見出し画像

記憶の消し方

〜インシディアス「赤い扉」〜という映画を観た。

2010年に一作目が公開され、チラッと登場する恐ろしい顔に釘付けになり観たのがきっかけでこれまで全作品観てきた。
昨年その最終章が公開されたので、一体どういうオチの付け方をするのか興味があり観たのだけど…

「最初からそうしとけば良かったのに」

元も子もないことを言ってしまった。
シリーズ物だからしょうがないしどうせここまで作ったら最後はコレでいいかな。というやっつけ感がどうしても漂っていたので感想は遠慮しておくことにして。


自分が少し気になったのは‥

父と息子に降りかかる恐ろしく忌わしい体験がメインなのだが
その部分のみを精神科医?霊媒師?のような人が親子の記憶を消すという序盤のシーンだ。
ストーリー的には「記憶を消した」が為に苦労する親子を描いているのだけれど。
「こんな事してくれる人がいるなら是非お願いしたい」
と私は諦め半分の冷めた目で観ていた。

この人達にとってはその方が良いけれど、こんなオカルト体験では無くただ単にしんどい体験をした人は、同じ事を考えた事があると思う。

「いっその事、記憶喪失にでもなりたい」と。

ならば、単純に今の苦しみは無いのではないか。
思い出し追体験をし苦しみを再度味わう。
あの時と同じ場面、空気、目に入ったモノ、そして投げつけられるコトバ。
頭の中で思い出し、それが目の前で今起こった事の様に傷ついている私を見てまた傷つく。
映画みたいに過去に帰って何かを変える事は不可能だ。
私を踏みつけた人間は、誰も謝ろうとしないし変わろうともしなかった。
考えれば考えるほど、記憶を消してしまおうと頑張るどころかどうしても悲しみや憎しみが勝つ。

母の祭壇に妹と弟を突き飛ばして線香の灰を頭から被せて顔に塗ったくってやれば良かった。
まるでコントのようなシチュエーションを想像するのが癖になった自分がいる。

たまに夢に出てくるあの人は
私が「もういいから」と吐き捨てるように告げると
「ああ〜これで私もゆっくりできる」
と嬉しそうな表情を浮かべる。

それだけかーい!謝ることないんかーい!
あんたの中途半端な終活や仕事の後始末をどんだけ苦労させられたか。
馬鹿2人どうにかしろよ。
あんたを安心させるために頑張って自分を取り戻そうとしてるんじゃない。
何がゆっくりできるだ、死ぬ前日まで嘘をつき好き勝手やってたくせに。
私は私のために仕事も人間関係も無理してるんだ。
だからこんな病気にも勝てず苦しんでるんだ!

生きてる人間の苦労も少しは考えろ!」


逆ギレをして目が覚めた。

またあの赤い扉は閉ざされた。
この繰り返しに疲れてしまったのだ。
たまに襲う、目が覚めた時の表しようのない絶望感。
誰かこの人間達に関わった部分だけの記憶を消して欲しい。

映画のように。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?