#4 病んでいく父

父はだんだん病んでいった。母に裏切られたこと、そして私たちが週末母の家に行ってしまうこと。寂しかったんだと思う。
週末は自分の寝室でひとり布団にくるまり、テレビや映画を見ていた。

ある忘れ物を取りに帰った日、玄関前の廊下にお好み焼きのようなものが落ちていてびっくりした。ドアを開けると、とても酸っぱい匂いがした。家に入って匂いをたどると、お風呂場が吐いた液でめちゃめちゃだった。私は父に対して「気持ち悪い」と感じてしまった。
本当は、もっと父に寄り添って、心の傷を癒してあげれば良かった。父がそこまで崩壊する前に、娘の私が気づいて、大丈夫、って支えてあげれば良かった。

でも中学生の私は自分を確立させることで精一杯で、誰かのことを思いやる余裕など無かったのだ。

ごめんなさい。

また別の日、父は家に警察を呼んだ。以前から母が家にいて私と弟のお世話をすることに抵抗感を感じていて、それが積りに積もって爆発したというわけだ。「不法侵入です」と言って、110番をかけた。必死で止めたけれど、父の暴走は止まらなかった。警察がマンションの下に到着して、私は無我夢中で「帰ってください!うちは何もありません!大丈夫ですから!」と泣き叫んだ。映画やドラマの中でしか見たことがない警察沙汰という状況下におかれることは私にとって夢にも見ない絶望だったのだ。

2021/11/23

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