『おかえりモネ』第92回　解決するのは自分自身

　明日美からの電話で、モネは何も考えられなくなってしまう。カキ棚の被害は？　家に連絡しなければ！

あなたはもう無力じゃない

　菅波の隣でまずは父母に電話するモネ。次は未知。ところが、未知にかけようとするとメッセージが入って、無事を伝えてきます。
　モネは続けて悠人、ジェネレーターの報告者と、連絡先をどんどん考えて行きます。会社に行こう！　そう動き出そうとするモネを、菅波が止めます。
　　ここの菅波なんですけど。もう視聴者の皆さんはメロメロで多分そうは思わないだろうけど。人によってはいちいち指示するようなところが「ウザい！」「偉そう」ってなるから要注意ね。
　菅波は、自分の力でできるはずだと言います。朝岡と高村の許可を得て、新幹線に乗り、タクシーを使えば夜には行けるはず！
　本作はこの辺りが割と細かいんですね。気仙沼と東京の交通を今まで見せてきました。割と近い。同じ東北枠と勝手に『あまちゃん』とまとめられるのですが、南東北と北東北はちがう。あれは北東北、こっちは南東北だから。そもそも東北広いから。東北人あるあるとして、こういう言葉がある。
「でもさ、青森って同じ東北でしょ？　宮城から行けばいいじゃん」
「福島と宮城って、隣県だよね。近いでしょ」
　いや、関西あたりとちがうから！

　交通事情はさておき、菅波がいいことを言います。
　また言うのか？　何もできなかったって。もうそんな無力じゃない！
　あのときの思いに潰されてきた。今はそうじゃない！
　いいね。そうそう、モネは強くなった。モネは親ガチャ大当たり朝ドラヒロインではない。地道にここまで強くなりました。菅波は過去を変えることはできないけれど、未来は変えられると伝えてきます。ここで菅波が一緒に行こうかと提案するものの、モネが即座にキッパリ断るところもいいですね。モネは強い。それに菅波は、弱っている相手を助けて得点を稼ぐような奴じゃない。
　これが、令和の思いあう二人だ！　かわいくねえ、だの。甘えたら、だの。そういうのは古いのです。

　奈津はそんな二人を見ていました。そしていい関係だと思いました。先生だから言えることだとしみじみとしています。
　奈津の年代は、ジェンダーにとらわれる力がモネたちより強い。もしもヒロくんこと宇多川が、男だからと突っ張りすぎなかったら。運命は変わっていたかもしれない。でも奈津だって過去にとらわれていられないし、何か新しいものを受け取ってもいいですしね！
　そこへボイラー修理工がきます。その修理工を見て菅波はハッとします。
「宮田さん……」
「菅波先生……」
　この二人の関係は？

引き返せなくなるかもしれない道へ

　ウェザーエキスパーツで、朝岡はモネのこと聞いて理解しています。台風12号コーナーを受け、モネの中継はカットされるので問題はないそうです。しかし、引き返せなくなると朝岡は憂慮している。朝岡って、なんかこの人、諸葛孔明みたいな雰囲気出してますよね……。西島秀俊さんはもう軍師役をやらなきゃ！
　引き返せなくなるとは？
　地域密着型の気象は、目の前の人を相手にする。そうすれば成功すれば良いけれど、そうでなければ辛い。それでもよいのかと聞かれ、モネは自分の力で何ができるか確かめてくるとキッパリ言い切るのでした。

　菅波と宮田は6年ぶりの再会でした。先生のおかげと笑う宮田に、菅波は複雑な顔を見せています。ボイラー修理は好きなんだそうです。感謝されるとうれしいし、ボイラーが自分の体のように思えると。
　宮田は感謝をしつつも、恨んでいたと言います。どこに怒りをぶつけてよいかわからず、訴訟すら考えていた。でも、先生のせいじゃない。そう言われ、菅波もそれを即座に「当然です」ボソッと肯定します。そういうところが不器用だね。
　でも、命を救われたから生きている。それが大事。宮田はそう言います。

橋を渡って故郷へ帰ろう

　モネが永浦家にたどりつくと、そこはなんだか楽しげでした。想像とはちがうわいわいした雰囲気です。カキ棚は壊れちまったけど、ならば食うしかねえ！　出荷できるぶんはテキパキと梱包し、むき身はじゃんじゃん食べています。公務員になった悠人も、行政も支援すると龍己に言います。
　そんなわけで、むき身の牡蠣を食べまくるという、スタッフがこのあとおいしくいただく姿が羨ましい、最高の受信料の使い方が見えてきました。いいんでねえが。
　ブランデーの40年ものも出す！　つまむものも作ってくる！　そう大騒ぎの中、未知は亮に「お祭りみたい」と語りかけます。亮もこういうことが好きだって。
　そんな姿をモネが見て、震災の日のことが蘇ってきます。
　何のためにここまで来たのか？　涙がスッと溢れる。どうしてここへ来たのか？　そう気づいた人たちに問われ、モネは返します。
　橋を渡ってきた――。