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いくぞ新作⁈ (13)  

アナログ作家の創作・読書ノート   おおくぼ系

*長編連載小説の13回目〈 はるかなるミンダナオ・ダバオの風〉、いよいよクライマックスです。ハードボイルド・サスペンを意識しております。引かないで読んでくだっせ~


            〈あらすじ〉
中城紫織(なかじょう・しおり)は、中城設計工房を主催している。ある日、中年の制服警官が訪ねてきた。〈ダバオに行った長男タツヤが過激派に拉致された〉とのこと。彼女はダバオの天羽(あまばね)へ連絡を取る。
フィリピン・ダバオ支店長の天羽隆一(あまばね・りゅういち)はシオリからの電話にでた。拉致について総領事へ問い合わせると、人質事件で混乱しているが、拉致は聞いてないという。天羽はアンガスとジープを走らせ、アポ山裏の小屋にたどり着くが、タツヤは非番でいなかった。今おこなわれているダバオの市長選も現グスマンと前ドウタテイの戦いで、ねじれていた。
帰り道、天羽はダバオにたどり着いた運命にひたった。ここで、日本人の村長さんともいうべき総領事安東博史と出会い意気投合した。天羽は安東を衆議院議員上國料の政策秘書として紹介した。二人は共通項があり、天羽が、〈ダバオの日本人たち〉というノンフィクションで新人賞をとっていたこと。安東も、チエコスロバキアでの外交経験を書き綴った〈雪解けのプラハ〉という小説を上梓して互いに文士であった。ダバオの市長選は、ドウタテイの返り咲きとなった。天羽は施策が転換され、再び犯罪者や麻薬密売人の粛清がおこなわれると危惧する。タツヤが、天羽を訪ねてきて拳銃を買いたいという。天羽は、まずは銃の取り扱いになれる必要があると、部下のアンガスに訓練を託す。安東も国会議員事務所で半生を振り返っていた。午後に、チエコ大使館を訪問してチエコ時代のデモビラなどを書記官にあずける。シオリは警察庁から、またもや〈息子が、窃盗事件を起こしたので賠償してくれ〉というメールを受け取り、偽メールに対し締まりのない時代へなったと嘆く。アンガスは、タツヤに射撃訓練を行う。天羽は、ドウタテイ新市長を訪問してパトカーの寄付が欲しいと請われ、安東やシオリに相談をする。シオリはパトカーの相談を天羽から受けるも、それは、国の安東の仕事だという。天羽は、ダバオに国際大学を創設する事業計画の手助けもせねばならなかった。タツヤは銃扱いの訓練を続け、一方、安東は、よくぞ〈雪解けのプラハ〉を書いたと感慨深かった。シオリは、サツマ環境センターの事業参入でノリノリであったが、天羽は、事業の資金繰りに窮していた。


     第三章 九月十一日(月)、決起の時?

突然、歴史のエアポケットに落ち込んでしまった。まるで、ブラックホールに吸い込まれたかのようだ。昨日と今日とを取り巻く環境が特別に変わったことはないのだが、驚愕のニュースが飛び込んできて昨日と今日とを完全に破断した。

アメリカのニューヨーク及びワシントンで、九月十一日(月)の朝、同時多発テロが勃発した。ハイジャックされた民間航空機二機が、世界貿易センタービルへ、さらに一機が米国防総省へ突っ込んだ。

安東は、議員事務所で呆然とニュースを眺めていた。臨時ニュースでは、四十七階建ての世界貿易センタービルに、旅客機が体当たりして、ビルが真ん中から崩れ落ちていく映像が、何度も流されている。パニックだった。

軽い身震いとともに、冷や汗が出た。いつもの持病である。

「とにかく、いろんなところから、情報を集めるんだ」男性の秘書に指示した。

自らも電話機を前に据えて、北米第一課の番号を押した。プープープーと電話は、拒否しているようにつながらない。無理もないかと考え直し、携帯をとり、懇意にしている経済協力課の課長へかけた。予想のとおりつながった。

