舞台『魔法使いの約束』とわたし

平素よりお世話になっております。みづさんです。

観劇記録noteの第2回目です。
先日、舞台『魔法使いの約束』(以下:まほステ)の千秋楽公演を配信で拝見したので、今回はこちらの作品の感想を記録しておこうと思います。

先に謝らせてください。今回の記事でお話する公演内容について、うろ覚えな部分がかなり多いです。後日配信を見ながらnoteと公演内容をチェックする予定ではありますが、あまりにも齟齬がひどい場合には大幅に記事を修正する可能性があります。ご理解いただければ幸いです。

また、今回も例に漏れず公演内容のネタバレを含みますので、気になる方は閲覧非推奨です。
それでは、今回もよろしくお願いします。



というわけで、配信でではありますがまほステを見ました。
配信視聴に至った理由としては、推し魔法使いことファウスト先生のビジュアルがよすぎたのが8割、脚本・作詞の浅井さやかさんに惹かれたのが1割、2章でとんでもなく良い配役が来た時のために心構えをしておきたいという邪な気持ちが1割です。
ちなみに視聴時点での原作ゲーム『魔法使いの約束』(以下:まほやく)の進行度としては、メインストーリー序盤の11章あたりまで読んだ程度で、千秋楽を見た後にようやく14章あたりまで読み進めました。最近スマホゲームを続ける体力が衰えたことが悲しい。ライスシャワーとゴールドシップの育成に泣いて投げ出している場合ではない。


それはさておき、肝心のまほステ本編の感想に入ります。

全体的な感想としては、非常に丁寧に作られた作品という印象が強く残った作品でした。
今回の舞台は、まほやくのメインストーリーでいうとかなり序盤の部分のみをピックアップしていました。それこそ、ほとんどシナリオを読み進めていない自分でも読んだことがある程度の部分までです。(今回の公演に出演するキャラクターが発表された時点で「あ、そこまでなんだ!?」とにわかに驚いたのも覚えています)
まほステ1章のあらすじはこうです。
「突然異世界に呼び出された賢者・昌くんが、ある夜突然、”大いなる厄災”との戦いによって傷ついた魔法使いたちと出会う。昌くんは魔法使いたちの願いを聞き入れ、新たな"賢者の魔法使い"の召喚に協力する」
少し極端にまとめてしまいましたが、実際の公演と相違ないと思います。たったのこれだけなんです。
ただ、全体の内から見れば序盤も序盤のストーリーではありますが、だからこそ重要な部分でもあります。
人間からの偏見や差別・倒れた仲間たち・例年よりも脅威を増した大いなる厄災と、様々な要因によって心身ともに傷ついた魔法使い。強大で不可思議な魔法の力に時に感謝し、時に恐れ、時に利用しようとする人間。そして、突然異世界に呼ばれ、何も分からないままに決断と行動を求められる賢者。
彼らが初めて邂逅した瞬間というのは、当然そこには思惑や意志や葛藤なんてものが生まれるわけで。その葛藤の様子をどう描くかによってこそ、今回や次回以降の公演において観客が感じるものの大きさや重たさなんかは随分変わるのではないかとわたしは思います。

その点、まほステのシナリオは上手に描かれているなぁと感じました。
冗長になりそうな表現は削ぎ落し、説明不足になりそうな個所は原作の前後の章から引用する。なんというか、その加減が上手だなぁと。説明が過剰になると聞く側は退屈になるし、削ぎ落しすぎるといわゆる「原作改変」になってしまう恐れもあったのに、いずれをも回避しつつ一作品の中でまとめあげていました。
原作のまほやくがスマホゲームなので、キャラクター個人の感情にしろ世界観や情勢の説明にしろ、テキストで表現されている部分というのは非常に多いです。でもその、言葉で表現されていたものをそのまま台詞に置き換えるのではなく、歌や芝居に乗せて表現することで、情報量の多さを感じさせないのがすごいなぁと思ったというか。伝わりますか、これ……

