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マリナーズの"天敵"大谷翔平6年目の進化・投手編

予め断っておくが、これはロサンゼルス・エンゼルスの応援ブログではない。イチローに魅了され、長年地獄を見せ続けられた、筋金入りのシアトル・マリナーズファンが垂れ流す独り言である。昨季、ド派手な大乱闘をやらかしたのも忘れてはいない。男気溢れるジェシー・ウィンカーが、スタンドに向かって中指を突き立てたことだけは、記憶の彼方に消し去ろうと思っている。

SNS界隈でもいがみ合う両チームだが、この男については誰もが称賛せざるを得ない。MLBで二刀流だなんて、荒唐無稽にもほどがある。性格まで素晴らしい敵だから、タチが悪い。

今回は、そんな球界の至宝・大谷翔平にフォーカスする。ここからは、しばし真面目なデータコラムといこう。まずは投手編にお付き合い頂きたい。


■2022年を振り返る

大谷翔平 '22投球成績
└ 15勝9敗/防2.33/166.0回/219奪三振/WHIP1.01
└ FIP2.40/fWAR5.6/K%33.2/BABIP.289/ERA+172/fWAR5.6/rWAR6.2
※WARの数値は投手のみ

昨季のスタッツをいくつかご紹介しよう。自由に読み解いて貰って構わないし、面倒であれば、以下のまとめをご覧いただければと思う。

全球種で球速が上昇。リリースポイント(Extension)も年々ホームベース寄りになっている。
2022年 大谷翔平・球種割合の変化(月別)


①平均球速上昇
最も顕著なのが「全球種で球速が上昇している」ことである。フォーシームは平均95.6マイル(153.9キロ)から97.3マイル(156.6キロ)へ。およそ2.6キロほどアップしている。2018年10月に受けたトミー・ジョン手術から順調な回復を見せ、故障前の数値を上回っている。加えて、近年では”省エネ投球”も随所に見られ、渡米当初よりも、ペース配分を重視する傾向にある。

②球種割合の変化
負担軽減の目的もあり、スライダーの割合が2021年の22.0%から39.1 %へ大幅に上昇。一方で、44.1%だったフォーシームが27.6%に減少している。シーズン終盤からは新球種ツーシームを試投するなど、進化を続けている。

③意外な決め球とは
どれも素晴らしい球種だが、最も注目してほしいのがカーブである。平均球速の上昇に伴い、スピン量もアップ。変化量が小さくなり、パワーカーブのようなボールになりつつある。

このカーブ、2021年はわずか3.6%ほどだった投球割合が8.6%へ増加。PutAway%(2ストライク時に投げた場合の三振率)が全球種トップの数値34.5%を記録している。打者の意表を突ける、決め球のひとつになっている。

■今季の課題は

投手・大谷翔平にも不安要素はある。今季、向き合わなければならない課題がいくつか残されているのだ。

・ピッチタイマーの導入
・牽制球の制限
・WBCへの出場

今季から「ピッチタイマー」が導入され、MLBの投手はランナーなしで15秒、ランナーありの場合は20秒以内に投球しなくてはいけない。「ピッチタイマー」は、”ピッチャーがキャッチャーの返球を受け取った瞬間にスタート、投球モーションを開始したところでストップ”する。大まかに端折った説明ではあるが、要するに「早く投げろ」ということだ。牽制球も、打者ひとりにつき2球まで、3球目は必ずアウトにしなければならない。失敗すればボークとなる。

ちなみに、昨季の大谷翔平はランナーなしで平均15.7秒、ありの場面で20.9秒。いずれも、規定時間をオーバーしている。まずは、この対応に迫られることになるだろう。

そして、3月のWBC出場による影響も懸念される。国の代表で戦う負担は、途轍もなく大きい。2009年にWBCで日本が世界一になった年、決勝戦でタイムリーを放ったイチローはその後胃潰瘍となり、シーズン序盤初めてのDL(現在のIL)入りを経験している。

今季FAになる大谷翔平が、いつまで我らがマリナーズの天敵でいるかはわからない。エンゼルスが早めに優勝争いから陥落すれば、トレードデッドライン前に放出される可能性も考えられる。まずは、怪我無くWBCを乗り切ってほしいものである。


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