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MGSVにおけるパニッシュド"ヴェノム"スネークと核兵器の扱いについての考察【反核編】

筆者は、小島秀夫監督作品 PS4『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』を全力で推しています!!
※この考察に書かれている事はあくまで筆者個人の考えであり、読者の皆さんに強要することはありません。


#MGSV  の核廃絶エンドについて興味深い記事。この記事で小島監督の意図するところに近づけた気がする。#メタルギア

目次

  1. なぜ、パニッシュド"ヴェノム"スネーク?

  2. MGSVでの核兵器の扱いについて

  3. 感想

 1.なぜ、パニッシュド"ヴェノム"スネーク?

「幻の核兵器は40個」……はっ!!

 現実の先進国の数に近いよ。ピースウォーカーの「平和は歩いては来ない お互い歩み寄るしかないのだ 」の意味が見えてきた。例えば、先進国が核兵器を1個だけお互いに持つ。それ以上はどんな理由も許されない。「罪と罰」を背負うのは先進国の役目。力の均衡による平和。なぜなら開発能力を持つのはおよそ先進国だから。核兵器は保有数を競うのではなく、核を使用する程の最悪な状況を生み出さない為の戒めとして手元に置く。核を後進国に向けてはならない、先進国同士も使用した際の罪と罰は逃れてはならない。 MGSVはその縮図、小島監督の「社会実験」は最初からその事を予見していたのかもしれない。これから核兵器を知らない世代が出現することは恐らく無いだろう。核兵器が0になる可能性が限りなく低いのであれば、人間の破壊行為をいかに最小限にするか?に焦点を当てて、パニッシュド"ヴェノム"スネークは誕生したのだと思う。
ダイアモンド・ドッグズを蛇に見立ててみよう。スネーク本人は毒蛇の頭であり「牙」。牙は抜いても再生するし、毒を搾り取っても「毒腺」そのものを摘出しなければ無くならない。ゲーム内のスネーク達は核兵器という名の「毒」を絞り出して廃棄出来る。でも技術という「毒腺」までは排除できず、毒抜きと牙を折るまでに留まる。現実においても毒腺の摘出は高度な医療技術を必要とし、素人では蛇を死なせてしまう。

参考→ https://patents.google.com/patent/JP2003116405A/ja 

 これらを現実の国に当てはめてみれば、私の言いたい事が分かると思う。つまり、毒蛇を殺す=国を滅ぼすに繋がるのだ。
ゲームでは防衛側のスネークが死亡してもただの敗北・ゲームオーバーで人材や資源を失うだけで済む。ゲーム自体は継続するし、全ての基地も存在する。損害からの復帰にはスタッフを取り戻す為に身代金を払ったり資源を集め直したり、多額の費用と手間がかかるのがなんとも現実味を醸し出している。潜入された側にとっては酷く不条理な仕打ちだ。一方で潜入した側はというと、成功報酬(ゲームを成立させる為)と、潜入成功で獲得した資源は自分の物になり、連れてきたスタッフは報復潜入が発生しない限り身代金と交換されるか説得して仲間になる。もちろん潜入時に自分が死亡するリスクはあるが、最深部まで到達しなくてもスタッフと資源を横取りして「撤退」という意地悪な選択が可能。
……現実に置き換えたら、ほら、想像出来るでしょ?スネーク自身は相手の毒抜きと牙を折る所までは可能でも「毒腺を摘出」はできない。先ほど言及したように技術は排除がとても難しく、「核兵器を落として基地ごと滅却」が1番簡単な答えになってしまうのだ。そして自分も相手も同じ「毒蛇」なので「鏡」のようにその行為が自分にも向けられる。日本には「毒を以て毒を制する」という言葉がある。悪を除くために別の悪を利用するという意味だ。現実ではそれぞれの蛇毒に合った血清があり、全国に普及し治療に使われる。血清があるから咬まれても安心などと考える人はまず居ないと思う。(←コレが重要!!)咬まれればもれなく痛いし、苦しい。最善策は「咬まれないように注意しろ」だ。
「核兵器」という毒にはまだ決定的な解毒法が無い。咬まれたら助からない。徹底的に毒を避けるか、毒を持つ者同士で睨み合い続ける。睨み合いは両者や周りに常に緊張と不安をもたらし、状況を不安定にさせる。睨み合いは両者の毒の有毒さが同程度であれば長続きするかもしれない。そのバランスが崩れる、つまり現実的には核兵器の数が偏り誰かの「有毒さ」が増すと、本人がいくら理性的振る舞いをしても信用されなくなる。人間社会では「毒」を持つという事は理性的振る舞いの効果を著しく阻害する。これはとても忌むべき行いだ。

