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ともありて!

アナログ作家の創作・読書ノート      おおくぼ系


 コロナの蔓延により、生活様式が180度転換したようだ。特に飲食店での宴会や懇談による感染がいわれたので、外食の機会がほとんどなくなった。

 

 流行が下火になってマスクも自由になったが、一度ついた感染防止の習慣は何となくぬけなくて、いまだに多人数との接触が多い外食には気を使う。

 そこで、自宅でこじんまりと懇談、飲食しようとなり、友を招くこととして、二、三ケ月に一度ほど、拙宅で食事はいかがとお誘いをするようになった。

 

 で、今回、11月のお客さんは、郷里出身で東都にお住いの友人である。彼は、系どんを〈推し〉てくれるひとりであり、帰省のたびにスナックなどで飲みましょうと交遊が続いている。

 

 〈推し〉に関連して思い出した小咄がある。数年前になるが、地元で井沢元彦の〈姶良で日本の歴史を知るシンポジュウム〉という講演会が催された。講演の後に懇親会が開催されるということで、作家として系どんも招待をうけた。井沢氏を中心に主催者の会社社長さんなど十人ほどで、食卓テーブルをかこみ懇談会がはじまった。主催者である社長さんが乾杯の後、講演の開催にいたる挨拶がはじまり、その中で井沢〈推し〉をする、そもそものきっかけは銀座のバーであったという。

 

 井沢氏はTBSの報道記者から江戸川乱賞を受賞後、作家へと転身した。週刊ポストへ〈逆説の日本史〉を連載しているのだが、社長さんが銀座のバーで飲んでいた時に、たまたま井沢氏が来ていて、ママさんが紹介してくれた。そこでママさんが「井沢さんをぜひ応援してください」と社長さんへ,頼まれたのだそうだ。それが今回の講演の運びとなったとのこと。明後日には、県都のホテルでの講演会も予定しているとのことである。

 話の筋からして、おそらくそのバーは、姶良市出身のママさんがやっている銀座では著名な文壇バーであろうと思われた。系どんも一度は訪ねてはみたいと思っているが、なかなかかなわない。

懇親会で井沢氏にあいさつし、著書にサインをしていただいたが、逆説の日本史とは、歴史についてこんな考えかたもあるということだ、と言われた。なるほどである。

 

 閑話休題で食事会へもどるが、友をいかに拙宅で迎えるか、飲み物は、前菜、食事、デザートは? とひとしきり考えることとなる。パートナーとああでもないこうでもないと、考えるのが、けっこう楽しい作業で、しばし意見交換の後におおよそが決まる。飲み物は、ビールからワインにして、焼酎へのコースとなる。

 ビールについては、特別に指定はないが豊潤なものがいいとパートナーは言う。ワインは赤を選ぶのだが、以前は2003年物が割と格安だったのだが、今回は2012年で10年寝かせものをゲットした。

 夕方から友人の歓迎会がはじまったのだが、まずはビールで乾杯。オードブルはアボガドと生ハムにリンゴをスライスし重ねたもの、地鶏のたたきにピーナッツにチョコレートとなった。ワインを開けて、煮物は豚の角煮、メイン料理は黒豚のしゃぶしゃぶである。焼酎がメインの飲み物となるが、今回は、麦焼酎の3年寝かせのものと芋焼酎EXの二種類である。麦焼酎は、キリッとした感じで夏向きであろうか、氷を割ってロックにする。芋焼酎は、ふくよかな広がりをもつのでお湯割りにした。

 食べて飲んでけっこう話も弾んだ。友人は、27歳のときに、破綻した会社を再建しその時から社長業を続けているという。なんとまあすごい、小説にはもってこいじゃないかと言うと、書くのは待ってくれとなった。ほかにネタはいくらでもあると。

 

 約五時間の歓談ののち次回の帰省予定は、年が明けて2月ごろだと言う。静かなレストランで食事をして、彼の行きつけのスナックに行き歌をうたおうとなり、確約してお開きとなった。系どんも久方ぶりに痛飲した。

 

 ところで、このエッセイも3年近くなり、連載もけっこうなものになった。マガジンで一つにまとめなければと思ったが、やはり、ネットでは流れが速く読書士がのぞいてくれるかが心配である。紙本に整理してまとめ、ネット上の古いものは削除するのがベターではないかと考え、エッセイ集としての発刊に向けて、はじめて横書きに編集した本をだすつもりである。

 タイトルは,〈アナログ作家の創作・読書ノート〉となるのだが、果たしてどうなるのかが、楽しみである。

 

 作家の読書についての本は結構出版されているのだが、読んだなかで一人とりあげると桜庭一樹であろう。サクラバカズキ・彼女は日に一冊は読み終えるほどの読書家として有名であり、十年ほどまえから〈書店はタームマシーン・桜庭一樹読書日記〉などの読書日記シリーズを出版している。

 同作の後段における〈特別座談会 ジゴロになりたい。あるいは四十八時間の恋〉の一章は、いまでいう2チャンネルの掛け合いのごとく面白く読めるのだが、ハチャメチャな談議の途中で、なるほどと思ったのがある。

――本を読むって行為が、世の中ではマイノリテイのすることなんだなって、直木賞をいただいたあとインタビューを受けながらすごく感じました。ふだんはまわりが本読みばっかりだから意識しないんだけど、テレビに取材されると、「すごく本を読む人らしいです」と、ちょっと変態みたいな扱いで――

とのくだりである。このあたりは、系どんも明らかに勘違いしていた。本を読む人の方が少数派で、本好きは肩身の狭い方なのだ。さらに書くというもの好きは、なにをか言わんや?

 

 いずれにしても〈桜庭一樹読書日記〉は、下に注釈もついていて、とりあげられた本をより幅広く理解しやすく、本の世界についての豊かさを感じさせてくれる。

本好きにはおすすめの一品である。

また、読書の秋はイベントも多い。芥川賞作家の大道珠貴さんが来鹿され、九州芸術祭〈文学カフェ㏌鹿児島〉も開催されるので、純文学作家ではない系どんも中間小説家(エンタメ小説家)として、参加するつもりである。


                       (適宜、掲載します。ヨロピク!)

 


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