寝ると言い出します。他の劇団員もそう言い出す。なんでや! まあ、道頓堀に戻れるかわからんからとかなんとか。
「ほな自分らでひきぃ!」
千代はそう反抗します。せやせや。自分らでやれ!
一平は書き置きを見ています。寛治に書いたドサ周りをしているから、何かあったら岡安の御寮人さんを頼るようにというもの。旧仮名遣いやで。一平は無口で目や表情だけで心の動きを見せます。彼なりにいろいろ考えている模様。一平は一人になって考える時間が必要なので、外で酒を飲んでいるとわかります。めんどくさいやっちゃな。
そこへ千代がくると、一平は決意を語る。自信はない。先が見えない時代だ。それでも寛治が生きていける場所を、道頓堀に作ってやりたい。そう言い切る。千代はそんな一平に微笑みます。
かれらの生きる場所は舞台なんやな。
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『週刊おちょやん武者震レビュー』
2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…
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