(短編) 注意

あなたは人の鼻毛が出ているのを注意出来る人間だろうか。
僕には無理だ。
鼻毛が出ていようが、社会の窓が全開だろうが、歯に青のりが付いていようが、カツラがずれていようが、口に出すことが出来ない。
反射的にどう伝えるかより、どう気付かなかったフリをするかに頭が傾く。
言った方がいいのは分かっている。だが、いくら親切とはいえ、人に嫌な思いをさせてしまう事を告げる勇気がどうしても出ないのだ。
言おう、言おうと思ううちに時は過ぎ、ますます言い出しにくくなる。
今がまさにそうだ。さっきから友人の頭を赤い光が指している。
その先にいるスナイパーまで見えているのに、僕は伝え方が分からない。

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