プライマリー・カラー 〈Wの章〉
彼は都内の飲食店でバイトをしているらしい。確かにと透香が思ったのは、体を撫でる指先がひどくかさついていたからだ。透香の両腕を押さえつけ、貪るように、あるいは今夜の居所を探るように、彼は柔肌に顔を埋める。30過ぎの熟れかけの身体でも需要がある。それは単純に嬉しかった。頬のニキビ跡が気になったものの、そこそこ顔立ちも整っていた。だがエサになったような気分がずっとあり、透香は行為に集中できずにいた。
対する彼は透香の身体に溺れていた。会話の中で同年代にはない落ち着きと色気を感じ