生涯何があっても愛する“はずだった”人へ


※はじめに※
これは私の気持ちの整理のための文章であり、特定の個人を誹謗中傷するものではありません。


3年と少し前、人生で初めて、推しの結婚というものを経験しました。


その日からしばらく、私は泣き暮らしていました。これは誇張でもなんでもなく、本当によく泣きました。テレビで彼を見る度に、彼らの曲を聞く度に、それはそれは辛い気持ちになって、涙をこらえることができませんでした。自分がなぜ泣いているのかもよくわかっていなかった。とにかく情緒が不安定で、ただの風邪を2ヶ月くらい拗らせました。大袈裟だと笑われるかもしれないけれど、でもそれくらい、彼の存在は私の人生の一部でした。


事ある毎に泣いてしまうのが辛かった私は、納得することも悲しむことも怒ることも、彼の結婚に対して何かを感じ、思考するという行為の全てを放棄することにしました。SNSでは彼に関連するありとあらゆるワードをミュートして、家族や近い友人にもその話は一切しないでくれと頼みました。私の世界で、彼の結婚はなかったことになったのです。



私がそのような逃避的な対応を選んだのは、偏に「彼を嫌いになりたくなかったから」です。私が人生で初めて好きになった彼の属するグループは、結婚発表の日から約1年後には活動休止をすることが決定していました。彼らも、私たちファンも、来るべきその日に向けて、残された時間を精一杯楽しもうと必死でした。

私にとっては、11歳でファンになってからの12年間、多くの時間とお金をかけて応援してきたグループの区切りです。彼らのパフォーマンスに心を奪われ、挑戦する姿に勇気をもらい、努力に裏打ちされた説得力のある言葉に何度も救われてきました。彼らのおかげで出会えた友人もいるし、彼らのおかげで見られた世界もありました。彼らは間違いなく私の青春で、私の人生を形成するものの一部でした。そんな大切な人たちが決めた区切りだったから、私は彼らへの愛をそのままに、その日を迎えたかったのです。



思うところはたくさんたくさんあったけれど、私は活動休止を迎えるその日まで、なんとかその思いを無視して生活していました。彼を好きだと思うことは正直なくなっていたけれど、そんなことにも気づかないふりをしていました。私は彼のことだけが好きなわけではなく、彼の属するグループそのものが好きだったので、5人でいる姿を見ているだけで幸せでした。
努力の甲斐あって、応援してきた月日を台無しにすることなく、感謝と愛をもってその日を迎えた私は、12年間の彼らのファンとしての人生に区切りをつけました。




そして、あれから3年。
彼らがいなくなって1年くらいは、とても寂しかったのを覚えています。毎週彼らの姿が見られた冠番組や毎年出演していた大型音楽番組を見ると、彼らがいない現実を突きつけられて悲しくなることもありました。
でもそのうちそんな日々にも慣れてきて、悲しむことはなくなりました。
そして彼らへの気持ちが落ち着いてくると、私が私自身の中で消化することを拒否していたあの結婚へのもやもやした気持ちが、着実に嫌悪に変わってきていることに気がついてしまいました。このまま抱えておくのも嫌なので、文章にして吐き出してしまおう、というのがこの文章の趣旨です。




冷静に考えてみると、私があの結婚にここまで嫌悪感を抱いているのには、2つの理由がありました。

そのうちの一つは、お相手です。
結婚相手の女性は、所謂「匂わせ」といわれる行為を繰り返していた人でした。芸能人というのは得てして火のない所に煙を立てられてしまうものだと理解していますし、それまでにも「それはさすがに深読みのしすぎでは?」と思ってしまうような、こじつけに近いものも見てきました。私はどちらかといえば、なんでもかんでも匂わせだと騒ぐことについて、懐疑的な方だと思います。しかしそんな私でも、彼女の匂わせはそれはもうとんでもないものでした。深読みせずともわかってしまうくらい、何ともわかりやすい匂わせで、思わず笑ってしまったくらいです。

ただ、勘違いしないでほしいのは、「匂わせをする彼女が嫌いだから、そんな女と結婚してほしくなかった」という主張をしたいわけではないということです。もちろん、ファンを深く傷つける行為である匂わせをした彼女を好きだなんてことは口が裂けても言えませんし、好きか嫌いかを問われれば嫌いです。しかしその一方で、彼女の行為の意図は理解できますし、あれが賢いやり方だったのだろうとも思います。アイドルである彼が事務所に所属したまま結婚をするのは、容易ではありません。稼ぎ頭である彼らが結婚をするということは、事務所にとっては大打撃であり、出来れば避けたいものだからです。それを覆すには、何かしらアクションが必要だったことでしょう。度重なる匂わせによる炎上が事務所内でどのように受け取られ、どのような経緯でそうなったかは分かりませんが、結果的に彼らの活動休止を待たずして結婚が認められたわけですから、彼女の強かさが勝利したことには間違いありません。そういった意味で、彼女は自分の理想を現実にするために最も有効な手段を選択したのではないでしょうか。


