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苦みに抗い、甘さに媚びず、実った果実に君を見る

BLUEGOATS 『パンクエール』に関してつらつらと。

エールであることの意味①:製法(その期間)

この曲は、「新曲完成するまで出れない部屋」という突如生まれた企画がきっかけとなっている。

5日間で「歌詞+振付の完成」までが求められた状況。
プロであることの意味は、「一定以上のレベル(何かしらの対価を正当に要求することが可能な、という意味において)」であることも必然となってくる。

短期間で完成品に育て上げる

短い期間で発酵させる上面発酵を主たる製造法とするエールが、この曲に冠するのは、至極当然とも言える。

そして、「3年で横浜アリーナを目指す」BLUEGOATSにこそ相応しいタイトルではないか。

エールであることの意味②:製法(その温度)

ラガー(下面発酵)ではなく、エールであることのもう1つの大きな特徴は、その発酵温度の高さである。
その結果、エールはビールとしての苦みだけでなく、果実のような甘みを包含するに至るのである。

短期間かつ高温で生み出されたそれは、苦くて甘い

苦さと甘さに呆れるほど
溢れ落ちて 拭う頃には
明日に向けたエール
香った果実 かなえ現実
一気に飲み干してまた

歌詞より

彼女の熱情が、短期間にあの場所で込められたからこそ、この歌詞が生まれたのだと信じたい。

パンクであることの意味①:反「これまでのもの」感

応募する前にYouTube動画とか見たとき、コメント欄も目に入って。こんなに可愛い人たちでもそういうコメントされるんだっていうので、覚悟はして応募しました。泣いちゃう自分は嫌なんですよね、、怒っても泣くし。

インタビューより

今いるファンの方も、今まで先輩たちが頑張ってきたからいるので、私が入ったことでがっかりさせないようにしたいし、歌詞の意味とかも強いグループだから、その思いとかを伝えられるようにしたいです。なんで私なんだろうって思うけど、頑張らなくちゃと思います。

インタビューより

歌詞全体からまさに「溢れ」でてくるイメージは、インタビューでの彼女の語りから伝わるものと通底している。

これまでの自分」からの脱却。
それはまさに、長く自分の内に築かれてきた「体制」への反骨心なのだろう。

パンクであることの意味②:「DIY」の精神

カルチャーとしての「パンク」には、「Do It Yourself」がその構成要素として挙げられることが多い。

自分(たち)の信念のためなら、恐れず、他者に依存せず、自分(たち)から動き出し、自分(たち)の手でつかみ取れ

その意味において、あの一室で自分自身を曝け出そうと奮闘した彼女は、まさにパンクだったし、BLUEGOATSそれ自体も、「DIY」精神で駆動する反骨グループなのであろう。

パンクエールであることの意味:聴いて感じろこの野郎

以上。

としても良いのだが、極薄パンクな感じなのでもう少し。

残ったまま伝った泡に
消えない苦さ癒えないままで
満ちていく想いは捨てる
そっとまた夜に吞まれて

歌詞より

小学校低学年の時、不登校になったんですよ、いじめを受けていて。その年の子供って、馬鹿とか死ねとか、気軽に使うじゃないですか。それを聞き流せればいいんですけど、それができなくて。そこからそういう言葉を受け付けなくなりました。

インタビューより

エールにおける「苦さ」は、その「甘さ」を際立たせる役割を担っている。
「理想や夢」までの道程が、ただの苦痛だと感じさせないように。

それは、「苦しむことそれ自体が快楽である」という、表面的なマゾヒズム理解では決してなく。

これまでの「苦さ」を、単なる「苦痛」とはしない。

そういう「決意」を自ずから湧き立たせて躍動する、その姿こそが、まさに「パンク」であり、それに共感する聴き手と、彼女自身への高温の「エール」となっているのである。

「弱気なりの強がり」は、彼女自身を魅力的に発酵させる

自らの運命に勇気をつけるために、一杯のエールを

Mary Stuart

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