#1 夫婦喧嘩の日々

両親は昔から仲が悪かった。
夜になって父が帰宅した後、もしくは休日の夕方、喧嘩をした。
小学生の私はその喧嘩の仲裁をした。

賃貸のマンションなのに、壁に穴が開くことはしょっちゅう。お風呂場のドアは壊れていた。皿が目の前を飛び交うこともあった。

2人がなぜそんなに喧嘩をするのか、小学生に理解できるはずもなく、私はその理由をよく覚えていない。でも。
私がこの世に存在しなければ、私が生まれてこなかったら、母と父にはもっと幸せな日々が流れていたんじゃないか。すれ違いも起きず、価値観の違いも見つけずにすんだんじゃないのか。全部私のせいだ。私が生きているから、2人はいつも喧嘩するんだ。
出来の悪い子でごめんなさい。

ずっと、そう私は思っている。この世に私が現れることがなければ、父と母以外にも幸せだった人はたくさんいるだろう、私なんて存在しなければ良かったのに。

喧嘩のラストスパートではだいたい、「離婚」という言葉が出てきた。それが何を意味するのかよく分からなくても、とりあえず怖くて嫌なものだと感じていたから、もし離婚するとしても私と弟が成人したらにしてね、と私は言っていた。

でもそんなのは小学生の戯言にすぎなかった。
我が家はいつだって離婚危機だった。

2021/8/24

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