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『水都百景録』を楽しもう!「倭寇から考えるグローバル・ヒストリー」

 アプリストアに「このゲームは楽しいけど、倭寇に悪意を感じる」というレビューがあります。デベロッパからの回答で十分だと思いますが、読めば読むほど、日本の歴史教育について不安が募ってきてしまう内容です。

当時の日中の認識は今とは異なる

倭寇=日本人の犯罪集団

 こういう認識があるから、カチンと来るのかもしれませんが、そもそも当時の「日本人」と今のそれは異なります。中国では「倭」という呼び方は使わず、マイナスの意図を持ってつけていることも大事です。

 明代でも永楽帝は、足利義満はむしろ好意を抱いている。永楽帝は「足利義満くんを倭人の王様なんて思っていないよ!」という認識でしょう。

 倭寇というのは、ざっくりといえば「不良日本人および関与する犯罪集団」という認識です。はじめは朝鮮で「倭が寇する」という使われ方をしていたものが、広まっていったのです。

 倭寇には、中国人も含まれていた!
 こういうノリの動画もあります。見てはおりませんが、中国人が日本人の悪事として描きたいけど、構成員は日本人がいなかったんだぞ、むしろ少ないくらいだぞ!……と言いたいのでしょう。
 これは中国では当然のことながら、当時から把握していまして。

 倭寇には……

・コスプレ状態の中国人
・複数のルーツを持つもの(親の片方や配偶者が日本人)
・本拠地が九州あたりの中国人
・日本人と貿易している中国人

 こうしたものも含まれています。朝鮮やポルトガルの人もいたとか。

 当時は今ほど国家や国籍がしっかりしていないので、混ざっていても全くおかしくありません。
 当時は頭髪が薄いだけで、倭寇として誤認逮捕された不幸な人もいます。倭寇コスプレでも、気合の入った構成員は月代を剃ってしまうわけですね。それと間違えられたのです。

 そういう史実を基にしており、時代考証的にはむしろ厳密であるのが『水都百景録』です。

 倭寇となると、明側の政治腐敗や海禁政策にも問題があるとなるのが今どきの良識ある描写です。その点、この作品はノリで倭寇を出すのではなく、きちんとしていると思えます。
 倭寇の対策がどこか場当たり的に思えたり、朝廷が投げっぱなしなところまで、実によく描けています。

 かつての中国語圏(香港と台湾も含めるということ)では、倭寇と日中戦争での記憶を重ね、敵意に満ちた描写が定番でした。それと比べて、この作品は進歩していると思えます。

 そういうことを調べもせず、無茶苦茶なレビューを書いたことを反省してください。あの書き方では、作り手が悪意をもって歴史を歪めていると捉えたと読めます。ゲームのレビューで済めば良いものの、実際の人間に対してそんなことをしないかと、私は不安になってきます。

グローバル・ヒストリーの日中差のあらわれか

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『水都百景録』をまったりと楽しむポイントや歴史トリビアなど。

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