見出し画像

便利は不便

ある友人が述べられた言葉です。

「便利は不便です。便利がスタートラインだと、そこが基準となってしまうから。考えること、感じることが失せていく」――。

その通りだと思います。

特に昨今「検索」が便利になったことが、さまざまな弊害に繋がっていると感じています。
「読む、考える」ができていない人が便利さだけを使った場合、それは「調べる」としては「浅く表面的」でしかありません。「簡単にできる」により、考えたり感じることをできなくさせていると感じることは多々あります。

先日、時刻表に関する話で「検索に頼りすぎるために公共交通機関を賢く使えていないケースがある」と記しました。「乗り換え案内」で「時刻や料金だけ」を調べるのが簡単になり、旅においても「検索に任せてしまう(信じ込んでしまう)」傾向が強まっています。「時刻表の見方」と「切符のルール(途中下車と有効期限、料金形態)」だけでも「知識」があれば、同じように「乗り換え案内」を使うにしても、全く「用途」が変わります。

「部分的に特急列車を使って中抜けする」「私鉄やバスとの併用」などは、検索では「発見しにくい」ですし、ICと切符の料金比較などもできません。知識がない人ほど「検索条件」を使っていないですし、酷い場合だと日時を正確に入れずに調べてしまい「平日と休日ダイヤの違いなどを把握していないこと」もありました。

また、境線はラッピング車両の「鬼太郎列車」が運行されていますが、平日は一般車両もあります。これも、紙の時刻表には「どの時間帯がラッピング車両か」が記載されています。
先日ご宿泊いただいた人も、ご到着予定時刻を伺ったところ鬼太郎列車ではなかったので、その旨をご案内したら「せっかくなので鬼太郎列車に乗りたい」と、米子で時間を取り1本後の列車に変更されました。

今、この「安易な検索」により「旅宿」としては大きな問題点を抱えています。
個人的に最も困るのは「電話番号だけを調べて、何も『確認』せずに電話してこられる人」と「直接来られる人」。「聞くための情報だけしか調べない」は、安易さの最たるものだと思いますし、都会のビジネスホテルなどとは役割も位置付けも違いますから「アポなし」は礼儀に反すると思っています。酷い場合は「調べなかったこと」への逆ギレが起こりますが「ちゃんと調べることができていれば、そもそも問題事にならない」と思います。

私は地方の新聞社に12年勤めていました。
就業当時(1996年)は、まだアナログの作業が多く残っていて「ネット検索」は信憑性がなく「複数の文献などに頼る時代」でした(ネット情報を活用しだしたのは2000年ごろから)。
一方、最初の職場を10年半で辞め、数年のブランクを経て再就職(2010年)した新聞社では、この「文献で調べる」ができておらず「取材→補足情報をネットで調べる」感じでした。しかも「複数の情報で裏付けを取らない」、そのために誤報が起きることもありました(職場の体質や地域性もありますが)。新聞報道の基礎を学んでいない人に「業務」として従事させてしまった結果です。

今、無駄に情報があふれています。そのため「誤情報を信じ込んでしまう人」が多くなるばかりか「正しく情報を読み取れない人による誤情報が広まってしまうこと」も起こります。

※※※――余談ですが、今のマスコミは「真実を報道する」のではなく「報道したことが“真実”だと思わせる」手法を採っています。言葉を置き換えたりすることで“洗脳”が起きるのです。例として「入り込み数〇〇人」と「観光客〇〇人」は全く違うものです。しかし新聞では、本文内には「入り込み数」と書かれていても「見出しで“観光客数”と、勝手に表記を変える」が起きてしまっています。「入り込み数」であれば地域住民が含まれても構いませんが(本来なら「入り込み総数」ですが)、「観光客数」と言ってしまうと語弊があり、状況によっては「単なる誇大広告」でしかありません。新聞は「見出ししか見ない人」も多いので、こういった「違い」を正しく読み取れないまま、誤った情報が広まるのです――。
(本題に戻ります)

私は、口コミなどの「他人軸」の情報を信じません。感じ方は人それぞれですし、「事実と違う内容の口コミ」などもたくさんあります。それよりは「自分軸の情報」を信用します。宿を予約する際も、旅の情報を得る際も、基準とするのは「公式サイト」です。本来、それが当たり前だと思っています。
なので、この「簡単に検索できる」という時代の流れには逆らっています。宿泊予約サイトなども「必要事項の記載」などは、かなり厳しめにルール付けしています。「簡単」=「安易」の傾向が強すぎるからです。

曖昧な情報に影響されない人、あるいは、その“奥”まで読み取ってくださる人、そんな人を歓迎していますし、そんな人のほうが確実に「満足度」が高くなります。そして、情弱ではなく、記載事項をしっかり読み込んでくださる人のほうが「信頼関係」も深まります。

短絡的に目に入る情報よりも、考えること、感じることを大切に、本質まで「調べて」ほしい――、と願うばかりです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?