感覚

机に指輪を置く音がいつもと違う。この間買った新しい机と前から使っている今も現役の机と音が少し異なる。それを瞬時に気付ける自分の感性がとても好きだ。机の広さの違い、置いてある物の違い、物の多さの違い、素材の違いなど色々が重なって異なった音が出てると思うとなんだか個性を感じていいなと思う。
紙によって書き心地も触り心地もめくった時の音も破った音もはたまた匂いも全て違う。インクの滲み方、乾き方、濡れたインクと乾いたインクの書いた者にしかわからないわずかな変化、時間が経った時の変化、こういった部分が紙に残すことの最大の良さだと考えている。インクが同じでも万年筆によってインクの出る量も色の出方も全く異なる。これがインクと万年筆の楽しさ。
香水なんかもシングルノート、シンクロノート、そしてよく聞くであろうトップミドルラストの3段階構成のノートなど付けたての香りが肌に馴染むとそれ以降変わらないものもあれば肌に馴染むと人によって香り方が違うもの、明確な変化を感じられるものもありとても香水という概念そのものは本当に個性的だ。インク同様に私個人の意見としては、長期に亘り晒されていた環境による劣化も緩やかな崩壊という退廃的な美しさを感じる。
本来の香りや色は失われても彼らはそこに確かにいる。私の肌の上で煌びやかに踊っていた彼ら、紙の上を楽しそうに走る彼らがいなくても私は本来の姿を忘れることはないだろう。

私は少しの違いを、違和感を照らし合わせて色々な視点からものを感じることがとても好きだ。異なる事象が重なり起こる人格形成や地形変動なんかも上記と同じものを感じ心が躍る。それがなかったら今の自分も今の世界も何もかも全く違うものになっていたかと思うとなんだかわくわくする。そう思わないか?だがこの小さな事象を気にしすぎると全てに意志があるように感じてとてつもない恐怖に襲われるだろう。だから常に感覚を研ぎ澄ませている状態になってはいけないよ。

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