「ああ、安東秘書さんですか、同時テロのこと? 情報が混乱していましてね。何が正しいのか、公的発表を待たねばわかりませんね。どこも、こんなところで、皆目わかりません、よろしいでしょうか。わが課は直接の関係はなくても、いろんな影響が出てくるでしょうから、緊急会議の資料準備でバタバタですよ」

どこも、混乱しているのだろうと携帯を切った。だが、少しでもいろんな声を聞き、不完全ながらもレジメにまとめておかなければならない。上國料議員は、国会も終わって地元に帰っていたが、ニュースを聞き急遽上京してくる。何か、報告できるものを早急に準備しておかねばならない。緊急事態なりの準備が必要である。

とりあえず調べたことを、パソコンにアットランダムに入力していると、携帯が着信音を奏でた。

「安東さん、そちらの方はどうですか? 何かこれからの動きが決まりましたか?」

 ダバオの天羽からであった。

「こちらも混乱の極致で、緊急対策会議があちこちで行われるようだが、まだハッキリしたものは、何もない」安東は答える。

「ダバオの総領事館から聞いたのですが、ダバオは、日本の外務省から観光旅行延期勧告が出るらしいとのこと。危険度二の認識ですね。今回のテロの首謀者はB・Dの率いるアルカイダだと。そして、アルカイダの世界ネットワークの一つが、ミンダナオのアブ・サヤフだと言われている。なお悪いことにB・Dにはフィリピン人の妻がいて、その兄が、アブ・サヤフの中心人物の一人で、その線でアルカイダと繫がっているということらしいと、もっぱらのウワサです」

「なるほどだね。イスラム過激派ってのは、結構、世界に根を張ってるんだ。認識をあらたにしたよ。今回の世界同時決起によって、好機到来と一気に全面攻勢に出て、ダバオにイスラム国家をつくりかねないね」

最悪の場合は、今述べた展開となるかも……動悸を感じ冷や汗が流れ出た。

「混乱の極致に居るときは、これからどうなるかは、予測がつかないものだ。ジッと耐えながら見守るしか、ないかもしれない。今言えるのは、これだけだ。何かハッキリしたものがみえたらお互いに連絡を取りましょう」

 これ以上語れることはなかったので、手早く携帯を切った。


天羽は、携帯の通話終了ボタンを押すと、頭を、いやこの状況を整理せねばと思った。

確かに、事態がどのように動くかは、いろいろと想像はできるが、展開がありすぎてどう対処していいのかわからなかった。確かに、しばらくは成り行きをただ見守るしかないのだ。ただ、ハッキリしているのは、日本の首都にいる者のリスクと現実に騒乱のあるダバオに居る者とのリスクは、大きな違いがありすぎる。

激流の中にいると、どちらに流されていくのかわからないし、自分がどうなっているのかもわからない。それで、常に疑心暗鬼で迷うことになる。ここダバオの現状はまさにそうである。

冷静になってみると、同様な心持ちに陥った場面が、フラッシュバックした。

……なぜ開戦にいたったかのテレビドキュメント見て納得したことだ。

日本はまだ開戦に至らなかった時期であったが、欧州では、すでにドイツがポーランドに攻め込んで第二次大戦は始まっていた。二年後には日本も英米へ宣戦布告するのだが、それまで間のドイツの侵攻状況はすさまじかった。 

1940年、昭和十五年、ドイツは、デンマーク、ノルウエー、ベネルクス三国、フランスを次々と攻略し、支配下においた。ダンケルクの戦いで連合軍を追い落とし、英国本土を空爆し始めた。

確かに、常にドイツ勝利といった状況下では、ドイツが世界の盟主として君臨するのは、時間の問題であるとされ、このような時勢では、日本の首脳も、ドイツを敵に回して敗戦色の濃い連合軍に組することは、ありえないと考えたのだ。

このドイツの勢いに対して、ドイツを敵に回して戦えるかと言うと、絶対にノン、不可能としか言えなかっただろう。それで、昭和十五年、ドイツ、イタリアと、日本との三国同盟が成り、日本は大戦の勝者を勝ち取るはずであった。

