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【読書】青木美希『地図から消される街』にある原発の理由

 2011年の東日本大震災から7年後。その2018年に発売された本書の問いかけに対し、ロシアのキエフ侵攻が答えを出しているのかもしれない。そんな一冊です。

 この本を読み始めたのも、読み終えたのも、キエフ侵攻の前です。それがわずか数日でこんな皮肉な答え合わせになるとは。
 本書の問いかけとは、第3章にあります。日本がなぜ原子力発電所を廃止しないのか? 東京電力の免罪をするかのような動きをしているのか? その背後にある思惑がキッパリとわかりやすく記されています。
 核抑止力――原発を動かし、放射性物質さえ溜め込んでおけば、核兵器を作れる。平和利用の仮面をかぶって、そんな思惑を抱きながら保ち続けたと指摘されています。
 その論理なり、背景の事情は、実際に本書を手に取って読んでください。私にSNSで問いかけられても答えようがありません。

 この馬鹿げた思い込みを、今回のウクライナ侵攻が吹き飛ばしたといえる。本書には、いざ核兵器を作るとなったときのタイムスパンのシミュレーションまで書かれています。読んだ時もそれで間に合うのかと疑念でしたが、今回の件で明瞭になりました。
 侵略が始まったとして、核兵器を作り始めても到底間に合いません。泥棒を見て縄を綯う。その諺通りになる。あまりに愚かとしか言いようがありません。
 今回のウクライナ侵攻ではIT技術が鍵を握っています。この辺の諜報戦は既に始まっていて、ロシアゲートの時点で危険性は指摘されていました。ティモシー・スナイダー『暴政』を思い出してみると、今回の件は起こるべくして起こったと思います。わけのわからん「チャイナウイルス!」だの「武漢肺炎」だのぬかしている間にすべきことはあったのでは? 武漢肺炎とことさら書くような人は危機管理意識が低いので、距離を置くべきかもしれない……と、話が逸れたので戻しますが。
 ともあれ、日本は核兵器云々以前にIT諜報戦で既に敗北していると思いますので、核兵器の夢なんて持つよりやるべきことはあったでしょう。現在ITで最前線にいる層であった氷河期を食い潰したことで、日本のIT戦争はもう負けて終わったと思いますが。

 話を本書に戻しましょう。
 結局のところ、原発って、核兵器の本物を持てない日本の一部政治家が、ジェネリック核兵器として維持したかったんじゃないかと、本書と今回の侵攻を併せて痛感しました。そんなバカみたいな破滅の夢につきあったせいで、福島はあんなことになったんですか? 愚かすぎる。
 チェルノブイリは、原発がある国はむしろ侵攻に弱いことも示しました。

 戦争は一刻も早く終わって欲しい。
 のみならず、バカげた原発の夢もとっとと始末をつけねばならない。こちらは、日本人がすべきことです。

 1000文字を超えても、青木さんの優しさ、慧眼、本書の偉大さを書けておりません。申し訳ありません。ともあれ本書は読むべきです。


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