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小松菜

麦茶を飲もうと冷蔵庫を開けたら小松菜が入っていた。
取り出してテーブルに置く。椅子に座って腕組みしたまま小松菜を見つめる。小松菜は、ぐるっとビニールに包まれたスーパーなんかで売っている普通のヤツだ。
わたしに買った覚えはない。そしてわたしはひとり暮らしだ。
小松菜が自分で冷蔵庫に入るわけはあるまい。だれが?わたしが夢遊病で?

そうだ、値札。
値札を見ればなにかわかるはず。小松菜を手に取り、前後左右くまなく見たが手がかりになるものはなかった。わたしはもういちど腕組みして小松菜と見つめあった。
ようし、わかった。お前がその気ならわたしにも考えがある。組んだ腕をほどき小松菜をつかんで立ち上がる。シンクまで行き水洗いする。
鍋に湯を沸かし放り込んだ。

ゆでた小松菜をおひたしにして食べた。すこし苦かったがうまかった。
あ、麦茶。
冷蔵庫を開けるとほうれん草が入っていた。
もういい。わけがわからない。麦茶だけ取り出して冷蔵庫を閉める。

翌日、冷蔵庫を開けた。ほうれん草はすこし、しおれていた。
#ショートショート
#不思議な話
#創作

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