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いまの風に?

アナログ作家の創作・読書ノート     おおくぼ系

「なんとか、短篇集Ⅲがまとまりそう、ヨロピク!」

 その時々に吹く気流のながれ、その時代の雰囲気とかいったものがある。それは、おおむね高い気圧の地域から噴き出してくる。
やはり日本で気圧が高いところは、メガポリスである東都であろう。そこからふく、今の風は、キラメキの気をちりばめて吹きおろしてくる。いろんなものが、光のツブとなって瞬時光り、次々と小さなキラメキが生まれ出て、風にのって地方まで流れきて、いくぶんかの感慨をあたえて消えていく。そして、今でこそ情報はわりと速くつながるが、東都発の新幹線が地元とつながるのには、50年以上もかかったのだ(笑)。

SNSの急速な発達は、どこからでも、まただれでも情報を容易に発進できることにより、この気圧の谷をなだらかにしたのだが、情報の受け手となる読む方が追い付けていけない事態が起きた。いわゆる情報の供給過多であり、この傾向は加速している。

で、情報過多になると、どうなるかを考えた著作に、正高信男の『ゲームキャラしか愛せない脳』がある。著者は「あまりに注意を引く要因が多すぎると、脳はそれを処理しきれなくなって、つまり情報量が処理能力をはるかに超えると、情報処理自体をシャットダウンするらしいのである」と論じ、実例として「赤ちゃんを泣き止ませる法」があり、それは「パチンコ店へ連れて行けば、すぐ寝てしまいますよ」と解説する。異常に騒がしい環境におかれると、赤ちゃんは自らを閉じてしまうことになるのだと主張する。

確かに情報過多におちいると、自己保全のためには一定のバリアーが必要であるのだろうし、自分のフィールドを守ることになるのだろう。
で、これらをどう考えるかであるが、アナログ作家は、実社会のもろもろは、秘密の花園に似て、一歩なかへはいり込むとヒミツに対するワクワク感があり、ひとつひとつ大人なるもの(実社会を生きぬく知恵?)を体験して成長するように思えた。いろいろな正義や矛盾があり、デタラメの中にどっぷりとつかり、傷つきながら、あがきながらなんとか生き抜いていく。これもスゴイ(笑)ではないか?
 この現実の面白さが、人生ゲームに思えて、もちろん失敗してゲームオーバーになる場合もあるが、助けてくれる人もいたりして、世の中満更でもなく、なんとかなるさという強い感慨が、小説に向かわせたのかと思っている。

それで、現実の人生を文字に置き換えて、脚色するという小説作業に夢中になったのだが、活字にしてみると、それなりに人生は戯画になるようだ。
だが、きょうび、本を紐解き小説を読む余裕は、なくなりつつあり、小説界も供給過多の状態にあるようだ。誰でも作家の時代にどうしたら読んでもらえるのか、それはわからずに試行錯誤するしかない。

NOTE世界は、つぶやきのサロンであって、憩いの場でもあるので、長々とした物語は時間的なたいくつであるようだ。で、自身の小説フィールドをいかに創り出していくかを考えた。あげく、小説類はまとめて電子書籍化することにしたのである。

最新作は、最終的に短篇集Ⅲ『百日紅(ひゃくじつこう)の海』として、四編の短編をまとめた。同作品をはじめとして11月の上旬から適時、アマゾンの電子書籍として発行していき、今年中に新作をふくめて八冊を出す予定にした。電子書籍とはいかがなもんかと思っていたが、これが、縦書きにできて、あんがい読みやすいのである。さらに携帯からでも適時よむことができる手軽さがある。

ちなみに四編からなる短篇集Ⅲ『百日紅の海』であるが……

①〈岩壁〉 オイラと姉貴とすうちんが織りなす奇想天外なドラマ。
 大学卒業をひかえたオイラは、岸壁を崩して砂利をつくるハッパ技師の姉貴の仕事の手伝いをしていた。そこへ眼科医を名乗るすうちんが現れて、オイラのユンボ―をめずらし気にみて、乗せてくれないかという。この出会いからオイラは、とっつあん坊やのすうちんの秘書兼雑用係として面白過ぎる経験をする。
 県民所得一位を目指す、風雲児すうちんの興隆と結末は?

②〈ドッペルゲンガー・分身〉 書き下ろし。外交官から衆議院議員の政策秘書へと昇りつめた安東俊介は、分身として小説『雪解けのプラハ』を書いた作家江夏和史でもあった。今日は南えびの市が主催する〈時代と世代をつなぐ文学トークショー〉でベストセラーの短歌集『ひまわりの約束』をだした新田原智美と対談することとなった。彼女は即興で〈混迷のプラハの街にキラキラと異国の恋のひまわりの花〉〈国を超え熱きハートのハーモニー東欧プラハの小説の恋〉と詠む。
 江夏には、彼女の若さときらびやかな才能はまぶしすぎた。さらに、この日はトラブル続きでついていなかった。それで、接待を断り宿のすっぽんぽん湯へかえる。女将の酌するピルスナービールとの奇遇な出会いにより若きプラハがよみがえる。
 激動の外交の世界を生きぬいた安東俊介は、〈極東に浮かぶ列島日のもとは平和天国ガラパゴスかな〉と詠むも現代では狂歌にしかならないかと、自嘲する。

③〈「かけまい!」石清水と深山霧島〉 超栄冠の深山霧島シリーズのひとつ。
 深山霧島茶碗に対して、伝説の警視総監室に秘蔵されていた石清水茶碗が指令をおびて出現する、ミステリーサスペンス兼ハードボイルド(笑)小説で、朝日嶋の闘牛にからんで事件が発展していく。朝日嶋出身のコウジとの出会いがあり、ために突然事件にまきこまれたチハルは、わけもわからないなか、竹林の聖人をたより、したたかに、かつたくましく生き抜く。

④〈百日紅(ひゃくじつこう)の海〉 歴史小説。九州文學に掲載した時に70パーセントにカットされたものを全編書き直したもの。亜紀代と山陸中尉の戦前、戦中、戦後の時代を超えていく愛?
 プロローグ ーー湾の中央にどっしりと座を占めた火の山を背景にして、さつま湾の海はいつものように静かであった。昭和十六年の夏であるーー
〈百日紅さつまの庭に陽が輝(ひか)り燃え尽きなんと我は姉様〉
〈陽に輝(ひか)るさつまの庭の百日紅永遠に幸あれ明けゆく御代に〉
 どちらの歌が本当の山陸をあらわしているか? 

以上のような作品で、電子書籍一冊777円均一とラッキーナンバーでいきます。読書士のみなさん11月以降、おおくぼ系の小説はアマゾンでヨロピク!

 

                                   (適時、掲載します。ヨロピク‼)



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