【SS】陶芸おじいちゃんと僕
(770字 2021年12月につくったものです)
地域の陶芸サークルに入った僕は、毎週日曜に公民館で陶器をつくっている。そのなかでも、佐藤さんは、群を抜いて形の綺麗な作品をつくる。佐藤さんは七十二歳の元気なおじいちゃんで、普段は農業に勤しんでいる。健康の秘訣は日々体を動かし、自然と触れ合っていることなのかもしれない。
陶芸サークルのメンバーは全部で二十五人で、そのほとんどが六十代、七十代。二十五歳の僕は、唯一の二十代で、メンバーの皆さんからは、まるで孫のように可愛がられている。
僕はサークルに参加してから一年が経つというのに、まだまだ腕が未熟で、今日なんて、自分の完成作品を誤って道具で傷つけてしまった。
「ええ~? 嘘でしょ~? 萎える……」
傷が入った作品を見てうなだれる僕の近くに佐藤さんがやってきた。
「佐藤さん~。僕、全然、上手くならないんですよぉ~。見てください、自分の作品も傷つつけちゃって……」
「わははは! スミス君。そう、めげるなよ! 創作している以上、つくると傷つけるは表裏一体だ」
「めげますよぉ~。一年も経つのにまだ上達しないなんて……はあ~」
佐藤さんは、ケラケラと笑っている。
なんだよ。僕はこれでも結構、落ち込んでいるんだぞ。
「農業と一緒だよ、スミス君。どれだけ心血を注いでも、思うような結果が返ってくるとは限らん。それが自然だ。君のつくった陶器だって生きてるんだから! わはは!!」
「ええ……。僕はもう、心が折れそうです……」
「分かった、分かった。じゃあ、このあとファミレスでも行くか? おごるぞ」
「えっ!!」
佐藤さんは、今度は大笑いし出した。
「なんだ、スミス君。急に嬉しそうにして。全然、心折れてないじゃないか~」
佐藤さんはずっと楽しそうにしている。
急激にお腹が空いてきた。本当に食べ物の力は偉大だ。
とても嬉しいです。ありがとうございます!!