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恋愛対象

三十歳になって二週間以上が経った
年齢はただの数字に過ぎないけど
それだけの時間、この時代を生きたんだね
大小いろんなことがたくさん急に
身のまわりで動き出している気がする

一年間だけ高校生だった時期がある
とても凝縮された濃ゆい日々だった
ハンドボール部で
毎日ハンドのために生きていた
同期の部員は私含めて女子五人、男子五人
女子のうち二人はマネージャーだった
記憶が曖昧だけど
本気で思い出そうとすれば思い出せそうだけど
曖昧なまま綴り続けてみるけど

同期のその、女子と男子で
三組のカップルがいた
青春ってそういうことなんだと思う
でも私は、ひたすらハンドに集中していた
身体が大きくて力が強く、男子とも対等に戦えた
だから心も、男子と対等になっていた
女としてではなく男子部員みたいな感じ
明確ではないけどきっとその頃から
自分は誰からも恋愛対象にならないと思い始めた
その方が安心できたのかもしれない
自分には魅力がないから
きっと好きにはなってもらえないから
だったら女としてではなく同じ人類として
人付き合いする方が楽なんだって
自然とそうなっていった

大学時代は特定の友人がいなかった
だからその、恋愛対象みたいなことは
考えることさえなかった
逃げ続けることができていた

大学二年の時にダブルスクールで通っていた
よしもとの構成作家コースでは
コースにわかれる前のクラスがとても仲良く
男の人ともわいわい騒いでいた、気がする
もちろんそこに女の私はいない
恋愛対象になり得る私は絶対にいない
存在させたくなかった
なぜだろう、怖かったのかな
触れられるだけでも嫌悪するくらい
男の人が苦手ではあったけど
わざとテンションをあげて
乗り越えていたのかもしれない
男の人が苦手になったのはいつからだったっけ?

私の根本にあるのは
"この世界で生きていくためには
女を捨てなきゃいけない"こととは違っていて
ただ"生きていく中で自分が女として
愛される自信がないゆえの逃げ"だと思う
だから今世間で言われているそれとはきっと違う
少しだけ前者の要素も含むかもしれないけど

役者になっていろんな人にいろんなことを言われる
「恋愛しろ」
「恋愛経験ないなんてあり得るの?」
「そんなんじゃ役者できないぞ」
「セックスしてこい」
思い出そうとしなくても出てきた過去の言葉たち
言われた時は笑ってやり過ごしていたけど
その時の自分にごめん、と思う
ちゃんと悲しんであげられたらよかった
ちゃんと苦しんであげられたらよかった
今更になって、過去の言葉たちに支配されている
いや、実際に
支配はされ続けていた

恋愛しなきゃ!このままじゃダメだ!

そう思いながらも三十歳まで
恋愛できずに生きてきたけど
劣等感をとても強く感じていた
私は他人から愛されることを知らない
きっと誰も私のことを
恋愛対象としては見ていない

恋愛って何?という問いを
常に持って過ごしている
だからこのことを語るには
まだ説明が足りていない部分があるから
完、には辿り着かないけど
ひとまず今日のところは
"恋愛対象"という謎の言葉について
少しだけ向き合ってみた、という話です