見出し画像

『水都百景録』を楽しもう!「阮籍と嵆康 その二」

 もう今更いうことでもないけど。阮籍と嵆康は尊いと思う。その歴史的うんちくでも。

どうして二人とも現実逃避気味なの?

 この二人の服装は、屈指のラフさです。同時代文人としては潘安と比較してみましょう。彼も他の時代と比較すると髪型が自由だけど、それなりにちゃんとしています。

 阮籍と嵆康は「俺ら仕官無理! だってこんなカッコだし!」というポーズありきでああいう格好なのです。

 じゃあなんで仕官したくないか? あいつですよ、アイツ。司馬懿とその息子たちのせい。そのへんの嫌な政治事情は『軍師連盟』がおすすめです。
 この『軍師連盟』には「五石散」(ドラッグ)吸引シーンも出てきます。阮籍と嵆康は出てこないものの、嵆康を処刑においつめた鐘会は出てきます。

 曹魏から司馬の晋へ。その交替機の熾烈な政治闘争から身を遠ざけたかったのです。無欲なのは生まれつきもあるけれども、欲にかられた人間がどう堕落するかよくわかっていたからこそ、彼らはああした姿勢を見せます。
 それが「やる気がない」と処刑されることにも繋がりかねないので、慎重さが求められるのですが。

 ニートのくせに有名だのなんだの揶揄されるけど、彼らの抵抗は命懸けです。

 そして阮籍は逃げ切れたけれども、嵆康はちがった。難癖をつけられた友人・呂安を擁護した結果、難癖をつけられ処刑されてしまうのです。

中国史の友愛

 『水都百景録』では仲の良い人同士が街で出会うと、ぴょんぴょんとはねて、一緒に楽しそうに歩き出します。これも考証として正しいのです。
 親愛表現としては……

・手を繋いで歩く
・抱擁
・街の中を一緒に歩く
・同じ車に乗って移動する
・寝室にまで入れちゃう
・同じ寝台に寝転んで話し合う
・同じ寝台で就寝

 といったものがあります。

 どうしても近代以降、それを男同士でもありだと思うとなんだか困惑があるかもしれませんが、それが伝統なんだもん。
 ご飯を一緒に食べるというのもあって、おいしいおかずを自分の皿から相手の皿に箸でさっと入れるなんて仕草もありますよね。
 なかよし表現が濃いんです!
 文徴明は「唐伯虎といっしょに寝た寝具を抱きしめて思い出してキュンキュンしてる」と詩に残してるし、もうどうしようもないですね。

 みんなでなかよしだと言い合おう!

ここから先は

910字
『水都百景録』をまったりと楽しむポイントや歴史トリビアなど。

『水都百景録』を楽しもう!

¥100 / 月 初月無料

『水都百景録』の攻略というか考察など。

よろしければご支援よろしくお願いします。ライターとして、あなたの力が必要です!