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『虎に翼』第57回 道男という戦災孤児

 昭和24年(1948年)、家庭裁判所ができあがり、戦災孤児の保護に乗り出しました。そうして出かけた上野で、寅子は轟とよねに再会します。できる範囲で孤児たちを守るよねと轟。轟はともかく、よねは行政の孤児対策に全く信頼感を抱いていません。くってかかるよね。それに同調するガラの悪い孤児の道男。寅子は黙り込むしかありません。

行政への不信


 轟はここで付け加えます。タカシも道男も空襲で良心を失っている。寅子を疑うわけではないけれど、子どもの心に傷をつけないで欲しいと。

 そこに多岐川と汐見がやってきます。
「誰だ、おっさん」
 よねがそうつっかかると、多岐川は初対面の相手をおっさん呼ばわりする相手に名乗る名はないとつっぱねます。ここで寅子が多岐川と汐見、よねと轟の紹介をすると、汐見は顔を輝かせてこう言います。
「よねさん! あなたが……」
「はっ?」
 よねが訝しんでいます。このドラマはこういうところがうまくて、香子がよねのことをどれだけ懐かしんでいたのかがわかります。いつかよねと香子が再会するであろうことも。
 轟はよねの比例を詫びつつ、怒りを目に宿し、連れて行かれた子どもたちにろくな食べ物も与えず、脱走させるがまま、そんな行政の不手際をしっかりとぶつけます。かつての轟は怒りや思ったことをまっすぐぶつけていましたが、賢くなって、回り道しつつ適切に相手にぶつける術をみにつけました。よねの無礼はそのために使える。ここでよねが轟のオブラートに包んだ言い回しを、家庭裁判所だって同じだと火の玉ストレートでぶつけるわけです。いいコンビですね。刑事物である怖い刑事とよい刑事のペアみたい。これが男女逆でなく、よねのほうがきついのがまたいい。
 寅子が決してそんなことにならないと誓うというと、よねは食ってかかります。お前に何ができると。よねは桂場と同じできついので説明しませんが、心配でもあるんでしょうね。寅子はかつて「去って行った仲間たちのために」とぶちあげて、背負いすぎてよろめき、よねが助けようとしてもできず、沈んだ過去がある。
 寅子も成長した。この前はよねの助力に気づかず単独で沈んだけれども、無理だとあっさり認める。よねと轟だけでも無理。何万人もいる孤児を個人では救えない。そう誘導していきます。
 多岐川は、家庭裁判所は愛の裁判所だと伝え、決して拒んだりしないと告げます。そしてよねと轟の目をみて、地域に根差した支援はすばらしいと褒めます。
 轟はわかりやすく感動しているし、よねもまんざらでもない顔をしています。

トラックで運ばれてくる孤児たち

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