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重度知的障害の方との暮らし【7日目】 甘えさせ上手なたけし先輩

「たけしくん」を「たけし」と呼ぶようになってきた。
一週間が経ち少しずつ慣れきてた。最初と比べると、たけしを見てモヤモヤを感じることが少しずつ少なくなってきた。

モヤモヤが少なくなった一つの理由は、たけしとスタッフの間で与えあっている部分を感じ始めたからだ。スタッフが何を受け取っているかはまだ詳しくは聞いていないので、参考までに僕がたけしから頂いていることをシェアできたらと思う。

たけしの前だと甘えられる

一昨日、仕事がひと段落終えた後にたけしと遊んでみた。たけしが大量の新聞紙を破っていたのだが、破れた新聞紙を集めてシャワーを作ってみた。たけしは、喜んでいるかどうか正直わからなかったが、僕はそれが楽しく感じた。(まだたけしの感情を全く読み取れない)新聞紙シャワーに興味を持ってもらえたらと思いながら、何度も大量の新聞紙を高いところから落とした。自分本位だったかもしれないが、その時間は僕にとっては良いリフレッシュな時間になった。

それから、よくリビングで疲れる作業をした後、たけしが近くにいると遊びに誘うようになってしまっている。たけしが自分の体や床をよく叩いていると、僕もたけしの叩くタイミングに合わせてプラスチックの箱を叩いてみたり、たけしの好きな琴を鳴らしてみたり、とにかくたけしに構ってもらえたら万歳という気持ちでアプローチをしている。たけしの前だと子どものようなピュアな感性を持っても大丈夫だと感じるからなのか、たけしと関わっている時は安心感があって居心地がいい。また、たけしに寄り付く時は「わかんないよ~」「つかれたよ~」など、自分の気持ちを聞いてほしいと(泣きつくような素振りはみせずに)泣きつくこともある。器の広いたけしは、何も言わずに受け取ってくれる。

リビングに大きな琴がある

たけしの前だとしっかりできる

ぼくは、ものの整理整頓が苦手で、ものを置きっぱなしにしてしまうことは少なくない。しかし、ここではものを所定の場所に置くことができて、清潔で暮らしやすい生活が実現している。リビングに自分のものを置いているとたけしに投げられてしまうことがあるからだ。だから、力むことなく自然と僕の置きっぱなしが少なくなっている。
また、たけしは原則、一定の生活リズムの元生活をしている。だから、それに合わせて、僕もお風呂や起床などの生活のタイミングを合わせるようにし始めた。ここ最近は、仕事も辞めて自堕落になっていたのだが、たけしのお陰で少しずつ溌剌とした生活を取り戻しつつある。
他にも、たけしの前だと集中力が長く続く気がする。確かにリビングで仕事をしていると時々にたけしに気を取られるのだが、その度に「集中しなきゃ」という気持ちになる。結果として、定期的に集中したい気持ちになるので長く作業をしていられる。

大体リビングの端っこで僕は作業をしている

メリット以外に関係性を繋ぐもの

たけしとスタッフたちの様子を見ていると、僕が新入社員の頃を思い出した。僕はよく「価値を早く出さなければ」という考えに強いこだわりを持っていたのだが、「ただ居てくれるだけでいい」と先輩によく言ってもらっていた。当時はよくわからず受け入れることができなかったが、今なら先輩たちが伝えたかったことを少し受け入れられる気がする。
スタッフさんたちが、たけしのフォローをするのは正直とても大変に見える。しかし、スタッフさんたちは本当に驚くほどに気にかけている。スタッフさんがつくったご飯をお皿ごとひっくり返そうとしたことがあった。そんな心の痛むことがあっても、たけしを細かに気遣い、フォローをできるのはなぜだろうか。僕のように幾つかのメリットがあるからというのもあるだろうが、さすがにそれだけでは説明がつかない程にたけしを気にかけている。
なんとなく予想はついているけれども、これはスタッフさんの言葉を直接聞いてから答えに達したい。たけしの探求はまだまだ続く。

次回【14日目】「たけし」をなかなか受け入れられない

https://note.com/53617110/n/ne980ebfd9fba

今回の劇場

写真・文章/中原誠大

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