アニメ「ヴァイオレットエヴァーガーデン」に見る動画構成の秀逸さ
今回は僕がハマった京都アニメーションのアニメ「ヴァイオレットエヴァーガーデン」から過剰演出型の素晴らしさがたっぷり詰まった場面の説明をしていきたいと思う。
そしてこのアニメの中で神回と言われる第10話。
そのエンドロールで流れる、その回のオチの表現の仕方がとても教科書的で情緒的であり、作品を感動的にしていることから、僕自身涙腺崩壊したのでその理由づけをしたくなった。
このアニメの概要はウィキペディアで調べてもらえればと思う。
そしてこの10話は簡単に言うと、
村に母と娘だけで暮らす家庭がある。
母は病気になり、死期が近いことを悟っている。
娘のために毎年、娘の誕生日に手紙が届くように、
毎日毎日手紙を書き続けた。娘との遊ぶ時間を削りながらも。
娘にその理由を明かさぬまま。
それが前半の20分で描かれる内容だ。
そしてこの動画の3分間でオチを描く。
母が亡くなり、悲しみ明け暮れる少女の元に
毎年届く亡き母からの励まし、愛に包まれた手紙が。。。
そして少女も自分が母親になり、笑顔で前を向いていく。
といった内容だ。
書いてて泣きそうになる。
動画のリンクは以下だ。
https://youtu.be/eSMtT7X_Q7A
画角の使い分けの素晴らしさ
僕が動画の撮影での基礎を話すときにいつも言う
・引き
・寄り
・イメージ
この使い方、構成の立て方が最高なので、
その三点を中心に解説したい。
最初に描かれるのはまだいきている母との戯れのシーン(引き)
手紙を書き終えた母と少女の数少ない幸せなシーンだ。
そこから同ポジのまま季節が冬になる画につなげる(引き)
少女の印象的な背中のカット(引き)
個人的にだが背中のカットは想像力を増幅させる効果がある。
さらに上と左右に余白を残すことでさらに想像力を掻き立てる。
それと同時に少女の孤独を表現している。
幸せな説明的な絵が続く。(引き)
引きによるシーンの切り替えは、記憶を探っているかのような断片的な印象を残す。
誰もいないシーンが続く。(イメージ)
これにより少女の孤独を想像させる。
雨の降っている花(イメージ)
雨=悲しい印象を持たせている。
実際に母親の葬儀の様子が描かれる。(引き)
このカットで本当に少女はひとりぼっちになることを説明。
しかし季節は巡りアップの少女の表情。この時は不思議な様子の感情を表現している。(寄り)
そしてこのカットは先ほどの背中のカットのつなぎとなっている。
こうしたカット繋ぎで徐々にフィナーレに向けての印象を出す演出はさすがである。
少女の元に亡き母からの手紙が届く(イメージ)
孤独の中、寂しさを噛みしめる少女。(寄り)
この時の手紙の印象はかなり寂しいものと位置付けられる。
時は巡り再び背中のシーン。少女の成長がうかがえる。(引き)
成長した少女は友達と一緒に楽しそうにしている。(引き)
時の経過による孤独の解消と少女の成長が同時にわかる。
母からの手紙を読む少女。口元までが写っている(寄り)
泣いてこそいないが口元はまだ寂しさを感じ、辛さが残っている。
再び成長がうかがえる背中のカット(引き)
少女は恋をする。寂しさの和らぎ、新しい出会いを象徴的に描いている(引き)
手紙のイメージ。彼女の表情はわからない。ここはあくまで想像させている。
寂しさはありつつもしっかりと前を見つめる印象的な寄り(寄り)
彼女自身も一人でないことをわかっているし、母の偉大さも感じているかのようだ。
そしてさらに時は経過する。少女は二十歳になる。(引き)
再び手紙が届き読んでいる手元で想像力喚起。(イメージ)
再び口元が映されるが、今の彼女は微笑んでいる。
幸せなんだと言うことがうかがえる。(寄りプラス、イメージ)
背中のカットが寄りになる。少し背中をすぼめていて泣いている様子。
無駄な情報を排除し、彼女に集中させるカットだ。(寄り)
そして振り返ると彼女は笑みを浮かべている(寄り)
このカットがいままでの寂しさを乗り越えて、今を生きていると言うアンサーになっている。
そんな彼女の見つめる先には先ほどの男性と赤ちゃんが。
結婚、出産を経て新しい家族を作ったと言うポジティブなカット(引き)
そして一番最初に描かれていた母との思い出がインサートで入る。
このカットにより、母になった少女が思い出していた記憶を
なぞらえていたと言うことがわかる。
寂しいが今、私は幸せです。いつも私の心の中で…側にいてくれて、ありがとう。
そんな思いが込められているかのように。
そしてこの一連の流れのラストカットは家族3人になった背中。(引き)
この後は主人公のシーンに移り変わる。今まで以上に感情をあらわにするエヴァーガーデンの涙もまた喰らいます。
そしてこの話のラストではテロップのみで
「愛する人は ずっと見守っている」
で終わる。素晴らしすぎる。
BGM、ナレーションとの合わせ方
以上カット繋ぎによる画角の選び方の秀逸さである。
文字では伝えられないのが
このカット繋ぎとバッチリハマっているのが
手紙を語る母のナレーション。
そしてこのアニメのエンディングテーマの歌詞合わせだ。
さらに監督の凄さは
エンディングテーマがこの10話のみ2番から始まるのだ。
BGMは2番からかなり壮大なものになる。
その壮大さと、この母の手紙の流れに一切の無駄な情報を省くためなのか、
この話で初めて聞くことにより、
パンチ力は何倍にもなって繰り出されている。
これと似ている演出はドラマ「アンナチュラル」の
ラストに流れるエンディングテーマ「レモン」に合わせてネタバレをしていく
ものと同じ感じだ。
BGMの強みを最大限に生かすことで視聴者にエモーショナルな限定的な強さを与える。
ある意味で無駄な情報は与えない。
このような総合演出は現実をとても素敵なものや、反対に恐ろしいものへと
印象を増幅させる効果を持つ。
動画の強みとはこのような過剰演出の側面だ。
とまぁツラツラ取り止めもなく書き殴ってしまったが、ようはこのアニメが最高だってこと。
アニメ作品の中でもトップレベルで映像が綺麗だし、演出も素晴らしい、、京都アニメーションの本気度が伺える。そんな感情を揺さぶる作品を作り続けることに敬意を表したい。
4月にはフィナーレとなる劇場版が公開される。いつまでも応援したいし、影響うけまくります。最高です。
本当にありがとうございました。
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