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創作のむこう側⁈

アナログ作家の創作・読書ノート   おおくぼ系

今週は、NOTEの作品感想をふくみま~す!

 NOTEをクリックしていて、なるほどと引き込まれる創作(小説)にあたると、ぺージをめくる楽しみにドップリとひたる。いわゆる読ませる作品であり、知的興奮をよびさまされる。
読み終わるといいしれぬ余韻が残り、ひとり、満腹感をおぼえながらも、もっと味わいたい、という焦燥感をもあわせもつ。時間とともにボーッとした感性が、すこしずつ作品の呪縛から解き放たれていき、もといた平常世界へと静まっていく。
 
最近、そういう、面白いと感じたものの一つに「フォルテシモVSロマンテイック」という作品があり、作者は、〈秋(空き)時間〉という方。
 クラシックの作曲家らしき、アップされたモノクロの顔写真が古風(クラシック)の糸を引き、物語が始まっていく
 
 ――我らが大振拓人が日本の若手のNo. 1指揮者である事はもう誰もが知ることだ。そして彼が日本クラシック界の最重要音楽家であることも世間の常識レベルの話であるーー
 
 なるほど、出だしを読んだ時に、実在の指揮者をモデルにした作品だろうと、見当がついた。大振拓人という主人公のネーミングも意味深なものに思える。さらに作品のキーワードといえるものが〈フォルテシモ〉であり、この言葉の多様性(いろいろな意味を持たすこと)をもって、狂言回しのごとく一定のリズムをもって物語が進行する。音楽に対する情熱と知識を有する、スピリットをもった作品! これは来たなーと思わせる。
 意識的か、あまり空間を(行間を)あけないビッチリと詰めた文章が、いにしえの純文学の香りをただよわせる。
 
しばらくして再読した。語りがおもろい! このモデルはだれか? との思いもあり、推測しながら途中でニヤニヤ! ところが、最期はやはりあっけにとられた。独特の熱い語りで一気読みさせる。
オマケもありで、別掲で作品のモデルについての解説や、カリスマ指揮者大振拓人のイラストも付いていて、作者は、「クラシックは、格闘技なのだ」とおおせになる。
なるほどで、角度を変えると創作を掲出し、それが読まれることは、ある面、作者と読者の格闘技かもしれないと考える。
 
 ところで、このような秀作に出合うと、気持ちが豊かになることはもちろんであるが、作品を軸にして、周辺やその向こう側を思いやる。これもけっこう楽しい作業である。自身、小説を書いているときには、気づかなかったことを、相当の時間がたってから、あ~ひょっとする、とこういうことを現わしたかったのかと、りつ然とすることがある。例えば、前回もとりあげた、キンドルで出版した『海紅豆の秋』であるが、主人公の薬師丸は、知事から
 
「薬師丸君、君は仕事と友達とどっちを採る」……「仕事」と「友達」か……イメージしてみても難問であると直感した。
一呼吸の間をおいて間髪いれずに感性で断じた。
「私は、友達を選びます」
 そう答えながら裏腹に、自分はまだまだ若いなと思った。いいようのない率直さを恥じた。しかし、仕事という抽象的で理解しにくいものを奉ずるよりも、友達を考えるほうが明確に考えやすい。友達、友人――登ちゃん、美登里であり、パーフェクト姫そして与那嶺など……友達が次々に浮かんでは瞬時に消えた。なんといっても、自分は人間そのものが仕事よりも好きなのだと。
 
この展開で進むのだが、彼は、友達が現知事に対抗して知事選に出馬するとなると、どちらとの表明をしない、いや出来なくて、どちらを支持したかは墓場まで持っていくと断言したが……今回のキンドル化にさいして終章に二行ほど加筆して薬師丸の立場を明らかにし、そのことにより、より完成度の高い作品になったと思う。
ただ、この作品は、〈30代、40代のいそがしい日々を送っている、責任世代にぜひ読んでほしい〉としたところ、18歳未満は禁の成人指定を受けてしまった(笑)。たいしたことはない、女性同士のワイ談のシーンはあるのだが?
 
創作から、そのようないろいろな味わい(新たな発見)を見つけ出すことも大きな喜びであり、次作のカテともなる。さらに、作品の向こうにたたずむ作者像を組み立てることも、キャラ立となり想像の世界がふくらんでいく。
 それも創作力の範囲であり、キャラが現実の作者さんと似ているとか、当たっているとかは、問題外であり、創作品を創り出した作者なりの像を、作品の文章のみから結ぶ力がなければ意味がないと思うのである。けっこうなミステリーでもある。
 
 で、結論を言うと、小説というフィクションの作者は、フィクションとして存在し、顔出しをしたりしない方がいいというのが、私の考えである。〈おおくぼ系〉も年齢・性別不詳が正しい(?)と思っとります。読者は、かってにふくらまして、アレコレといってもらえれば、御の字で-す! ということです。(事実、実物は面白くもおかしくもないブッチャ顔の異星人(笑)です)


             (随時、掲載でーす! ヨロピク!)

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