 核廃絶エンドを起こす事自体がプレイヤーの間で目的化してて、不正行為で無理矢理イベント起こそうとする人まで現れた。MGSVは「ゲームでも現実でも正規ルートで解決することの困難さ」をわざと再現させるのを狙っていたように思える。ある意味、小島監督の思う壺に我々はハマったんだ。そして MGSVゲーム内では核兵器を開発し保有出来ても「使用」ボタンが無い事にも注目したい。監督はメタルギアシリーズの裏テーマが「反戦・反核」だとずっと訴えてきた。ではなぜ、開発と保有だけが出来るのか?プレイヤーの意思が縮図となって表現されるゲームは「社会実験」に最適だ。現実でも抑止力として用いられる核兵器、ゲーム内には「核兵器使用ボタン」が存在しない点をプレイヤーはどう考えてるのだろうか?「保有出来ても使用出来ない」、そしてパニッシュド"ヴェノム"スネーク達は今も核抑止力というファントムと対峙しているように思える。現実世界においてチート技は存在しない。だからハッカーが無理矢理に核廃絶イベントを起こせないようにしているのも頷ける。
「幻の核兵器40個」は現実的な人類の妥協の限界を示唆している。パニッシュド"ヴェノム"スネークの役目は核兵器の数を限りなく妥協点に近づける事であり、「核兵器開発能力を得た者に与えられる終わらない罰」を小島監督のゲームによって、「スネーク自身」として私達は擬似的に追体験しているのだ。とある目的を持ったダイアモンド・ドッグズは毒腺を有する毒蛇であると同時に、毒腺のある本来の姿を維持する為の「擬毒腺」的役割を担うパニッシュド"ヴェノム"スネークが存在する。まるで「双頭の蛇」だ。双頭の蛇はそれぞれの頭が別々の意思で動くので長生きしないと言われている。人間でいうシャム双生児、人間ならそれぞれの臓器が揃っていれば分離手術で両者が生き延びる方法もあるが、ダイアモンドドッグズは恐らく「心臓」を共有してしまった個体だ。分離しようものならどちらかが犠牲になる。メタルギアの歴史を顧みると、犠牲になるのはパニッシュド"ヴェノム"スネークの方だ。生き残るのはBIG BOSSであり、彼は犠牲になった"友"の痛みを抱えてメタルギアの歴史を刻んでいく。


2.MGSVでの核兵器の扱いについて

 MGSVで核使用ボタンが無い理由、そしてライバルの核を「奪取」出来て、「廃棄」出来る理由を考えた事ありますか?もう一つ気をつける点がある。ゲーム内でプレイヤー1人につき核保有数が4個までという制限がある。なぜ4個?MGSVではマザーベースとチュートリアルで強制入手するFOBの他にあと2ヶ所、FOB用海域を任意で購入出来る。ゲーム内で最強を目指すならFOB3ヶ所を開発し運用するのが定石。ゲーム内ではライバルが最大4ヶ所の基地を保有している。つまり基地全てを殲滅するのに必要な数だ。しかし MGSVにおいて報復手段として「核兵器使用」ボタンは存在せず、ほとんどは敵地潜入してPvPで決着をつける。ついでに核兵器を奪取。プレイヤーは何気なくこの流れを体験しているが、実はスネーク達はとんでもない事をしている。考えてみて欲しい、現実に置き換えた場合、スネーク同様に先進国同士「殴り合いだけ」で解決出来るかを。MGSVでは核使用で基地を「消す」選択肢は無い。ゲームでは核抜きでの泥沼の報復合戦になるが、MGSVプレイヤーの意思で報復を止める事も出来る。悔しさは残るだろうが、奪われたものを数えるのは虚しい。殴り合う手を止めなければ復興出来ず、報復の連鎖を断ち切る機会も訪れない。まさに現実でもやらなければいけない事だ。

私は核開発技術を持ったダイアモンド・ドッグズを「先進国」と例えた。

 メタルギアソリッドVにおける核兵器開発・奪取・廃棄の無限ループは現実世界で全ての国が足並みを揃える事の困難さを表しており、スネーク達が廃棄に奔走しても技術がどこかに存在し、また開発する者が現れるイタチごっこ。技術そのものを滅するには文明が滅ぶしか選択肢がない。
だが、世界の誰もがそんな事望まないと思う。これまで発展してきた科学技術を手放て生きるなんて今の人間には到底無理だからだ。高度に発展した技術とどう付き合っていくか?という課題を MGSVは投げかけている気がする。シン・ウルトラマンでも「人類はまだ幼い」と言われている。MGSVでは幼い人類が核兵器事情について出せる最適解のひとつをプレイヤーに体験させる意図もあったのだろう。人類はまだ猜疑心を捨てられないから、核も捨てられない。スネーク達の「核兵器奪取→廃棄→誰かが保有→奪取→廃棄…」の無限ループは、猜疑心を捨てられない証左。現実世界においては「奪取」「廃棄」だけ実行されていない。
私は核武装を喜ぶ訳ではない。核を「大量破壊兵器」ではなく「先進国への重い枷」として見方を変えた方がいいのでは?と提案したい。そりゃ核兵器は持たないのが良いに決まってる。しかし核が誕生し多数の国が保有してしまった以上、その扱いにどう責任をとるか?MGSVのスネーク達の行動は責任の取り方の一例にすぎず、核を持つ者は常に狙われ「奪取」の対象になる。奪取し廃棄出来るのは同じ科学技術を持った先進国にしか出来ない。だから後進国にはこれらの罪や責任を背負わせたくない。技術が一部の先進国に留まってる間にきちんと厳格なルールと罰則を定めて監視下に置かないといけないものだ。

3.感想

MGSVを通してこんなに「反戦・反核」「核兵器と人類の関わり方」について考えさせられるとは思ってなかった🧐ゲームだからこそ出来る問題提起と社会実験。小島監督のゲームの仕事は凄い。ゲームを通じて新たな視点を獲得出来た事に感謝。

他の引用リツイート見ても、ゲーム内での正解を見たい人達だらけ😢イベント発動させる事ばかりにこだわっていては@Kojima_Hideo 監督が MGSVでプレイヤーに伝えたかった事は見えてこないと思う。意地悪する為にこれらが存在する訳ではない事。プレイヤー自身が問題提起された事柄を考える為に。この問題を見てると、いくら製作側が工夫を凝らしても、消費者側の感性と物事へと多角的な視点が乏しければメッセージを見逃してしまうのだと痛感する。小島秀夫監督の感性は素晴らしく、進化し続けゲーム作りにそれを惜しみなく注いでいる。私も感性を磨いて全力で受け止めていきたい。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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