2009年卒業研究制作 / michi no oto
卒業研究制作、学部の卒業研究制作はちょうど10年前のこと。
10年前に作った私の卒業研究制作を紹介しつつ2019年の視点で振り返ります。
作品タイトルは、「 michi no oto 」
簡単に言うと、車の動きを音に変換したインスタレーション作品だ。
(簡単に言っても、全く簡単ではないわかりにくさ)
👇映像を見た方が早いのでご覧ください。
「michi no oto」The sounds of road
「michi no oto」(The sounds of road) is the experimentation of design that creates new forms by ordinary scenes formed and gone in our everyday life. By the use of image analysis of Adobe Flash, this work makes sounds when cars pass on the line. Using constant speeds and rhythm of cars, I try to extract warm human signs that are hidden in monotonous algorism. Furthermore, transferring the movement of familiar cars into sounds, this work aimed to search for the possibility of the way to transfer any information in our world. The essence of the information design is to transfer effective information into effective forms, to rebuild it and finally to provide it. However, I conducted the experimentation of reconstruction by transferring ordinary information into different forms. I hope this design experimentation leads to the creation of dynamic and mysterious information design people have never seen.(2009 / shimizu junko)
michi no oto
「michi no oto」は日々形成され消えていく日常の風景から、新しいカタチを生むデザインの実験である。
Flashによる画像解析で車がラインの上を通ると音が鳴る仕組みである。
車の持つ一定のスピードとリズムを利用し、単調なアルゴリズムに隠された温かい人間の気配を引き出すことにチャレンジしている。
また、見慣れた車の動きを音に変換することで、世の中のあらゆる情報の変換方法の可能性を探ることを目的とした。
情報デザインの本分は有効な情報を有効な形に変換し、再構築し、提供することだ。
しかし私は、ありふれた情報を違う形に変換し、再構築する実験を行った。
今まで見たことが無いダイナミックで不思議な情報デザインが誕生するきっかけにしたい。(2009 / 清水淳子)
1-システム
高層ビルから、高速道路を撮影。その映像をFlash AS3にて画像解析。
色のRGBを覚えておいて、それ以外の色が来た時を判定して、リアルタイムに音が鳴ったり、アニメが動くプログラミングを古堅真彦先生の多大なるサポートを受け作成。(感謝...!😂)
2-外観
高層ビルから、高速道路を見下ろすような位置関係で映像を見る空間を作成。リアルタイムで変換される動きと音のリンクを楽しむ。
3-バリエーション
3つのアングルと音を用意。オルガンとパーカッションとピアノ。
窓から街の風景を眺めるように3つを聴く。
なぜ、michi no oto を作ったのか?@2019
当時、学生だった私には『「情報デザイン」って、誰かのために、わかりやすく、使いやすくすることだけが正解なのか?』という疑問があった。
わかりやすい組織のシステム、わかりやすい道案内、わかりやすいパンフレット。そういった優等生的な課題解決のデザインが世の中に必要とされているのは解っていたが、どうしても自分の情報デザインの答え(集大成)をそこに集約したくなかった。
もっと情報の複雑さを示したかった。
日常の中にある、ふとした全く意味のない風景(情報)が、どこかの誰かの解釈次第で、何か意味を持つかもしれない自由さと恐ろしさ。そんな未知の可能性を示唆したかったのだと思う。
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この作品はメディアアートとして、アルスエレクトロニカに応募したが、特に何にも引っかからず、アートにはならなかった。(ちなみに、同ゼミで現Takramのナリタくんは、テンキパンで賞を取ってた!すごい) 当時はその結果に、地味に落胆もしたが、今思うと、自分はガチアーティストになりたかった訳ではなく、"わかりやすい答え" に流されないデザインスタイルを探求するデザイナーになりたかったのかもしれない。(たぶん、その姿勢は、ある意味ではメディアアートから学んだ態度なのだけども。)
"わかりやすい答え" に流されないスタイルは、 "わかったふり" をさせないためのデザインファシリテーションや、ミーティングデザイン、グラフィックレコーディングなどなど。今の自分のデザインスタイルにも生きている。
よく大学でグラフィックレコーディングを習ったのか?と聞かれるけれど、1mmも習っていない。結局、習得した大きな学びは、何に違和感を持って、どう表現するかの2点だけだったように思う。その集大成としての全くロジカルな言葉にできない卒業研究制作。その曖昧に見える〆が、思わぬ所に私を運んでくれている。きっと今年の卒業生も10年後に思わぬ場所にいるんじゃないかな、と今から楽しみにしている。
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最近すっかり "グラフィックレコーディングの人 " という風に見せてるし、見えてるけど、実際の問いはもっともっと違う形として、いつも存在していることを思い出した。
"わかりやすい答え" に流されないデザインスタイル、
ここを軸にまた全く違うアプローチをしたいと考えてる。
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追記
担当教員、永原先生からの批評文
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