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『虎に翼』第6回 虎穴に入らずんば虎児を得ずとはいえ…

 昭和7年(1932年)――寅子はいよいよ、明律大学女子部へ進みます。それを前に六法全書をもち、記念撮影をします。一方で優三は試験に落ち、司法浪人生活二年目に突入しました。これが手厳しい下宿先なら「もう首を括るしかないぞ」とか言いかねん酷い話かもしれません。コメディタッチで流されているけど優三は苦労人です。
 それにしても、新妻である花江にデレデレしっぱなしの直道はなんなんでしょうか。恋する男をここまでお笑いタッチにする演出も斬新ですね。はるはクラスメートはどんな女の子かとため息ひとつ。法律を学ぶなんて変わり者でしょうからね。どこか爪の甘い父・直言はくじけたらいつでも帰ってこいと甘い。
 この父母の描き方は実はジェンダー的に逆転しています。実際はどうあれ、フィクションでは母が優しいことを言い、父が厳しいことを言いますよね。朝ドラはモデルがある作品でも、そういうところをチョコチョコ手入れしてきたものです。今回は別方向のチューニングの入れ方をしております。

入学式の式辞は涼子様が読む

 口笛を吹いて歩いていく寅子は変人です。当時としてははしたないし、口笛は蛇を呼び寄せるなんて迷信もありますから。寅子が余裕であるのは、女学校と同じお茶の水に大学があるからなんだとか。
 そして入学式へ。式次第がちゃんと和紙に筆で旧字体で書いてあってよし。ダメなドラマはIllustratorで作った感が出てしまうのじゃ。入学者は全60人だそうです。皆法律家をめざすだけに女学校とは雰囲気が違うとか。女子校は花嫁学校みたいな側面が大きいものですからね。
 ここで代表者挨拶。華族男爵家ご令嬢の桜川涼子です。玉という侍女がつきそっていて、「涼子様!」とざわつくものもおります。美しい振袖にモダンな束髪、そして真珠のイヤリングが耳元で輝いています。この髪のウェーブのかけ方の綺麗なこと。これぞ当時のお嬢様ですね。嗚呼、美しい! きっとフランス香水もつけておいでですわ。
 
 このころの華族令嬢は雑誌にグラビア写真やファッションチェックが掲載されるほど。今なら王室の姫やお妃枠でしょうか。このドラマは衣装もバラバラで、寅子のようなクラシックな女学生らしい袴姿もいれば、涼子のような振袖、洋装もいます。
 涼子は挨拶の冒頭で、英語で呼びかけます。「イエース!」と羽織姿の女性が返事をします。寅子の袴にせよ、彼女の羽織にせよ、本来は長いこと男性だけのものでした。明治以降、女性も着用するようになったのです。

マイペースながら式を楽しむ寅子

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