加減が上手だなぁと思ったのは脚本だけではなく、演出においてもそうでした。
タイトルに違わず、まほステにおいては魔法使い・魔法といったいかにもファンタジーな要素がたくさん現れます。そのため演出においてもプロジェクションマッピングを用いた映像表現なんかがもりもりなわけですが、映像表現だけに頼りきりにならないのが結果的に良い演出に繋がったと思います。
劇中に、東の魔法使い・ヒースクリフと昌くんが朝食のおじやを一緒に作るシーンがあります。(ファウスト役の矢田悠祐さんは先日、自身のインスタライブ内で「おじミュ」と呼んでいました。大変語呂がいい)場面内のヒースと昌くんとの対話において、ヒースは「シュガーは魔法で作ります」と言いながら、ぴかぴか光るシュガーをどこからか取り出します。彼がふっと手を一振りするだけで、シュガーが彼の指先にふっと現れるのです。ヒースがシュガーをひょいと投げる素振りを見せれば、ヒースの手を離れたシュガーは、今度は昌くんの手の中に現れ、また光を放ちます。その様子はちょっとした手品みたいに見えて、そしてまさしく魔法のようにも見えました。
また別のシーンでは、西の魔法使い・シャイロックが握った手の中からはらはらと赤い花びらを散らして見せる場面もありました。この二つのシーンのように、観てる側の心をちょっとくすぐるような演出がちょこちょこと挟まれていたのがにくいなぁと思ったんですよね。

舞台の上に現実と非現実の両方を展開しつつ、2次元の世界を3次元に、3次元の舞台を2次元のように、限りなく境界線が曖昧になるような。まさしく"2.5次元"の世界が広がっていたように感じました。これまでいくつもの2.5次元舞台に関わってこられたという浅井さん・演出のほさかようさんお二人の経験の賜物だと思います。

キャストさんやキャラクターの話をすると、まず何よりも印象に残っているのが、みなさんのお歌がめちゃくちゃお上手だったということです。これがもう、とにかくよかった。
前評判を聞いてたやたちゃんさんや、他作品で歌声を拝聴したことがある丘山晴己さんを始めとして、みなさん歌声がまぁ~~御奇麗で。声の伸びはいいわ声量も音程も安定してるわで、聞いてて非常に気持ちがよかったです。
特に、アーサー王子の叔父・ヴィンセント氏役の今拓哉さんの歌声が恐ろしいくらいに力強く伸びやかだと感じました。失礼ながらお名前を存じ上げなかったため、鑑賞後に調べてみたのですが、元々劇団四季で活躍されていらっしゃった方だったんですね。ヴィンセント氏の芯のある人柄が伝わるような素晴らしい歌声でした。ごちそうさまでした。

キャラクターといえば、ゲームプレイ時点での推しがファウスト先生だったのですが、舞台に立つファウスト先生があまりにもファウスト先生そのものだったと感じました。
後悔や憎しみに囚われた先生が、傷つき葛藤しながらも周囲と一歩だけ距離を縮めようとする姿。まさしく「傷つき怯え、警戒する猫」のようで、近づきがたくも放っておけない雰囲気が終始漂っていたのがとてもよかったです。最後の最後でヒースの作ったおじやに「おいしかった」と感想を伝えるところもたいそうよかったです。非の打ち所がない、思い描いていた通りのファウスト先生でした。
橋本汰斗さん演じた西の魔法使い・ムルや、はるちゃんさん演じた中央の魔法使い・オズをはじめとして、それぞれの身体能力やテクニックを生かした動きもキャラクターと合っていたと思います。橋本さんに関して言えば、ミュージカル青春鉄道4で拝見した時から一人だけ群を抜いてアクロバティックだったので驚いた記憶があります。今回のムルという役どころは、橋本さんの軽々とした身のこなしががっつりハマっていたように感じました。そしてはるちゃんさんは相変わらず長物の扱い方が手馴れていらっしゃる。

個人的に驚いたのは北の魔法使い、双子のスノウ(演:奥田夢叶さん)・ホワイト(演:田口司さん)たちです。
正直、ビジュアルが公開されたときはあまりぴんと来ていなかったのですが、舞台上で動く姿を見るとめちゃくちゃ双子ちゃんだったので驚きました。二人がはしゃぐ時の「キャッキャッ!」の言い方が完全に一致してた上に、声そのものもかなり原作に寄せていらっしゃったので、ビジュアルを見て想像していた以上に彼らに魅了されてしまいました。ショタジジイはずるい。