その時点では至極妥当で最善の選択をしたのだが、結果としては間違っていた。それが歴史でもある。フィリピンでも、日本帝国は四年ほど支配したが、結局は破滅した。

直近では、今までの流れでグスマン市長の再選にかけたが、それは裏目に出た。

ヤシ炭の活性炭は、備長炭の百倍以上の吸湿吸着効果があるとの触れ込みだったが、微量の生産では販路もできずに利益は出なかったし、大手のレーヨン会社が大量生産をはじめて、ヤシ炭活性炭の健康サプリメントとしての開発も始まっている。これも太刀打ちできない。予想どおりに行くことが稀なのであるが、すべてが上手くいかずに苦境の最中に、努力してどうにもならない、泣きっつらにハチのテロ事件が起こった。

激流に溺れながらもワケの分からないままに、何かの判断をせねばならない。しかし、どういう判断をするにせよ、状況は悪くなる一方だ。

事務室の向こう角にいたアンガスに声をかけた。

「アンガス、今後アブ・サヤフの動きはどうなる?」

「攻勢に出るだろう。もともと、奴らは、イスラム系のモロ・イスラム解放戦線の一部だった。だが、過激分子が離脱して出来たロスト・コマンド(ゲリラくずれ)ですよ。騒乱を自ら作り出して、面白がる連中です」

「アンガスがいたモロ・イスラム解放戦線とはだいぶ違うのかい」

「アブ・サヤフの奴らも、武力闘争によるイスラム原理主義に基づいた独立国家の樹立を目指すとしているが、実態は、組織維持のための誘拐、銀行襲撃、バス強盗などを繰り返す、ならず者集団で、マスコミもバンディット(盗賊)と呼んでいる」

 今年二月のシパダン島、六月のパラワン島の人質事件は、アブ・サヤフの犯行であった。政府軍が拠点であるバシラン島を包囲したが取り逃がし、失態を重ねている。

「アンガス、これから先のことを考えると、事業を一部縮小したほうがいいようだ」

「んん、そうですな、ボス」

アンガスは、ほとんど自分の意見を言うことはない。

「ヤシ炭の生産事業は、一時中止しよう。密林の小屋では、いつ襲われるかわからない。皆に、炭焼き窯は今回までで、あとは、火を消し、閉鎖するように言ってくれ」

「わかりやした。タツヤは、どうするんですか」

「しばらくは、うちで預かり、次の事業のメドがたったら、働いてもらうつもりだ。ヤシ炭の従業員は解雇することになるが、来週、二か月分の給料を渡すとつもりだと、また事業が立ち上がったら再雇用するということで、納得させてくれ」

「了解、ボス、午後から出かけまさー」

アンガスは、軽く右手を上げ承知のサインを示すと、事務室を出ていった。

死者が一万人を優に超える大惨事が突然に起こり、混乱の極みで揺れている。今日も何となく胃が重苦しい。天羽は、デスクのミネラル・ウォーターのキャップを開けて、取り出した胃腸薬を口に放り込み飲み干した。サツマに帰ったとき、再度、精密検査を受けた方がいいなと、かすかによぎったが、この難局を、少しでもラッキーに変えねばと、無理に心を奮い立たせた。

