見出し画像

#2「高幡不動とFoggy Woods(Bar人間)」

こんばんは。

ALFRD(アルファルド)こと山口健太です。

今月2本目の記事となる今回はつい最近まで住んでいた街の最寄駅、「高幡不動」周辺のことを書き遺していこうと思う。

新宿から八王子方面の京王線で、急行であれば30~40分揺られた先にその不思議な駅はある。

初詣の時期にはかなり多くの人が押し寄せる高幡不動尊というお寺が有名で、周辺を歩いて一見するとご老人が多い印象を受けるが、意外と都心で働くお金持ち家族が一軒家を建てがちな側面もある。


2年前

・当時の職場である新宿へのアクセスが良いという点

・一緒に作品を作っていたビートメイカーが住んでいた点

・自然を身近に感じられるエリアだという点

これらの要素に魅力を感じ、駅まで5、6分の1Kを借りることにした。


下町で生まれ育ち、港区の高校に通っていた僕は早い段階で灰色の景色に飽きていたし、そもそも人の多さがストレスになるような人間なので、虫嫌いで超インドア派のくせに都合よく緑と綺麗な星を求めた。


うーん。

見切り発車で住み始めた当時のことから書き始めてみたのだが、入居してからおよそ1年半の間は、仕事に向かう駅までの景色と曲を作っている記憶、当時の恋人と過ごしていた時間で埋め尽くされているので今回は割愛しよう。

軽々しく大っぴらに語るようなものではないですもんね。


今回何を一番書きたかったかというと、この最後のおよそ半年間で僕のライフラインとなり、刺激と興奮と安らぎをくれたお店のことなのです。


木・金曜日の21時ごろから大体日付が変わるまで、ひっそりと営業しているそのお店「Foggy Woods(Bar人間)」(店主いわくFoggy WoodsでもBar人間でも好きな方で呼べばいいそうです。)に初めて入ったのは、確か2月ごろ。

あの日は仕事で任された重めのプレゼン資料を作り終え、自分へのご褒美として一人焼肉を食べた後、ふらふらと帰路についていた。

途中、ふと頭上から作業用やら睡眠用BGMには決して向かないような速いジャズが聞こえた。

普段は「あんず村」というレトロな雰囲気の喫茶店がある場所だが、大体20時で閉まることは知っていたから、(スタッフのお別れ会でもやっているのかな?)と思ったが、立て看板を見るとどうやら営業中らしい。そして「Foggy Woods(Bar人間)」の文字が。

その少し前からジャズへの興味が強くなっていた僕にとっては、何か不思議な縁を感じた。

吸い寄せられるように階段を登っていくと、ほぼ満席になったカウンターが目に入り、そこそこの緊張とワクワク感を抱きながら入口のドアを開けた。

そこには天然パーマのお兄さん(店主。以下りょうさん)と、それぞれが1人で訪れている所謂「バー」の雰囲気が広がっていた。

嘘みたいな値段で嘘みたいに良いウイスキーたち、ワイン、ビール、コーヒーが並べられており、スピーカーからはりょうさんが選曲する、ジャズをはじめとする“感情をあちらこちらと揺さぶってくる音楽”が流れ、(これは通っちゃいますねえ)と思ったのを今でも鮮明に覚えている。

月に1〜2回、生演奏でブルースやジャズのライブが行われる日もあるので、お酒やコーヒー、音楽が好きな人なら同じように感じられるのではと思う。


理学療法士のこうちゃん、イケおじのゲンさん、レペゼン青梅のマキさん、雑誌編集部高身長ギャル(諸説あり)のしおりさん、セクシー大学生のコタニくん。この辺はよく話した人たちかな。読んでますかー?(唐突な呼びかけ失礼)

もちろんここに出てきていない人たちともたくさん素敵な会話ができて、どうしようもない時間になるはずだった夜を、本当にいい夜にしてもらえたなと、書きながら感謝の気持ちが溢れております。みんな忘れません。


でもやっぱり一番長い時間お話しさせてもらったのは店主のりょうさん。

謎めいていて、でも他人の過去・現在・未来全てを包み込んでくれるような優しさがあって、熱さに飢えているような、そんな人なのをいいことに、心を許した人には喋りまくるでお馴染みの僕は、多少の罪悪感を感じながらもよく話を聞いてもらっていた。

新宿のほぼ毎日ピアノの生演奏が聴ける「ばがぼんど」を教えてもらったり、ビルボード東京で行われた石橋英子さんのライブに誘ってもらったり、僕のライブや曲のデモに忖度ない感想をくれたり、ウダウダしている時には「その子たちに声かけてバンドやっちゃえばいいじゃない」と背中を押してくれたり(これは理学療法士のこうちゃんも一緒に)。

こう書き出してみるとあまりに止まらないもので、本当に半年くらいの話なのかと疑わしくなってくる。

引越し前最後の金曜日。想定外の残業で夜11時を回ったくらいのタイミングの来店になってしまった。初めて訪れた日とは違って、迷いなく開いたドアの先には、若い男性客2人とりょうさんがいた。
少し大きめの音量で流れるジャズで作られた空間のそのまた内側は、とても静かだった。
実は一番好きな窓際の席に座って、京王線高幡不動駅のホームを眺めていると色々な感情が湧き上がってきて、恥ずかしげもなく感傷に浸っていた。
りょうさんがウイスキーを運んでくる。こういう時にだけ吸う用に持参した紙巻きタバコに火をつけ、また他愛もない話をしたりお店をフラフラしていると、見慣れない銘柄のウイスキーがあった。「あれ?これ新たに入ったんですか?」と聞くと「いやいや、今日最後に山口くん来るかなと思って」と。泣いちゃいそうになる。この人すごいなと思った。この店で初めて2杯分のお金を払って所謂「マスターにも」というのをやって、りょうさんとその特別なお酒を飲んだ。一生忘れられない味になった。訳あって突然の引越しだったので毎晩夜通し準備しなければならなかったので、0時ごろにはもうお会計をしようと声をかけると、りょうさんはさっきまで僕が使っていたグラスを差し出してきた。「ほい、餞別に」と。店の下で握手を交わして帰宅した。


新しい街でこれを書いている。#2は個人的に涙腺にくる回でした。またみんなには会えそうだから泣きはしないけど。
もらったグラスで飲んでいるこのオールドパーも、もうあと一口なのでこの辺で終えようかと思いますが、これを読んで気になった方は是非一度Foggy Woods(Bar人間)に足を運んでみてはいかがでしょうか。もしかしたら耐えきれず僕もフラッとお邪魔しているかもしれません。タイミングが被ったら是非お話ししましょう。


それではまた次回。おやすみなさい。

https://www.instagram.com/foggywoods_barningen/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?