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こわいはなし

わたしが小学生の頃は怪談ブームだった。
大人たちは皆子供たちに「こわい話して!」とせがませる。
子供が大人に怖いのを求めるという珍奇な姿がいたるところで。
そんな時代がありました。

わたしが小学生の頃の林間学校。
肝試しとかいう嫌いな人にとっては嫌がらせでしかないイベントがあった。

この肝試しを盛り上げるため、肝試し前に教頭先生による怪談タイムが設けられた。

教頭先生の怪談はだいたいこんな話。

大正12年。
とある学校の音楽室にはピアノが好きだった女の子がいた。

そんな9月1日、とある予兆かあらわれる。
だがピアノ好きな女の子は何も知らずにピアノを弾いていた。

正午過ぎ。

世界をゆるがす地響きが。

学校は全壊し逃げ遅れた生徒もいた。

その後再建された校舎。
誰もいない音楽室から……。


こんな感じの話だった。

夜の林間学校の雰囲気もあり、こんなよくある話にも阿鼻叫喚の小学生たち。


わたしも同じく恐怖に震えていた。

だがわたしが震えていたのは「関東大震災の予兆が見えた」というセンテンスにだった。


地震の予兆ってなんだ?

空が真っ赤になるのか?

まさしくこの世の終わりだ。
そんなものを出されたらもう恐怖心に支配され、逃げることもままならぬだろう。

呪いのピアノなんて目ではない。

今の子供はうらやましい。
地震の予兆だって調べればそんなに恐ろしいものは見ないはずだ。


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