#3 離婚

2016年、中学1年生の夏の終わり。
ある日家に帰ると、母は荷物ごといなくなっていた。

私はすぐに状況を理解した。
父に母の不倫がバレて、離婚したんだと。
終わった。さらば、私の思い描いていた楽しい理想の家族像。いつか起こることは分かっていたけれど、ただ茫然と玄関に立ち尽くすしかなかった。

母は歩いて20分ほどのアパートに引っ越していた。

父は泣いていた。
いま思い返せば、1番辛いのは私ではなくて父だったのではないだろうか?10年以上嫌でも我慢して共同生活していた人に、非人道的な方法で裏切られたのだから。耐えながら一緒にいた人の、不倫の証拠集めや家庭裁判所での裁判は、さぞかし悲壮な出来事だっただろう。
「一緒に頑張ろう、3人で、新しく頑張ろう。」
父の泣いている姿は、非常に珍しくて、情けなかった。

それからというもの、その状況に適応することで私は精一杯だった。学校と、小学1年生から続けてきたバレエに打ち込むのに必死だった。
何も考えずにただただ頑張った。
「離婚した家庭だから」という理由でいじめられるのが怖くて、「私はみんなと何も変わらない」と自分に洗脳をかけた。運良く、私は「まるで何もなかったかのように」振る舞うのが得意だったので、誰からも心配されることなく、周りに溶け込んで生活できた。
しかも父は放任主義だったから、なんでも勝手にしていいよ、とやりたいことを自由にさせてくれ、衣食住に困ることも全くなかった。

離婚後の8ヶ月間くらいは、母か祖母が週に2、3回、父が仕事から帰ってくるまでの間、私たちを訪ねた。ご飯を食べたり、勉強を一緒にしたりした。
そして週末は母の家に、私と弟は泊まりに行った。最初こそ母に対する嫌悪が強く私は全く行かなかったのだが、弟1人だけを泊まらせに行くことに心が痛み、一緒に行くことにした。

2021/11/22

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