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『おちょやん』98 欠けた月

 灯子、妊娠発覚――。
 座長が若い女劇団員に手を出しての顛末! そんなゴシップとしてババーンとまとめられそうですが。当の本人はそれどころやない。喜劇ネタにしてきた痴情のもつれに千代は打ちのめされています。

叱られる一平

 一平は岡福にいて、みつえにうっとこは宿やないと叱られてます。シズも当然冷たい目。宗助だけが労る。みつえがズケズケと事情を聞こうとすると、一平は弱々しく勘弁してくれと返すしかありません。
 みつえが、出番のために強くなっとる。
 芸能情報に詳しく、おエライさんにもタメ口で、むしろおそれられている。そんな外部から見たら存在そのものが謎。しかし道頓堀の関係者からすれば「ああ、あのおばちゃんな」で通じる。そういう謎めいた存在にみつえがなりつつあって頼もしい。

バナナは見舞いの定番

 翌日、稽古場は通夜のよう。千代は風邪で休みということです。しかし香里は何か思うところがあり、かつ騙されないようです。寛治が風邪が感染るといっても聞かず、バナナを持ってお見舞いにいきます。
 なんでこないに香里はバナナを誇らしげに持っとるのか? 昭和のこの時代、バナナは高級品でした。今ならマスクメロンか高級マンゴーか。しかも滋養によいということで、見舞いの定番だったんですね、
 バナナまで買うてこられたら断れへん。そういうことです。
 千代は座布団に突っ伏したまま。香里は灯子の妊娠を見抜いております。まあ、着替えなんか同じ部屋でしますし、気づく機会が多いといえばそう。千代は気づいていなかったから、そこは個人差がありますけどね。
 そして香里は、かつて座長に言い寄っていたことを言い出す。結構本気やったと。それから香里はろくな男とつきあえず、今持って独り身。だからこそ逃したらあかんと説得する。うーん、香里らしいちゅうか。正念場やと励まします。
 千代はむくりと身を起こし、バナナを食う。もくもくかむ。この顔が子役時代そっくりですごいなと。

灯子は一平と千代を邪魔したくはない

 一平は灯子を尋ねます。灯子は千代から一平を取りたくないと言い、二人の知らんところで一人で子を産んで育てると言います。そしてこうきた。
「せやからお金もらえますか」
 なんとも生々しいことを言うっちゃそうですけど、実際、お金ないと生きていけへんし。現実的ですわな。全然ロマンがないちゅうか、ファンタジーと決別するような話。愛で飯が食えるか。
 千代から一平を奪うくらいなら、この子と二人で死ぬとまで言い切る灯子です。
 香里はこのやりとりを聞いていて、千代に伝えます。そのやりとりをまた寛治が聞いとると。千代は香里に頭を下げて「おおきに」と微笑むのでした。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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