見出し画像

「私が食べた本」

6年前に芥川賞受賞の「コンビニ人間」という本を読んで以来の、村田沙耶香さんの作品だ。

他にも色々著書はあるだろうが、今まで気に止まることはなかった。

ところが最近2度続けて、この本が私の目の前に現れた。1度目はイラストの印象が強く心に残り、2度目はその印象が残っていたので「またこの本だ」と思い、パラパラと頁をめくり、2度目のサインを見逃さず借りて帰ることにした。

この人は、普通ではない。

こういうと、普通ってなんだ、とか面倒くさいことを言い出す人がいるが、こういうのは感覚の問題だ。定義があるわけではない。

彼女の書評はよく目にする書評とは何かが違う。読んでいてとても心地が良い。多分それは、私と似た感覚の持ち主だからだろうと勝手に結論づけた。

文字を五感で味わう人なのだ。

あ、だからこの本のタイトルが「私が食べた本」なのか。

想像力とも妄想力ともいう、それを超えた感覚で文字を読み、自分の中にスーッとそれらを飲み込んでいく。

私もそうなので、この感覚がよくわかる。と同時に、それらの描写がそれぞれの書評に散りばめられていて、私はそれがとても嬉しかった。

「今も私の体内に埋め込まれて呼吸をし続ける物語ばかりだ。この小さな物語は、1度読んだら、身体の中で光りつづける、とても強烈な一粒なのだ。読み終えてからも、身体の中で、濃度を増しているかのようだ。今でも、私の手の甲で、心臓の脇で、それぞれの物語の粒が疼いているような気がする。」(抜粋 私が食べた本 48頁)

借りた本だけど、これは手元に置いておきた1冊となった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?