やはり、俺はジャーナリストだ。同時多発テロのダバオでの混乱状況を、日本のマスコミに配信することだ、それで原稿料を稼がねばと、パソコンにむかった。

ーー〈アルカイダ=アブ・サヤフ、南部フィリピンの底流問題〉
われわれ、サツマーダバオ交流会議に限らず、ミンダナオ・ダバオの頭痛の種は、アブ・サヤフであろう。彼らの拠点はバシラン島にあるのだが、ここは、元来イスラム国家があった地域で、イスラム教徒が多く住む。アブ・サヤフが誘拐、銀行襲撃を繰り返す、ならず者であったとしてもこの地の住民の多くが、アブ・サヤフのメンバーと家族、親戚、婚姻関係の網にからまっている。いわばイタリア・マフィアのシチリア島のような地域なのである。今年の二月、シパダン島、六月のパラワン島で起こった人質事件が、バシラン島に移動、潜伏したアブ・サヤフの本隊二百名が、秘密裏に人質解放交渉を進め、身代金が支払われた人質を個別的に解放したり、見せしめの処刑をおこなったりしてきた。これに対し、フィリピン国軍のスタンスは殲滅であり、バシラン島に兵力二千名を投入しアブ・サヤフを包囲して市街戦を展開した。が、人質の解放はできなかった。そんなところへ、今回、驚愕の世界同時テロがはじまり、アブ・サヤフは、このテロ組織、アルカイダと連携していると伝えられる。情報筋によると、フィリッピン国軍は前回に懲りて、国軍での単独せん滅は無理だとして、米軍への支援を仰ぐ方針だとされている――

 一気にここまで書くと一息入れた。まだ序章にすぎない、これから主張があるのだ。

ーーしかし、いかにならず者集団であろうとも、イスラム教徒である以上、地域イスラム住民のシンパシイ(親近感)は、アブ・サヤフ側にある。彼らをせん滅するには、イスラム・コミュニティ全体を破壊すしかないのは、パレスチナの例を見れば明らかである。いいかえれば、武力は最終解決の方法ではないのだーー

 筆が走り出したと感じた。まとめは、力のこもった文章にしたい。

ーー少数民族として最貧層を構成しているイスラム教徒が、自らの文化と価値を捨てることなく生きていける地域、すなわち国土を造る以外に、アブ・サヤフの存在を否定することはできないのである。少数者が苦難の道を歩くことを強いられるのは、つねにアフガニスタン、イエメン、カシミールそしてフィリピンもしかりである。われわれの交流の当事者、ダバオでは、まだアブ・サヤフの直接的なテロ脅威はないものの、人質事件により諸外国からの投資が遠のき、契約済みの案件までが棚上げされている。日米を主体とする観光客やビジネス客が激減し、悲鳴をあげている。ダバオ側の立場に立ってみると、こういうときこそ本当の友でなければならないーー

 果たして正論なのだが、いかにも正論過ぎるか? 理念や理想を追うのは構わないが、実態がともなっているのか? 資金も枯渇し、さらなるテロの脅威が予想されて、行き詰っているのが現実だ。だが、どうしようもない時にこそ、図太くやり抜かねば。選択は、それしかない。

 平和な日本にいる人々には、想像できないが、日本の平和であるノウハウを、ダバオに輸出してほしいのだ。そのためにわれわれは、ここで生活していると叫びたい。重ねての雄叫びは、アブ・サヤフは無理だとしてモロ・イスラム解放戦線とは、和平交渉がかなうのではないかということ。その橋渡しは、日本であるべきであり、橋渡しできる可能性が高いのである。われわれは、ダバオにて、そのための信用を積みつつあると。

 最後の部分は、本音であるのだが、私見であるので文字にはできなかった。十枚弱の出来上がった原稿を、経済日日新聞の編集者へメールで送った。

 ダバオ国際大学のプログラム参加も提案が上がってきたし、新しく工場誘致のプランもでてきたのだが、なんとかやりとげなければ……胃の重みを感じながら、頬をなぞると、ひげが伸びてきていた。このままはやしてもいいか? 剃るのも面倒くさい。


