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森博嗣、スカイ・クロラシリーズ考察(3)キルドレ

キルドレについて整理してみよう。

<キルドレとは>
・遺伝子制御剤の開発の途中で生まれた子供たちに名付けられた総称。
・元々は遺伝子制御剤新薬そのものを指す名称だった。
・よほどの大病を患わない限り死なない人間が、この新薬により誕生した。
・子供の時点で身体的成長が止まる。
・女性のキルドレに限り、非キルドレの男性との間に子供を設けると、非キルドレになる。
・非キルドレになった後も投薬によりキルドレに戻る。
・キルドレ同士の妊娠・出産では非キルドレにはならない。
・キルドレが誕生してから「スカイ・クロラ」の時点で、20年ほどが経っている。

<キルドレの性質>
・記憶障害、忘れっぽい。
・幼少期の記憶がほとんどない。
・時間経過の認識があいまい。昨日のことと一年前のことの区別がない。
・名前を覚えられない。
・自分自身を認識できない。
・他人の記憶と自分の記憶の区別がつかない。
・夢、ドラマ、本などで起きた出来事と現実で起きたことの区別がつかない。
・夢で見たことで、過去にあった現実を改ざんする。

『クレィドゥ・ザ・スカイ』で登場する心理学専門の医者ハヤセとクサナギとのやりとりから読み取れる。各書にもキルドレの特徴についての記述は見られるが、この会話が一番端的に示している。

また『スカイ・クロラ』にて、三ツ矢とカンナミとの会話においても、キルドレの性質について描かれている。
注目したいのは、三ツ矢が羅列したキルドレの性質について、カンナミが「僕のことだったら、だいたいそのとおりだよ」と言っている点だ。特に「夢で見たことで、過去にあった現実を改ざんする」に対して「そのとおりだ」と返事していることがキーとなる。

後述していくが、「“僕”とは誰か」というシリーズ最大の謎を解く際に、このことを根拠として僕は持論を展開していく。