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四コマ漫画みたいなノリで書けないかなと思い、始めたショートストーリー集です。
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#ありがとう

プライマリー・カラー 〈Wの章〉

 彼は都内の飲食店でバイトをしているらしい。確かにと透香が思ったのは、体を撫でる指先がひどくかさついていたからだ。透香の両腕を押さえつけ、貪るように、あるいは今夜の居所を探るように、彼は柔肌に顔を埋める。30過ぎの熟れかけの身体でも需要がある。それは単純に嬉しかった。頬のニキビ跡が気になったものの、そこそこ顔立ちも整っていた。だがエサになったような気分がずっとあり、透香は行為に集中できずにいた。  対する彼は透香の身体に溺れていた。会話の中で同年代にはない落ち着きと色気を感じ

プライマリー・カラー 〈Bの章〉

 大学時代に付き合っていた彼氏に貸した三十万円は未だ、返ってきていない。  出版社に就職した透香は営業部に配属された。彼女は前に立って何かをすることが苦手だったため、総務課を希望していたが、社会は彼女中心で回っているわけではない。結局、三年経てば異動願いが出せると説得され、透香は働く度にすり減っていった。  水曜日の午後4時。コンビニを出ると夕立が降っていた。  コンビニから会社までは徒歩5分圏内だが、彼女は営業資料が詰まった紙袋を両手で持っていたため、立ち尽くすしかない。

プライマリー・カラー 〈Gの章〉

 透香はエスカレーター式に大学へ上がる。  住んでいるアパートの一階にはエントランスがある。緑の半キャップを首に欠けたまま、彼が慣れた様子で番号を打ち込む。  チャイムが鳴り、透香が部屋のドアを開けると彼は玄関で靴を脱ぎ捨てた。靴箱横のスタンドに半キャップをかけ、彼はリビングへ進む。短い廊下に汗で出来た彼の足形がついていた。  ローテーブルの上にはあさりとほうれん草のパスタがあって、微かにまだ湯気が上がっている。皿の両脇にはスプーンとフォークが整列していて、彼は洗っていない手

プライマリー・カラー 〈Rの章〉

 たった二両しかない赤色の私鉄に乗り込む。  透香は母親にゆるめに巻いてもらった黒髪の先を摘まみながら、隣にいる彼に気付いてもらえないだろうかと思っている。  ロングシートには誰も座っていないが、二人は一席分空けて座っている。照れ臭いのは幼馴染みだからだろう。  透香は俯き、自分の両膝を見ている。海沿いを歩いていたときに転んで出来た傷は、まだ若く赤い。一方、彼は股を広げて座っている。車窓から見える森ばかり彼は眺め、アセロラ味のキャンディを口の中で転がしている。  団地に住んで

ボディ・テンプラチャー

 駐車場に止めてある車のフロントガラスの隅に、霜が降り始めた日の明け方、ベッドのそばに置いてある丸椅子はしんと冷えていて、座面にはまだ日の光の温かさがない。  だから際立っているように感じるのだろうかと、彼は思う。  開いた股の間に置いた両方の掌は湿っていて、座面と掌の間に籠る熱は解放してくれと叫んでいるかのように熱い。 「これであなたの身体は、あなただけのものではなくなったからね」 「お―――、うん」  首の後ろから釘を刺されたように、喉の真ん中で言葉が詰まり、出てこ