こうしていろいろ振り返ってみると、改めてまほステは「王道を極め尽くした(尽くそうとしている)」作品だなぁと感じます。
劇中においては正直、目を見張るほど新しい演出表現だとか、予想だにしていなかったシナリオの展開だとかいうものはあまりなかったように思います。ライブパートがあるでもなし、作品としてはかなりスタンダードな形の「2.5次元化」です。けれど、だからこそ小細工なしの真っ当勝負で挑んでいたように感じたんですよね。原作のシナリオの良さや最先端技術に寄りかからず、自分たちのできることをとことん突き詰めているような。

小道具にもしっかりこだわってるんですよ、まほステ。
魔法使いたちはそれぞれ”魔道具”という、魔法を発動するために用いる道具を持っています。例えばヒースは懐中時計、オズであれば杖。そして、ファウスト先生の魔道具は鏡です。手鏡のような小さいものではなく、壁にかけて使われるような、それなりの大きさの鏡です。原作でのファウスト先生は、この鏡を宙に浮かべて使用しています。しかし残念ながら、舞台の上では鏡を宙に浮かせることはできません。
ではどうしたかといえば、取っ手をつけてました。形状的には版画で使うばれんが近いかもしれません。そこに指を入れて、手のひら全体を使って鏡を支えているような形です。取っ手部分は、鏡と同じ色が塗られ、本体と似た質感に作られていました。そんなところまでこだわるんだ、と驚いて、しばらくはファウスト先生がアップになる度に鏡とそれを持つ手のあたりを凝視していました。
そういう小さいこだわりや細部への詰め方が、最終的に舞台としての完成度を高めているように思いました。


まほステは原作ファンの方だけでなく、2.5次元舞台を観たことない・観てみたいという方にもおすすめしたい舞台だなと、わたし個人は思います。
ここまで述べた通り、まほステは原作ファンの方でも受け入れやすい演出やストーリー展開で構成されていました。加えて、アドリブや寸劇みたいな時間が(少なくとも千秋楽では)ほとんどないので、激しいキャラクター崩壊も起きにくい作品に仕上がっています。
また、歌や演技のクオリティが高くストーリーに集中しやすい上に、お芝居から歌へのつなげ方が非常に自然なので、「2.5次元舞台(ミュージカル)」の導入としてはもってこいの作品だとも思います。なおかつ、小道具や演出、歌詞の言葉選びなど、細かいところに目を配れば配るほど作品の面白さやこだわりが見えてくる作品です。

だから本当に、たくさんの人に見てほしいなぁ……というのが正直なところです。いい作品を見るとどうやってもこの感想に帰ってくるんですが、本当に。
先日観たダブル・トラブルが分厚いパティとシャキシャキレタスががもりもりのハンバーガーだとしたら、まほステはほかほかの炊き込みご飯みたいなイメージです。味わえば味わうほど具材の味が楽しめて、かつほかほかのご飯で心まであったかくなるような、そういうイメージです。うまい例えが何も出てこない。すみません。


大千秋楽を迎えた後、まほステ第2章の上演決定と、21人の魔法使い全員の第2章出演が決まりました。
メインキャラが21人出てくる舞台、相当難しいものになると思います。不安な気持ちもちょろっとあるのが正直なところです。
ただ、1章で見せてくれた作品へのこだわりを、制作陣や役者の方々が2章でも見せてくれるならば、きっといい作品になるとも思います。秋口のほかの舞台の予定や新キャストの方々がまだわからない状況ではありますが、可能であれば現地で観てみたいなぁという気持ちも実はちょっとあり。


長々と語りましたが、まほステ、かなり良い作品でした。原作のストーリーやキャラクターがすきな方であれば、おそらく見て損はしない仕上がりだと思います。今後アーカイブ配信の機会もあるかと思うので、興味と時間がある方にはぜひ見ていただきたいです。「これだよ、これこれ!」みたいな気持ちになると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
多分次こそMARSREDの感想になると思います。


それでは、おやすみなさい。


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