春になると思い出すこと

数年前の4月頭、友達に誘われて足羽川の桜を見に行った。
その帰り、高校時代にお世話になっていた社会の先生とたまたま遭遇した。

先生、と呼称しているが、彼は非常勤講師だった。
私が高校三年生の時に赴任してきた人だったので、恐らく5~6歳くらい年上(23とか24)だったんだろうと思われる。
私は理系だったので社会の先生とはほとんど接点がなかったのだが、その先生は部活の顧問で非常に濃密な半年を過ごすことになった。
それまでの二年間の顧問も若い社会教師で、他の部活に引き抜かれるという形で顧問を離れ意気消沈していた私たちのところにやってきたのが、本来顧問となる先生が育休で休んでいる間だけ顧問の彼であった。
そもそもこの部活辞退が5人くらいのとても小規模な部活動で、それでもなくならなかった理由は学校指定の部活だったからである。私の同学年は、中学校からの友人4人全員がなし崩し的に所属していて、なんだかんだで良い成績を残した思い出の部活である。

部活の引退だったか、卒業だったか。今はもうない、福井駅前のミスタードーナツで買い出しをして、先生も含めてみんなで食べた。
進学校で息が詰まる中での、友達、そして同世代の先生との癒しの時で、人数合わせで入っていたはずなのに、とても大好きだった。

そんな先生に再会した、卒業して一年ちょっと経って、先生は勿論私たちも、すぐに気づけるくらい外見は全然変わっていなかった。
県内の大学に進学した私と関東に進学した友人はそれぞれ簡単に大学生活のことを話した。
先生はと言うと、「やっと正式な教員になれたんだ」と。

福井県に詳しくない方に説明すると、福井県庁というのは福井駅から一キロくらいのところにある。堀に囲まれているので、RPGにありそうだとも言われている。

つまりその日はちょうど辞令交付式で、おそらく先生はその日、正式に福井県の「先生」になったというわけである。

私は教職員になるための勉強や、教員採用試験について全く知らない。
でも、先生が本当に先生になるために、ずっと努力してきたこと、その努力が報われたことが伝わってきて、めちゃくちゃに嬉しかったのを覚えている。
ほんの短い立ち話をして、先生頑張ってくださいね、と別れた。

そこからさらに年月が経って、私はもうすぐ25歳になる。私も、来月やっと社会人になる(大学院に行っていました)
おそらく、あの時の先生と同い年くらいだと思う。
25を目前に控えて思うのは、なんとなく、同世代から遅れている気がするという焦り。同学年は2年前に就職していて、大学時代の後輩が先輩として働いているような状況。なんとなく、置いていかれているような感覚。
そして、これから未知へ踏み込む不安。自分は本当に社会でやっていけるのか?と……。
あの時の先生とは多少違うだろうけれど、社会への出遅れ感みたいなものは、少なからず感じていたのではないだろうか。と、勝手に思う。

そんな中、社会人になったほぼ初日に、懐かしい顔に会って、先生はどう感じていたんだろうか。
少しでも安心していてくれたら、良いんだけれど。

先生、私もやっと社会人になるよ~先生もまだ、先生を続けてくれていますか?
もしかしたらお仕事で会うこともあるかな、流石にないかな。あるといいけど……またどこかでばったり、会いたいです。

福井県内で社会科教員をしているY先生に捧ぐ。