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【読書記録】東大卒が農家の右腕になったからってなんぼのもんじゃい

1.はじめに

 今回ご紹介する本は、
佐川友彦 著
『東大卒、農家の右腕になる。』
です。
 タイトルを見て最初に思ったのは、『東大卒がなんぼのもんじゃい』でした。できる人できない人に学歴は関係ないと思っていますし、実際学歴が仕事の全てではありません。
 さらに気になったのは農家の右腕というフレーズです。コンサルタントなのでしょうか。たしかに私が農家の後継として働くうえで経営や業務の改善点は何もしなくても山ほど見つかってきました。それはもう、『会社なら当然のことなんだけど…』ということができていないという印象を受けるくらいにです。それを、東大卒の農家コンサルタントが上手くやっていく話なのだろうという予測のもとに本を手を取るのでした。

 さて、これまでnoteを開設してから会計のことや税金のこと、投資のことを読書記録として残してきました。やっと私の現在の本業についての本の紹介です。
 これまで個人的には肥料の本や農業の本、小規模農家の経営についての本などを読んできました。私にとっては未知の分野ですのでとにかく知識を入れたいという感じです。それは基本的な知識もそうであり、農家をビジネスとして見たときの経営についても同様に知識を入れたい、そんな思いであります。

 では今回の読書記録をご覧ください。

1.はじめに
2.本を選んだ理由
3.本の内容
・経営分野
・総務分野
・人事分野
・生産管理分野
・販売管理分野
4.おわりに

2.本を選んだ理由

 こちらの本を手に取ったのは、冒頭でお話したとおりの生意気な理由でした。しかし中を見てみますと『そう!これこれこれ〜!!!これをやっていかないとなの!!!』という項目が多く、即持ち帰りました。

 まさに『掃除をする』的なところなんかがそうです。
 『え、掃除?当たり前では??』と思われる方も多いと思いますが、昔からの農家はこれができません。掃除といっても日常の清掃のことではありません、とにかく整理整頓ができないのです。
 私が妻の実家で働き始めてまず愕然としたのはそこでした。整理整頓ができていないので、なにか作業をするとなると道具を探すところから始まります。作業をするための作業が始まります。何十年もこれでやってきたのかと思うと信じられないというのが本音です。
 ですので、私も働き始めてまずやったのは倉庫の整理整頓でした。棚を作って、物の置き場所を大体でいいから決める。これができてないのに仕事はできないだろうというのは常識だと思っていました。なぜなら一日の業務時間は限られているのですから。

 というわけで、目次の時点で共感しかなかった私はわくわくしながら読み始めるのです。

3.本の内容

 さてこの本ですが実はそこそこの厚みがあります。と言いますのも著者の佐川氏の人生をストーリーとして書いている第1部と、経営や生産や労務などの各項目に分けて改善を実施してきた内容を書いている第2部に分かれています。
 この記事ではその第2部の中でも特に『これは!』と感じた部分を抜粋して紹介していく形としたいと思います。気になった方はぜひ購入して読んでみてください。

・経営分野

#1 経営理念と方針を決める
 経営においてのビジョンを明確にするということで、やるべきこととやらないでいいことが見えてきます。『農家で経営理念って(笑)』って考えてるから改善できない!これまでの改善をしていくのに、何から手をつけるのか、何をするのか方針が見えないと何もできない!と思ってすごく共感しました。

#2 事業計画を作成する
 これも『自然相手の仕事で計画って(笑)』ではないのです。だからこそ作るんだと私はずっと考えておりましたが、まさかこの本にも書かれているとはと感銘を受けました。
 事業計画を立てることは経営状態や方針が可視化できるだけでなく、状況に応じて軌道修正していくこともできるのです。
 そして作成後は専門家に意見を仰いでみたり、先行事例を調べてみたりして目指すべき方向に向かって動けるようにするのです。

#3 SWOT分析をする
 簡単に言いますと、SWOTとは強み弱みという内的要因と機会や脅威という外的要因のことを指します。
 これを分析することで、短所を補い長所を伸ばす経営をしていくのです。


・会計分野

#4 クラウド会計ソフトの導入
 今回の著者はクラウド会計ソフト推しの方でした。前回の本ではインストール型を推奨していたので、どちらがいいのだろうと思いましたが、クレジットカードやネットバンキングと連携できるそうです。
 これによって自動で帳簿に仕分けしてくれるというとても画期的な仕組み。そしてこれにより確定申告の手間が格段に省けるというわけです。
 "ITと農業"として考えるとどうも農産物が楽になるという期待をしていましたが、たしかに事務的な部分であればどんどんIT化していく価値がありますよね。

