記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

エルピス 風よあらしよ 初恋の悪魔


このドラマが今年では秀逸作だったような気がする。

思えばエルピスの主人公浅川は、疑問を持ちながら何も出来ずにいた。
そしてパンドラの箱をあけてしまったときに…様々な物を見たが。
浅川自身はパンドラの箱の中とは関係の無い、いちキャスターである。

そして最後には権力側の人間と取引をして、一応自分は良いことをしたと自分を納得させ
これからも人気キャスターとして生きていく。
善玉が好きだが悪玉も無いと生きていけないキャスターだ。斎藤がコントロール可能であれば、浅川がイキっても大丈夫だ。
もしかしたら浅川が斎藤を利用してキャスターの位置に居続けるのかもしれない。
とにかく双方でこれからも監視しあうのかもしれない。

拓郎達は、本当だったら消える人間なのだが生かされている。あの二人だと力としたら弱いからだろうか?

生きづらい世の中だなと思いながら生きていた

「初恋の悪魔」の主人公鹿浜鈴之助は、しかし犯罪者に興味を持ち
それによって自分の生きる目標を形作っていた。
現在怪しいのは家の隣の男。その男は様々な女を家に招き入れる。どうにも怪しいと思いながら鈴之助は毎日ストーカーのように隣を見張っていた。一応警察官である。


「マーヤーのヴェールをはぎとれ」

というかけ言葉で真実に近づこうとする。
✽マーヤーのヴェールとは、ショーペンハウアー著の「意志と表層としての世界」より。
思い込みや常識、願望によるまぼろし
のようなものらしい。

そういえば、こっちにも冤罪問題があった。
そして恋愛もあったが、それは恋愛以上の重要な出来事だった。

風よあらしよ

これは、地上波でやったほうが良いのでは無いかという良作だった。キャストも皆主役クラスである。
この時代にこのドラマをやるというのも意味があった。だが、このドラマはエルピスと違いあまり希望が無い。
史実通りに主人公は終焉を迎えた。
伊藤野枝は、婦人解放運動家である。
平塚らいてうも同じで、彼女らは当時誰も言えなかった女性の尊重を守れという事を言い続けた。
フェミニズムの走りなのだが、男達からの非難は相当凄まじいもので怒号があがった。
だが大杉は尊重した。

しかし実際には伊藤野枝はあまりにも自由すぎて平塚らいてうから呆れられてしまったらしい。
大杉もだが、このふたりは主義者として華やかだし目立った。

このドラマでは駆け足気味にふたりの物語が進む。
そして最も重要なシーンは大杉と伊藤野枝が虐殺される直前に放つ言葉である。結構長い時間を割いているように思った。
観た人にしか分からないが。

ところで私はこの二人ともうひとり辻潤の存在を映画で知っており、特に辻潤に今回興味を持ち書籍まで買ってしまった。
そうしたら思っていたより面白い人間だった。
 戦争前に翻訳者として何冊か洋書を翻訳していた。
そして教師になり伊藤野枝をみつける。
彼は宮沢賢治も見つけるし、世の中に埋もれそうな才能を見つけ出す才能を持っていた。
さらに酒が好きで酒浸り。
数々の新聞の論説も書く(戦前にフランスに行って特派員にもなっている)
あと、ドラマでも映画でも悲劇の人としてしか出てこないが、女好きで女からも惚れられていた。
なので伊藤野枝から去られても文学少女だったような女性とずっと暮らしていたりしていた。
知れば知るほどあの時代に
なんてジタバタとしながら自由に生きていたんだろうと感動しました。
辻潤は発狂した
とウィキペディアでは書かれているけれど
「発狂?発狂のふりしているんじゃないの?」
と友人に言われるほど破茶滅茶な人生を送っていた。
(同居していた女性は、「ふりじゃなくて辻潤はお酒の呑みすぎで頭が本当に変になったんです。酒ってキ□ガイ水ですから」と云っていた。
ふりというのは、現代語に訳しています。)
官憲から時々おかしいやつとして足を止められるが
「降参党ですよ〜」
と言うと
「なんだこいつ酔っ払いかよ」
という感じで最後まで逮捕拘留はされなかったようである。

 神近市子の記述から
伊藤野枝がいなくなって……
ほとんど下着姿で辻潤は市子(市子は刑期が終わり刑務所から出て所帯を持った)の家に
「酒をくれ」
と言いに行き
市子の家の子ども達にかこまれ
「おかしいおじさんが来た!」
と囃し立てられた事もあった。
その時は病気になっていない頃の辻潤です。
市子は子ども達を叱り
「辻さん可哀想に」
と涙ぐみ酒とつまみをあげたそうです。

しかし彼の書いた文筆の内容の数々は鋭い。
おかしいのは
「結婚は愚かな事だ!」
と言いきるところで…
経験でというのもあるだろうが、世の中にある結婚済みの男女の事も云っていたらしい。
大杉のように、貧乏な大衆を助ける気持ちは無かったのだろう。
何もかもをも文章で斬りまくっていた。

しかし。

そのふざけすぎた態度のせいか、真面目な主義者からも遠巻きにされ…時には酔って突然長丁場泊まるので迷惑がって友達達からも徐々に嫌厭された。
だが数少ない知り合いは、彼を愛していた。
彼独自の哲学に感心する者もいた。

そういう事を知り、今年は収穫の年だったなぁと思った……

誰か辻潤をこそ、今度主人公にして下さい。


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

おすすめ名作ドラマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?