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夏すくい

作詞:コヨーテ

焦らずに 溺れずに
赤いまま この夏が 溶けないように


境内に 点々と 揺れる提灯
祭りの囃子に 賑やかな 声黄色
階段を 一段飛ばして 汗流し
駆け上がった 

カラフルに 立ち込める 匂いの中
入れ替わり 行き過ぎる 雑踏の中
遠くで 反対の手で浴衣の袖抑えて
金魚掬いに 夢中な君
水面を見てる輪郭が 突然飛び込んだ


恋落ちてしまったよ 知ってしまったよ
赤い尾鰭なびかせて 揺らぐ心は
高鳴る祭囃子よりも早く リズムが乱されてく
僕は この夏に 残されたまま


扇風機 ぐるぐると 回す首
積乱雲 逃げてく 飛行機を
呆然と 机に座って 交互に眺めた
日々だった

祭りに むせ返る 夕暮れだから
柔らかな風 すり抜けて 心地よかった
穴あきポイ 虫眼鏡のように 
しゃがんだまま覗いて
はじける笑顔で 友達見た君
無邪気で綺麗で 永遠(とわ)に忘れない


瞬きが惜しいほど 追ってしまったよ
赤い裾をなびかせて 揺らぐ姿は
打ち上がるあの花火よりも高く 夜空に溶けてく
君は 来年も ここにいるかな



僕は身体が火照るのがわかるほど
普段は結ばないはずの
束ねあげた髪をみれないほど
提灯のせいか 暑さのせいか 
前から知っていた はずなのに 目が泳いでく
金魚のような 赤い尾鰭の君に


人混みの中 かき分けて最寄り駅まで押されゆく
落ちたハンカチ 指先ですくい上げた僕

あぁ 一度でも 届いてほしい
その尾鰭なびかせて 流れる背中
ひとなみをかいて 泳いでく
あのさ 声をかけて


いつもと違う 遠くの君に
僕は今 君に渡した
その手に触れた


去り際の ありがとう
赤い浴衣の袖 夏の夜
目の前を すり抜けてゆく

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