私が嫌だったのは、彼がそれを容認していたことです。
彼女には匂わせをする理由がありましたが、彼にはそれをやめさせる大義があるはずでした。アイドルは、夢を売る仕事です。そのためには、プライベートの恋愛は極力隠すことが求められます。私は、アイドルは恋愛してはいけないとは思いません。アイドルである前に彼らは一人の人間ですから、営業時間外に何をしようと個人の自由です。大切なのは、夢をお金で買っているファンに対しての誠意として、それを感じさせないよう最大限の配慮をすることです。ですから、本人サイドが必死に隠そうとしてくれているのに週刊誌が強引にそれを世に出してしまったような場合については、それはアイドル側の責任ではないと思います。しかし、匂わせは別です。匂わせは、ファンを軽んじる行為であり、もっとも許しがたい裏切りだと思っています。

本件において、匂わせをしたのは結婚相手の女性であり、彼自身ではありません。しかし、彼がそれを知らなかった、と考えるのはあまりに無理があります。冷静に考えても、彼も彼女のその行為を知っていたというのが妥当でしょう。さらに、その匂わせが何度も何度も行われていたことを鑑みると、彼がその行為をやめさせようとしていたとは到底思えません。彼がその行為に対してどんなリアクションを取っていたかは知りませんが、少なくとも止めようとは思わなかったのでしょう。私にはそれが、残念でなりませんでした。彼は、誰よりアイドルという仕事にひたむきな人でした。歌って踊るアイドル業以外の世界でどれだけ評価を得ようと、アイドルであることに誇りを持ち、アイドルでいることを常に選び続けてきてくれた人だったのです。そんな彼が、ファンの気持ちを蔑ろにする行為を黙認したのだろうという事実に、私は深く傷つきました。私がそれまで応援し続けた彼というアイドル像そのものが壊された気がしたのだと思います。



二つ目は、結婚発表の時期です。
前述したように、彼が結婚を発表したのは、あと1年と少しでグループ活動が休止になる、という時期でした。結婚発表の少し前には、今までやってこなかったSNSの開始、サブスク解禁、国立競技場でのライブが決定するなど、まさに活動休止へ向けてラストスパートをかけている時期でした。

そんなタイミングでの、あの結婚発表。あまりにも時期が悪いと感じたのは、きっと私だけではないでしょう。もしもお相手が別の、ファンからも人気のある女性だったなら、お祝いの気持ちでグループとしてのラストスパートにさらに拍車をかけられたのかもしれません。しかし、お相手はファンを敵に回すような行為を重ねてきた女性です。心証が良いわけがありません。
もちろん何度もいうようにアイドルも一人の人間ですから、いつどんな人と結婚しようと自由です。それは分かっているつもりでしたが、それでも、「今だけはやめてほしかった」というのが正直な気持ちでした。あと1年と少しすればグループとしての活動は休止になる。そこまで待ってほしかった。ラストスパートを駆け抜ける姿の奥に、強かなお相手の影がちらつくのが本当に嫌でした。全力で応援して、精一杯楽しんで、幸せな気持ちで休止まで見守りたいのに、彼の姿を見るたびにネガティブなニュースが脳裏を過るのには、耐え難いものがありました。私が応援してきた12年の終わりを、台無しにされる気がしました。なぜあのタイミングでなければならなかったのでしょう。これだけは、今でも理解できません。妊娠云々の話は結局本人たちにしかわかりませんが、とにかく私にとっては最悪のタイミングであったことに間違いありませんでした。




以上の理由から、私は推しの結婚を祝うことができませんでした。
推しの幸せを喜べない日が来るとは、思ってもみませんでした。ファン失格なのだと思います。そしてそうなると、自然と好きだという気持ちも消えていきました。彼は、決して悪いことをしたわけではありません。ただ一人の人間として、決断をしただけです。ただ、その価値観が、私には理解できませんでした。彼のパフォーマンスや彼が紡ぐ言葉が大好きだったけれど、結局はああいった結末を選ぶ人なのだな、と思うとスーッと気持ちが冷めるようになりました。私が青春をかけて好きだった人のことを理解できずに、気持ちが終わってしまったことは少し寂しくもありますが、当時楽しかった気持ちには嘘はありません。彼を応援していた時間に得たものは大切に、心の中にしまっておこうと思います。


最後に、以上の文章はすべて私の個人的な感想です。
彼や彼女に非がないことは十分に理解しており、それを責める意図はありませんので、ご了承ください。

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