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『水都百景録』を楽しもう番外『すばる』2023年6月号ショック

 文芸誌『すばる』が大変なことになっています。

文芸誌「すばる」が初めての重版 中国発エンタメ人気が後押し:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASR5966R2R59UCVL011.html

朝日新聞デジタル

 私はネットの予約が埋まっていることで、もうこれは駄目だと諦めていました。しかし近所の書店に取り置きを依頼したところ、無事購入できました。

 今回はマガジンながら無料でほぼ全文公開して、その内容をまとめてみます。といっても、特集のみで。

特集:綿矢りさプロデュース 中華(ちゅーか)、今どんな感じ?
鼎談
墨香銅臭×括号×綿矢りさ 良い物語を創るのに必要なこと
エッセイ
綿矢りさ 激しく脆い魂
論考
佐藤信弥 『陳情令』のルーツ──仙俠と武俠、金庸作品との関係、時代背景
はちこ 中華BL二十五年の歩み──誕生、発展、規制、そして再出発
小説
綿矢りさ パッキパキ北京

すばる2023年6月号

鼎談 墨香銅臭×括号×綿矢りさ 良い物語を創るのに必要なこと


 滅多に表にでない『魔道祖師』原作者である墨香銅臭氏が語る――ということで、中国でも翻訳されて出回ったというもの。これ目当ての人も相当多いことでしょう。
 それはそうだけど、贅沢を言えばもうちょっと踏み込んでもいいかなと。墨香銅臭氏が金庸ファンだというのは予想範囲内ですが、それなら好きな作品や人物が聞きたかったかなと。ただし、日本の金庸知名度を考えれば仕方ないかなと。

綿矢りさ 激しく脆い魂 パッキパキ北京

 綿矢氏が、いかにして中華ものにハマったのかというエッセイ。前述の通り、日本では武侠そのものがマイナーだし、こういう接し方が共感を呼ぶだろうと思いました。
 小説は今の北京を切り取った作品ですね。

佐藤信弥 『陳情令』のルーツ──仙俠と武俠、金庸作品との関係、時代背景

 とてもいいとは思う。ただし、佐藤氏の『戦乱中国の英雄たち』の方が深いかなと。それも買いましょう。

はちこ 中華BL二十五年の歩み──誕生、発展、規制、そして再出発

 このあたりは全然わからないので、とても勉強になりました。

望蜀ながら

 ただ、本書はあくまで第一歩で、踏み込みが足りないとは思いました。それはめんどくさい筆者のせいだとは断っておきます。ここは望蜀と前置きして……望蜀の意味は自分で調べようね。中国もの読むなら知っておいた方がいいよ。はい、じゃあいきますよ。
 まず、佐藤信弥先生に不満はないけど、人選として以下の方も欲しかった。

・魏晋南北朝の柿沼陽平先生
・武侠の岡崎由美先生
・中国文学の金文京先生

 のみならず、できれば日中文化対比とか。道教とか。そういうことも欲しかったなと。惜しまれるといえば、井波律子先生がご存命でないことです。彼女ならどれほど熱く、この状況を語ってくれただろうか!
 井波律子先生は、魏晋南北朝時代成立の『世説新語』解説本など、書かれております。この井波先生の『世説新語』本は『魔道祖師』ファンは必読だと思います。時代の空気がわかります。図書館にあると思いますので、ぜひとも手に取ってみてくださいね。

 中国の方が陰陽師について熱く語るところをみたことがあります。羽生結弦選手の演技から入った方もいることでしょう。中国の道士と、日本の陰陽師には、浅からぬ因縁や共通点がありまして。たとえば、そういうことも踏み込んだらもっと楽しくなるんじゃないかなと。

 『魔道祖師』の忘羨コンビは、阮籍と嵆康をモチーフとしている部分はあると思うんですよ。そういうことを柿沼先生が書くときは近いとみますね!
 
 ただ、わかっちゃいるんですよ。
 それだと、雑誌特集のキャパシティオーバーなんだ。とりあえず佐藤信弥先生は『戦乱中国の英雄たち』続編を書いてですね。出版社は、これをテーマにして、ムックでも出しましょう!
 期待しています!

 はい、ここから先は『水都百景録』ですよ。

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