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「君の名前で僕を呼んで」を観て。

原題:Call Me By Your Name
邦題:君の名前で僕を呼んで

監督:ルカ・グァダニーノ(2018)

あらすじ: 83年、夏。北イタリアの避暑地で過ごす17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハーマー)と出会う。一緒に泳いだり、自転車で街を散策したり、本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な思いを抱くようになっていく。ふたりはやがて激しい恋に落ちるが、夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づいてくる。(引用)



感想:美しさと、不安さと、優しさと。


音楽や情景、純愛、など。美しいものだらけなのに、少し不安や怖さも感じさせられた。

考古学ゆえに、最初に銅像などの画が流れる。全て瞳が真っ黒で感情が読めなく、怖い顔に見えて、不安感を煽ってくる。途中、湖で見つけられた考古物も、死んだ人間をあげてるようで、少し怖く感じた。

そして、いちばん不安を抱いたのが、エリオの鼻血。親はいつものことよ、と言って気にしない。不思議すぎる。こちらとしてはオリヴァーと同じ、突然だから驚くわけで。

この鼻血のシーン、エリオとオリヴァーが交わった後。これって、エリオにとっての経血の意味なのかな、とか思ったり。男性と交えた後に起こる、ある意味で女性になったという意味なのかな、と。そしてそれを知っている親は特に慌てないのかな、と。

エリオは、異性との経験はなかったが、同性との経験は実はあったのでは?

2人の関係の、誕生と消滅。

「早く立ち直ろうと心を削ってはいけない」
「お前が感じた喜びをその痛みと共に葬ってはいけない」

これは、恋愛もそうだけど、生きてる間に起こること全てに言えることだよね。悲しみや苦しみだけ無視することはできないから、嬉しいことも楽しいことも全て一緒に受け入れるしかないんだよね。

それってすごくすごく辛いことだけど、時間もかかるかもしれないけど、受け入れられた時、人は成長するんだと思う。

その苦しい間は、人に頼ったっていいと思う。一人で苦しむ必要はないと思う。

最後の暖炉の前で静かに涙を流すシーン。悲しい顔もすれば、少し微笑んだりもするエリオ。少しずつ受け入れてる最中だったんだと思う。母や父に頼りながら、少しずつ。母に呼ばれて振り向いた時、彼はほんの少し大人に近づいてると思うな。

お父さんの優しい目線に、泣きました。



宗教とお話しだったかな。


人は自分の半身を探し求めるという。オリヴァーは、エリオが自分の半身と思いたかったから、お互いを自分の名前で呼び合ったのではないか。物理的に一体にもなり、精神的にも一体になろうと。

でも、オリヴァーの世界では、それが許されなかった。

同性愛に対して、寛容さが広まってる現代だけど、やはりまだまだ苦しんでる人がたくさんいると思う。そんな人たちに手を差し伸べたい。

はあ〜〜〜

ティモシー・シャラメの透明な少年感。素晴らしすぎるし、最後の長回しは圧巻ですよね。

アーミー・ハーマーも、こういう役が本当によくハマること。

この映画に出てくる女性陣は、一枚上手というか、やはり男より精神状態が一つ上なんだと思わせる。母の目線ひとつもそうだし、マルシアの大人の対応(綺麗事すぎかもしれないけど)。同年代なら尚更女子は少し早熟なんだよね。

自分の半身は、どこですか。知るのは怖いけど、知りたいとも思う。そんな人と出会えたらいいなあ。



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