・人事分野

#5 人事評価する
 これもまさに私も考えさせられていた部分でした。
 人事評価基準を作って、それを教育や給与に反映する。私の周囲でも多く見られますが、これについてはほとんどされている農家はいないのではないでしょうか。
 こちらの本にも『評価・報酬・成長は三位一体』とあるように、評価に対して適切な報酬を貰えるから成長しようと思えて、それがまたより良い評価に繋がるということです。
 たしかに給料を上げるというのは決して小さい負担ではありませんが、それに見合うだけの投資効果があるのであれば、先々を見すえた行動をすべきだと私は思います。
 そしてその評価をするために必要なものこそが、
#6 スタッフの年次目標を設定する
 です。こちらの本では本人が考えたものと、上司からのリクエストしたものを合わせて相談した上で決めて、達成するための行動を一緒に考えるとありました。
 評価をする上では当然目標が必要ですし、達成するために成長してくれた従業員には相応の報酬を与えるというのは当然の話だと思います。

・生産管理分野

#7 作業計画を立てる
 作業日誌や作業時間から作業の進捗が予定通りなのかを把握し、差異がある場合はその原因を分析します。
 これにより、作業の進捗管理ができます。
 仕事をしていると『なんとなく遅い気がする/早い気がする』と早く終わればラッキー程度に考えがちですが、きちんと整理して分析することで改善につなげていけるのです。

#8 作業指示書を作成する
 当日の全業務について、いつ・どこで・誰が・何時から何時まで作業するという指示書を前日までに作成してスタッフと共有しておく。
 結果としてスタッフが指示を自分で振り返れるようになり、上司に確認するような時間がなくなります。
 これも私は改善点として考えておりましたが、書類に残すことの有用性は現場に指示者がいなくても良くなることに尽きます。現場にいなくてもいいということは、スタッフが現場にいる間に経理や事務的な業務ができるわけです。
 どうしても口頭で伝えがちですが、解釈が違ってしまったりするとどうしてもその分の手間が別でかかってしまいます。小さなロスが減るというのは長期的に見ると大きく変わる部分だと私は思います。

#9 雨の日の業務をリストアップする
 これも農家にとっては重要ではないでしょうか。雨の日に仕事が出来なくなるのは農家だけではないので、そういった仕事の方も考えさせられる部分だと思います。
 畑での作業が続く日程だと雨が降るとどうしても休みとしたくなってしまいますが、それでは働きたいスタッフとしても残念ですし、雇用側からしても時間が無駄になってしまいます。
 データ入力や道具や機械の手入れなど出来ることをすることで、雨の日でも仕事ができる仕組みを作るのも重要な改善だと思います。
 また雨の日の業務を作ることで、急な天候の変化にも対応できるようになったとあり、重要な項目だと感じました。

#10 作業マニュアルをつくる
 作業の目的・必要な道具・内容・注意点・仕上がり基準などをまとめることで、どのスタッフも同じように作業できるようになります。
 同じ作業なのにそれぞれが違うやり方をしていたら、作業時間もクオリティも違ってきます。そこを標準化することで効率化が図れますし、未経験のスタッフでも基準がわかっていればある程度自分で判断することができるようになります。
 誰でも同じ作業を同じクオリティでできるというのは会社にとっても大きな強みになるのではないでしょうか。

#11 保護具を着用する
 ちゃんとした企業にお勤めだと『え、当然では?』と思われると思いますが、基本的に農家にはこのような考えはありません。
 農薬を散布するときは絶対にマスクやゴーグルをした方がいいですし、重労働であればヘルメットや安全靴も必要になってくるはずです。
手袋にしても様々な用途のものがありますから使い分けが必要なはずなのです。
 スタッフが安心して働ける職場を作るというのも経営者の重大な責任だと思います。

・販売管理分野

#12 オンラインショップを開設する
 著者の農園では『カラーミーショップ』というシステムを活用していたそうです。
 当然売り上げの上昇が見込めますし、電話やFAXでの注文に比べて注文管理もしやすくなったそうです。
 『食べチョク』や『ポケットマルシェ』などの農産物直販サイトや、楽天やYahooなどのオンラインモールを使うのもありだとしています。
 売り先を増やすというのはリスクヘッジにもなりますから、先々を見据えるのであれば考えたいところです。

4.おわりに

 いかがだったでしょうか。実際は本に紹介されているものだけでも100項目の改善点がありますし、無料公開されている情報ではもっとあるそうです。
 私は農家なので当然農家目線で読みましたが、農家のみならず中小企業の改善としてはどれも活用できるものなのではないでしょうか。
 『農家だから』『小さい会社だから』というのは改善しない言い訳にしかすぎず、きちんと向き合えばいくらでもより良くできるはずですし、その結果はきっと良いものになって返ってきます。
 私はこの本はしっかり保管しておき、自分が経営に回った際にはどんどん改善していけるように何度でも読み返したいと思いました。小さなことからでいいんです。まずは整理整頓から、始めていきましょう。


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それではまた次の記事でお会いしましょう。

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