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「企業チャットボット」ってユーザー目線での最適解なんだっけ?という話

こんにちは。

前回の記事から2か月ほど経ちまして、その間にChatGPTは広く浸透してきました。特にAPIが公開された3月以降は、様々な活用方法が模索しされています。

APIだけでなく、外部データを扱う際のノウハウもLlamaIndex等を用いた「embedding&Search」というかたちで一般化されてきて、ドメイン知識を組み込んだチャットボットがかなり現実的になってきています。

そんな中で企業においては、「ユーザー向けチャットボット」を検討しているケースが多いのではないでしょうか。

確かに、専門知識を幅広く読み込み、ユーザーからの質問に的確に回答したり、独自のキャラクターを用いてエンゲージメントを高めたりと、LLMを用いたチャットボットには夢が広がります。

今までは「商品案内」「会社紹介」「問い合わせ対応」「カスタマーサポート」と別れていた窓口をチャットボットが一元化できるのであれば、運用もだいぶ楽になりますし、一貫した体験設計が可能になり、企業とユーザーの距離を一気に縮められる可能性があります。

しかし、それははたしてエンドユーザーにとって最適な体験設計なのでしょうか。本当に顧客は、企業に対してチャットボットを望んでいるのでしょうか?

今日はその辺を考えていきたいと思います。

ここから先は未来予測の要素を多く含みます。あくまで個人の予測なので、正確性についてはご容赦ください。


各社がチャットボットを作るのであれば、それはWEBサイトの代替でしかない。

仮にこのトレンドが継続して、様々な企業が独自のチャットボットをつくっていったとしましょう。

するとそれは、概ねWEBサイトの代替として考えることができます。

図示するとこんな感じでしょうか。

今までこうだったものが、


こうなる。

確かに、企業側からすると、ウェブサイトよりもチャットボットのほうが一元的に窓口をつくれるので、一貫性を演出しやすいです。

しかし、ユーザー側から見ると、どれくらいの価値があるのでしょうか。

企業チャットボットは、当然自社のことしか喋ってくれません。比較もできないですし、話しの流れで他の情報を調べてもらうこともできません。総じて、あまり手間は変わっていないように思います。アクセスする対象が違ってくるだけで、それぞれの窓口が分かれている状況は根本的には同じだからです。

加えて、設定されたキャラクターも、ユーザーにとって必ずしも好かれるものとは限りません。どれだけ魅力的なキャラ設定をしても、それはあくまで一方的なもので、ユーザーのえり好みまではコントロールできないからです。

これは、ユーザーにとって本当に理想的な状態なのでしょうか?


チャットボットが本当に優れているのは、「情報だけを抜ける」から

ChatGPTのプラグインを使ったことのある方ならわかると思いますが、ChatGPTのいつものUI上で、様々なデータを扱うことができる、というのはなかなか強力な体験です。もうここから出なくていいや、と思わせる説得力があります。

これは、言い換えればChatGPTという一人のチャットボットが、いろいろな企業やプラットフォームから「情報だけを抜いてくる」ことができるからと言えます。

ユーザーからすれば、状況に応じてチャットボットを探し分けるのは手間でしかありません。もし、「いつものチャットボット」が様々な企業をまたいで情報だけを抜いてこれるのであれば、どうでしょうか。ユーザーからすればいちいち企業のチャットボットを探しに行く手間が省けることになります。

そして、そのチャットボットは完全に自分の好みにあわせられるなら、好みに合わないボットといちいち喋る必要もなくなります。

自分の好みのチャットボットが、情報だけを抜いてくる

例えば、ユーザーが自分の好みでチャットボットを仕立て、それがプラグインなりAPIなりで企業(のチャットボットやデータベース)から情報だけを抜いてくることができれば、こういった仕組みは可能になります。例えば仮に、ChatGPTやBingが「着せ替え」のような機能をリリースしたら、かなりこれに近い状況になるでしょう。

ユーザー体験だけを考えるのであれば、この形のほうがはるかに理想的と言えるのではないでしょうか。

仮にこういった方向に技術が進化するのであれば、チャットボット界もいわゆる「デマンドサイド」「サプライサイド」と呼べるようなものに分かれていくのではないか、と最近は考えています。

デマンドサイドとサプライサイドが分化していく

デマンドサイドはユーザーの好みにあわせて、カスタマイズしたり、コンテンツIPなどと連携して独立サービス化していく。サプライサイドはチャットボットが読み込みやすい形で情報を用意したり、情報に多少の茶目っ気を加えることで企業側の体験設計をする。

そんな未来が来るかもしれません。


チャットボットを使い分けたいという気持ち

ChatGPT、Bard、Bing、Perplexity、と様々なチャットボットが登場してくると、それぞれに強みが違っているな、と感じます。文章の要約や翻訳であればChatGPTが優れているし、ウェブサイトを読むのであればBing、調べものならPerplexity、と使い分けるようになってきました。

これはつまり、デマンドサイドチャットボットも複数が同居しうる、ということかなと思います。

もちろん性能的な特性もあると思いますし、仕事用・エンタメ用など、用途に応じて喋りたいキャラクターも変わってくるはずです。

デマンドサイドチャットボットも複数が同居しうる

このように、デマンドサイドチャットボットも選択肢が広がってくると、ユーザーからすると、いちいち企業のチャットボットと喋るモチベーションはほとんどなくなってしまいます。

では企業は何を狙うべきなのでしょうか?


情報だけを抜かれないために、企業は何を狙うべきか?

こうなると、企業はもう打つ手がないのでしょうか。体験のプラットフォームはデマンドサイドに支配され、企業は情報だけを提供するしかないのでしょうか。

ひとつのシナリオとしてありえるのは、企業のチャットボットがユーザーに気に入られ、デマンドサイドのチャットボットとして選ばれるケースです。

企業のキャラクターがデマンドサイドへ入っていく

ユーザーにとって「このキャラクターと話してたい」と思われるほど魅力的なチャットボットであり、また性能的にも十分である必要はありますが、これができるとユーザーとのエンゲージメントは飛躍的に強くなるはずです。


まとめ

以上は私の個人的な仮説でしかありませんが、チャットボットの行く末について考えてみました。

もちろん現時点で、複数のチャットボットの連結やその規格など、技術的な見通しも立っていませんし、エンドユーザーにとってチャットボットが十分身近ではない以上、まったくの的外れになる可能性があります。

しかし、ここでいうチャットボットのように新しい技術が出てきたときに、「それってユーザーにとってベストな体験なんだっけ?」ということをしっかり考えておくことは非常に重要だと思います。

ちょっと頭の体操みたいになってしまいましたが、今日はここまでです。

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