 午後になり、朝からの曇り空であったが、アンガスは、緑のシャワーをあびるように湿気を含んだ密林のなかを、ジープでヤシ炭小屋へ向かっていた。

 今後、同時多発テロに乗じて、アブ・サヤフや多くのゲリラ勢力の蜂起が懸念される。ヤシ炭事業を中止するのは賢明なことに思えるが……まあ、なるようにしかならないか。

 バナナやヤシの密林の草小道を走っていくと、フロントガラスに山ヒルが、ポタッ、ポタッと落ちてきた。ワイパーを作動させて、なんとか追い払った。

 そうこうしていると、やや開けた野原にあたり、ヤシぶきの小屋が見えた。

 小屋にゆっくり近づくと、車のエンジンの音に、リーダーのスカンが出てきた。

俺、アンガスだとわかると片手をあげた。

「どうだ調子は、変わったことはないか?」ジープを停めて降りると、声をかけた。

「特には、あいかわらずでさー」

「ボスからの伝達できたのだが、一昨日のテロで、ミンダナオも騒乱が起こるかもしれないので、炭事業は一時中止にするとさ」

「なるほど、で、あっしらはどうなるんで」

「来週、二か月分の給与を支払うので解雇となる。後は、それぞれ何とかしてくれってことだ」

「そういうことですか、まあ、何とかするしかしようがないが」

スカンが肩をすくめた。

「んん、俺としては、今のところ、テロ勢力がここまで来るとはおもえないので、やりたい奴だけで、続けてもかまわんのじゃないかと思う。ただ、危険を察知したらすばやく逃げ出すことだ。こんなんでどうだ。ヤシ炭は、最近では、サプリメント用として何とかさばけるんじゃないか。さばく相手もわりと簡単に見つけられると思うぞ」

「ああ、そういう手があるんですか。それでいきましょう、ありがとさんです」

スカンの顔がほころんだ。

「天羽ボスは、おそらく炭事業の撤退を考えてるようだから、自分たちで継続してみるんだな。ボロ儲けはできなくても、そこそこやれるだろう。ところで、タツヤは、居るのかい」

「もうすぐ、出てきますよ。今日は後番ですから」

「そうかしばらく、待つとするか」

「ボス、ツバ(ココナツワイン)を飲みますか」

「いや、車のなかで昼寝して待つことにする。水も積んである」

 運転席に、乗り込んでシートを倒して楽にした。

どれぐらい経ったのだろうか、うつらうつらしていたところに、右窓から声を掛けられた。

「アンガス、起きてる」

目を開けると、タツヤがのぞいていた。

「ああ、待ってたぞ、隣りに座れよ」と、うながした。タツヤが助手席に座ると、

「どうだ、約六か月だ、少しは慣れたか。さっき、スカンへも言ったのだが、しばらくヤシ炭は休止する。その後のことは彼に指示してある。休みたかったら、ボスの家で面倒を見るとのことだ」

「ああ、そうなんだ。ボクも内緒でアンガスに話したいことがあったんだ。実は……」

 達哉は一瞬ためらったようだったが、

「……実は、カラシニコフを買わないかと、もち掛けられている」と、ささやいた。

「ふーん、そうか。で、いくらだと言うんだ」

「日本円で、二万円でいいという」

「カラシニコフは、確かに頑丈で故障の少ない名銃といわれている。だが、世界中でライセンス生産されており、どこの国の製品かで雲泥の差がある。コピー商品も多くて、世界では億単位で生産され、紛争に利用されているライフルだ」

「テロが起こると、自衛のために銃が必要だ。何とか手にいれたい。そして、自警団〈自由ダバオの風〉を結成したいんだ」タツヤはきっぱりと言い切った。

「確かにこのような不穏な情勢では、そういう思いになるが……」

 しかし、どうにも心もとない、銃を手に取り闘うことが、どういうことなのかわかっているのか? しばらく沈黙した。

「……その自由ダバオの風の頭(かしら)はどうするんだ」

「今、考えているのは、俺と友達のラルクの二人だけだけど、ラルクがバゴボ族の仲間を連れてくると言っている。そこで決めることになる」

「んん、そういうことか、で、そのためには武器も必要ってことだな……」

 車の中は、個室になり、お互いが正面から向きあうこともなく話がし易い、外に漏れる心配もない。周りはヤシや雑木にかこまれた静寂の空間である。

「タツヤ、俺がその仲間の、そのグループの面倒を見てやろうか」

「えっ、それはどういうこと?」タツヤがこちらを振り向いた。


          ( つづく )

*クライマックスに向かって走りつつあります。ヨロピク!



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