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「ぼくはぼくの奴隷」

なんの前触れもなく、あったのかもしれないけれど唐突に言われた。
「僕の奴隷になってない?」
心が割れそうになるのを必死にこらえた。奴隷になった覚えなんてない。奴隷ってどんな意味か知ってる?人間としての自由を奪われた私有物だよ?私があなたの奴隷?どういうこと?

ひとりの人間として自分を生きていない。無理して合わせている。同じになってきている。持っているモノ、選ぶモノ、好きなモノが君と統一されていっている……?そんなつもりはない。そういう気配があったのだとしても私は好きで私を生きている。その瞬間は何かが重なったって、そりゃあ暮らしの一部を共有すればそうなるだろう。それは悪いことなのだろうか。私は苦しんでなんていないのに、奴隷なんて失礼にも程があるよ。勝手に奴隷扱いしないでくれ。

明けても明けてもその言葉が身体中を支配する。言葉は武器だ。たった一言発するだけで誰かの身の中に居座り続けることになる。溶けてなくなることなんてない。燃えて灰になることなんてない。とにかくしつこく残り続ける。無責任だ。卑劣な言葉が無責任に使われすぎている。

「勘違いだったらいいんだけど」
なんて言って誤魔化してるけどさ、勘違いもなにも縛り付けているのは君自身なんじゃないのかな。君が君を縛り付けている。だから私が縛られているように感じた。私を被害者にした。本当の被害者は君だよ。君が君の奴隷になってしまっているんだ。早く気付いてほしい。気付くまで、私は君に近寄れやしない。

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